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福山潤、歌手活動でも魅せる多彩なエンタメ性 近作からシンガーとしての意欲的なスタイルを考察

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 福山潤と聞いてどれだけの人が知っているだろうか。『コードギアス』シリーズのルルーシュ・ランペルージ役と言えばわかるだろうか。もしくは、昨年大きく話題を呼び一世を風靡したTVアニメ『おそ松さん』(テレビ東京ほか)の一松役と言えば知らない者はいないだろう。彼を含めた腕のある人気男性声優陣が一堂に会したことも大きく作用し、社会現象になったのは記憶に新しい。では、その彼が音楽活動をしていることを知っている人はどれだけいるだろうか。

福屋潤「Hi-Fi-Highway→」

 福山潤は1997年に声優としてデビュー。それから着々とキャリアを築き、多くの賞を受賞してきた。言わば、”実力派”の声優の一人である。長年のキャリアの中でほぼ声優活動一筋であった彼は、ずっと歌を歌うことへの苦手意識から音楽活動を避けてきた。しかしそれは、単なる苦手意識だけではなく、あくまで本業の声優業で認められて、磐石な地位を得てから臨みたいという本人の強い希望が反映されてのことだ。「三十歳までは個人仕事をしない」とメディアでも公言していた通り、アニメのタイトルを冠した仕事は引き受けても、個人の名前を使った仕事はしてこなかったのである。(参考:福山 潤「喋ることは僕にとってのナルシシズム」――声優活動20周年に誕生した“多弁ヒーロー”(ライブドアニュース))昨今のアニメ文化の盛り上がりや、声優の歌手活動の増加を考慮すれば、自身の活動の幅を意図的にセーブしてきたのが福山潤という人なのだ。

 その封が切られた最初のタイミングが2009年、彼が三十歳を迎えた次の年であった。フライングドッグからデビューアルバムをリリース。そこから広瀬香美らの楽曲提供を受けるなど、”歌手としての福山潤”をしっかりとアピールしていった。その後レーベルをポニーキャニオンに移籍し、今年の2月には移籍後初となるシングル『KEEP GOING ON!』を発表。続く6月にはアルバム『OWL』をリリースしている。

 この『OWL』というアルバムが面白い。まず、いわゆる楽曲トラックに加えてコントが収録されているのだ。音楽作品の中にコントを収録するのは、過去の名作と呼ばれる作品もしっかりやってきたことだ。例えばYellow Magic Orchestraが『増殖』で当時人気だったラジオ番組『スネークマンショー』および同名ユニットによるコントを曲間に挟んだり、『サーヴィス』で三宅裕司率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアターとコラボしたことなどが挙げられるだろう。

 このアルバムでは、1曲目「OWL」で提示したEDMサウンドによるクールでダークなイメージを、続くコントパートで一気にひっくり返す福山。自らを”多弁ヒーロー”と名付け、自身の得意とするマシンガントークを披露する。かと思えば、次のトラックでは真剣な音楽作品に移り変わる。それがヘヴィなロック調の「TORPEDO」なのだが、その落差(?)にはつい笑ってしまう。カッコつけることに終始するわけでも、お笑いだけで終わるわけではない。

 また、sasakure.UKが作詞作曲を担当した「多弁ヒロイズム~多弁ヒーローのテーマ」は、ジャズ調のムーディーなサウンドに軽快なリリックが乗った良質なナンバーで、ライブを意識した煽り部分など、音楽的に非常に心地よい作品である。が、その後にあえてシュールな世界観のコント「折れてます」が挿入されたりする(しかもけっこう長い!笑)。曲とコントの絶妙な配分に、1時間近いこのアルバムの尺をリスナーに飽きさせない工夫がある。こうした作りは、彼自身の性格や特徴を活かした作りでもあるし、声を使う声優ならではの試みでもある。ファンでなくても十分に最後まで楽しめる作品になっているだろう。

 このアルバムを通して、“福山潤という人物”を一つのイメージに落ち着かせることなく、多面的な人物像を縦横無尽に行き交う様子に、今まさに新しく活動の幅を広げようとしている彼の強い意気込みを感じる。それは、従来の実力派声優としての福山潤というイメージ”だけ”からの脱却でもあるし、声優による歌手活動一般に対する挑戦でもあるのだ。

      

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