佐野元春、ネバヤン、Chara、欅坂、ブクガ…“時代の雰囲気”捉えた歌詞の世界に浸る

欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』(通常盤)

 阿久悠、安井かずみなど日本のポップスを形作ってきた作詞家たちは、常に世相を見据えつつ、歌詞を通して数多くの歌い手に“時代における役割”を与えてきた。2017年においてもその構図には変わりがなく、秋元康はいまのその優れた担い手のひとりとして存在している、賛否両論はあっても。欅坂46はデビュー以来、“サイレントマジョリティー”に対して“誰よりも高く跳べ!”とか“不協和音”になることを恐れるなといったメッセージを送ってきたわけだが(それを統率の取れたパフォーマンスで表現するアイロニーこそがこのグループのおもしろさなのだろう)、現時点における頂点とも言える楽曲が、本作『真っ白なものは汚したくなる』に収められた「月曜日の朝、スカートを切られた」。<誰もが/何かを/切られながら/生きている>というフレーズは本当にすごいと思う。

欅坂46「エキセントリック」
Maison book girl『412』

 メジャー1stアルバム『image』が音楽メディアなどで高く評価され、アイドルシーンだけではなく、幅広いリスナーにその存在を知らしめた“4人組ニューエイジ・ポップ・ユニット”Maison book girlのニューシングル『412』。リードトラック「rooms」は“ブクガ”の本質をストレートに表現した楽曲だ。中心となるモチーフは、これまでの楽曲でも頻繁に使われてきた“部屋”。現在のような高度な情報社会における“部屋”(≒個人的な空間)の意味を<何もかもがあって、何も無くなるの。>という一節で見事に照射し、すべての人に当てはまるポップスへと結びつけるプロデューサー・サクライケンタの手腕はこの曲においてひとつの高みに達したと言っていい。最新鋭のエレクトロニカと現代史的な言葉の組み合わせも高品質。

Maison book girl「rooms」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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