FIRE BALLが語る、“レベルミュージック”の現在「生活の中にも歌うべきテーマはたくさんある」

「色んなものが混ざって新しい流行が生まれるのは自然なこと」（クリス）

ーー最近のヒップホップやR&Bでは、レゲエのフロウを取り入れた楽曲も目立ちます。その辺はどう捉えていますか？

クリス：今は全部がミックスされていますよね。今までの色んな音楽が混ざり合って、新しくオリジナルが生まれたりしている。音楽にせよ、ファッションにせよ、色んなものが混ざって新しい流行が生まれるのは、きっと自然なことなんですよ。

リー：今回のアルバムだと、「あっちゅうま」とかはフロウはレゲエなんだけれど、トラックではヒップホップ、俺たち自身も融合していっている。世代もジャンルも関係なく混ぜていけるのが、今の音楽の面白いところですよね。

ジュン： PUSHIMとフィーチャリングした「CHANGES」は、ダンスホールからどんどん音数を減らしてエレクトロR&Bっぽくなったアプローチなんだけれど、自分的には新しすぎて戸惑ったよ（笑）。どう攻めていけば良いんだろう、みたいな。

リー：でも、最近の音数を徹底的に減らしてBPMを落としたような楽曲に憧れる部分はありますよね。

クリス：シンプルでぶっとい音っていうのは、今のトレンドだよね。

ーーレゲエとヒップホップは兄弟とも形容されますが、ここ数年、日本のヒップホップシーンが盛り上がっているのは、どう捉えていますか？

リー：それもやっぱり、自然の流れなのかな。

ジュン：単純に聞いていてかっこいいなって思うし、むしろどんどん盛り上がっていってほしい。

クリス：日本のヒップホップは昔からかっこいいと思っているけれど、新しくかっこいいヤツがいっぱい出てきているのは頼もしいよね。Zeebraとかが大人になって『フリースタイルダンジョン』（テレビ朝日）とかをプロデュースしているのも、すごく良いことだと思う。

ジュン：オールドスクールのスタイルもちゃんと残りつつ、KOHHみたいに音数が少ないトラックで独特のフロウを聴かせるラッパーも出てきている。世代的にも層が厚くなったのは、Zeebraたちの功績のひとつだと思う。

リー：昔からヒップホップが好きで聴いている人たちからすると、色んな意見はあると思うけれど、今みたいにフリースタイルからヒップホップに入る子が多くなっているのも、別に良いことですよね。

クリス：たぶん、今レゲエを始める子にも、ジャパニーズレゲエをきっかけにハマったという子は多いと思うし、それでちゃんとかっこいい曲が生まれてくるなら全然OK。それこそ、シーンが育ったということだと思うし。

リー：今ヒップホップが盛り上がってるから、自然の流れでレゲエからも新世代のスターがバーンと出てきそうだよね。

クリス：それこそ、新世代のレゲエDEEJAYが『フリースタイルダンジョン』とかに出てくれたら嬉しいですね。レゲエDEEJAYにだってフリースタイルはあるし、ブラックミュージック全体でさらに繋がっていったら、すごく面白い。

リー：そういう意味でも、俺たちももっと“PROGRESS”していかなきゃいけないなって思います。FIRE BALLとしてコラボしたいアーティストもたくさんいるし、やらなければいけない課題もたくさんある。まずはツアーに向けて、止まらないようにやっていきたいです。

ジュン：本当に、まだまだできていないことはたくさんありますね。言葉でいうのは簡単だけれど、ひとつひとつをクリアーしていくのはすごく大変なこと。自分たちで“PROGRESS”していると言うからには、ちゃんとそれを提示しないといけないと思いますし。お客さんたちに「こいつら応援したい」って思ってもらうためにも、技術の面はもちろん、気持ちの面でも磨き続けていきたいです。

スティッコ：これまで20年やってこれたのは、ある意味では奇跡のようなものだけれど、やっぱり常に自分たちを一番良い状態に持って行こうっていう意識を仲間たちやお客さんたちと共有できてきたからだとも思うんですよね。その気持ちがあってこそ、音楽である程度、飯を食べてこれたのかなって。それは本当にみんなに感謝すべきことだし、だからこそ、足元をしっかり見ながら“PROGRESS”していこうと、改めて思います。今は素晴らしい環境があって、スタジオもあって、仲間たちがいて、本当に恵まれている。この先、20年続けられるように頑張ります。

クリス：この20年は本当にあっという間に過ぎてしまって。今スティッコが言ったように、いろんな人の助けがあったからこそ、ここまで来ることができたし、同時に時間の大切さも痛感しています。気付いたら大人になっていて、人生の半分はすでに過ぎたのかもしれない。でも、ラストにどこまでいけるのか、ここからが本当の勝負だとも思う。FIRE BALLとしてはもちろん、Mighty Crownやスタッフも含めたファミリーとして、みんなで「やべー、俺らやってるぜ！」っていう音楽をもっと作りたいし、燃えていたい。自分たちの理想があるから、そこに近づいていくために、頑張るしかないって感じですね。

（取材・文＝松田広宣／撮影＝石川真魚）

■リリース情報
『PROGRESS』
発売：7月12日（水）
価格：￥2,700（税抜)
※初回生産分レンチキュラージャケット付

＜収録内容＞
01. Intro
02. P.R.O.G.R.E.S.S.
03. Choice Is Yours
04. Don't Turn Dat Down
05. Around The World feat. Mighty Crown, CRAZYBOY
06. Skit～Chillin'～
07. あっちゅうま
08. Soul On Fire
09. Skit～イザベラ～
10. 何がどうしてこうなった?
11. BOUNCE
12. Kingston Town～愛しのキングストンタウン～
13. HAPPY BIRTHDAY
14. CHANGES feat. PUSHIM
15. みんなのうた
16. Outro

■ライブ情報
『Fire Ball 20th Anniversary FIRE CAMP TOUR 2017 -PROGRESS-』
名古屋公演　10月7日（土）
大阪　10月8日（日）
東京　10月15日（日）