関ジャニ∞の冠番組増加が予感させる新時代 『ペコジャニ∞!』レギュラー化に寄せて

 1980年代、漫才ブームをきっかけにお笑い芸人がテレビの世界を席巻するようになった。そしてそのなかで中心になったのが、タモリ、ビートたけし、明石家さんまの「お笑いビッグ3」である。三人はそれぞれの冠バラエティ番組を拠点に長くその地位を保ち、次世代のお笑い芸人たちもそれにならった。テレビはバラエティ化した。

 SMAPがアイドルにとって未踏の地だった本格バラエティに挑戦したのは、ちょうどそのようなタイミングだった。その結果、アイドルとお笑い芸人のあいだの距離はぐっと近くなった。アイドルにとっても冠番組を持つことが、ひとつの成功の象徴になった。

 関ジャニ∞も、そんな時代の流れのなかにいる。ただ、彼らの場合、グループの冠番組が増え続けている点が新しい。グループの冠番組が同時に4つになるというのは、ジャニーズの歴史のなかでもいままでおそらくなかったようなことだ。

 しかもその内訳も、トークバラエティ、本格バラエティ、音楽バラエティ、グルメバラエティといったように色合いがそれぞれ違う。いままでは、ひとつの冠番組が中心になるかたちが通常だった。だが最近の関ジャニ∞を見ると、星座のように連なった複数の冠番組を通じてグループの多彩な魅力をアピールする新時代の始まりを予感させる。

 実際、関ジャニ∞自体、多様性がそのままアイデンティティになっているグループだ。「王道」といったようなひとつの枠に収まらず、どんどん活動のフィールドが広がっていくような自由さを感じさせるグループであり、その名の通り「∞(無限大)」と形容したくなるような開放感がある。

 もちろんそのベースには、個性豊かなメンバーの存在がある。渋谷すばるのようにソロで歌手活動をするメンバーがいるかと思えば、村上信五のようにバラエティやMC業で活躍するメンバーもいる。さらに錦戸亮や横山裕、大倉忠義のように俳優として映画、ドラマなどで実績を重ねるメンバーもいる。あるいはお笑いへのこだわりの強い丸山隆平や独特の感性で乙女系とも言われる安田章大などは、とりわけキャラクターが光るメンバーだ。

 そうしたメンバー同士によるグループ内ユニットの充実も関ジャニ∞の特長だろう。バンドとしての活動も精力的な彼ららしく音楽ユニットも目立つなかで、丸山隆平と安田章大による「山田」のような漫才ユニットがあるのも、いかにも彼ららしい。

 そしてなんと言っても、こうした個人やコンビが、グループのなかでいっそう輝きを見せるところに関ジャニ∞の持つ最大の良さがある。それを支えるのが、グループ全体のバラエティ能力の高さだ。関西出身ならではとも言えるボケとツッコミの当意即妙さ、出るところは出て引くところは引く状況判断の確かさは群を抜いている。

 音楽、演技、笑いとなんでもこなす関ジャニ∞のオールマイティさは、ジャニーズの伝統である「なんでもあり」の総合エンターテインメントの流れをくむものだ。そして彼らの場合、その伝統はテレビで大きく花開いた。それはきっと、先ほどふれた1980年代以降のテレビのバラエティ化の流れと彼らのバラエティ能力の高さが上手くかみ合ったからだろう。その点、1990年代後半から2000年代前半のJr.ブームのなかで早くからバラエティでの経験を積むことができたのも大きかったように思う。

 こうしてみると、関ジャニ∞というグループが、ジャニーズのバラエティ進出の歴史とテレビのバラエティ化の歴史の交わる最前線にいる存在であることがよくわかる。これから彼らがジャニーズとテレビの新しい関係をどう見せてくれるのか、楽しみにしたい。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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