Leolaが提唱する“ビーチ・ミュージック”とは? 良質な音楽を届けるアーティストとしての可能性

Leolaが掲げる“ビーチ・ミュージック”の可能性

 1990年代にBONNIE PINK、UA、Chara、birdが登場した時のように、現在のJ-POPシーンには洋楽的なサウンドを独自の“マナー”でJ-POPとして昇華させ作品を発表するアーティストが次々と登場している。それはドラマ『CRISIS』(フジテレビ系)の主題歌でブレイクしたBeverlyや、月9ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系)で主役に大抜擢され一躍時の人に躍り出た藤原さくら、沖縄県・伊江島出身のパワフルな歌声を持つAnlyもその一人だが、個人的は7月12日に1stアルバム『Hello! My name is Leola.』をリリースするLeolaのことが気になっている。

 彼女はデビュー直後、奇しくも藤原さくら主演の月9ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系)にベテランシンガー(!?)役で出演したり、楽曲がサマンサタバサのCMに起用されるなどと、若年層向けのキラキラしたポップスを歌うシンガーというイメージが先行している。だが、アルバムには所謂、“音楽好き”の琴線に触れるであろう楽曲が多数収録されていた。

 シングル曲でも、彼女のライブでもサポートを務める藤本藍(sent tent)が作曲を、乃木坂46やYUKIのアレンジャーとしても活躍する湯浅篤が編曲を手掛ける「Let It Fly」は、ピアノのリフレインが印象的なイントロからストリングスと四つ打ちのビートを取り入れながらスリリングに変化するメロディが印象的だ。坂詰美紗子作曲の「コイセヨワタシ。」は、編曲者松浦晃久によるフィリー・ソウル的な響きのストリングス、ホーン、コーラスアレンジが秀逸の一言に尽きる。

 アルバム曲では、自身が作詞作曲した比較的ストイックなメロディに、Curly Giraffeこと高桑圭による隙間を埋めすぎないミニマルなサウンドプロダクションとウェットなベースがUSインディーのような空間美を感じさせる「It’s a “New Day”」や、同じく高桑がベースを弾き、白根賢一(GREAT3)がドラムを叩くという“初期GREAT3”のリズム隊が揃った「Mr.Right」は、親交の深い、ハルカトミユキのプロデュースワークでも知られているアレンジャー、野村陽一郎とでかつての“渋谷系”な匂いさえする高純度な“ポップス”に仕上げられている。

 個人的に強く心惹かれたのは、Soulife(佐々木望、河田総一郎)作曲、Tasuku Maeda(TinyVoice Production)編曲によるHIPHOP的なタイトなビートとアコースティック・ギターの音色が交差する「Rainbow」と、同じくSoulifeが作曲を手がけ、MANABOON(TinyVoice Production)が編曲したUKアーバンソウル的なホーンアレンジと横ノリのリズムが心地いい「I believe」。Leolaの音楽性がサーフ・ミュージックに由来するものだと言うことは間違いないが、これらのサウンドアプローチは不意を突かれたものであり、彼女の歌声がマッチしていることもまた新鮮だった。

 Leolaは自身の音楽を“ビーチ・ミュージック”と総称する。幼少期に母の影響でカーペンターズやチューリップ、井上陽水、クラシックを聴き、東京に出てきてからはミシェル・ブランチやシェリル・クロウなどの音楽を好んでいたという。ここまでだとポップ・シンガーとして真っ当な道を歩んでいるように思えるが、彼女がLINE MUSICで公開しているプレイリストを見ると、今回アルバムで試みた意外とも取れるアプローチの原点を垣間見れるように思う。

 そこにはドノヴァン・フランケンレイターやRickie-G、ジャック・ジョンソンやジェイソン・ムラーズといった、彼女のベースになっているサーフ・ミュージックがあったかと思えば、Sister SledgeのようなUSソウルミュージック、レゲエからはボブ・マーリィ、テイラー・スウィフトやシャナイア・トゥエインなどのカントリー勢と、多岐に渡るワールドミュージックがキュレーションされている。

 つまり、彼女の提唱する“ビーチ・ミュージック”とは、Leolaという良質で無垢なキュレーターによって再構築された楽曲をリスナーに提示するものであり、音の定義に捉われないからこそ、広く届きうる音楽なのだ。そんなクロスオーバーしたジャンルを上手く歌いこなすLeolaの歌声はもっと評価されるべきものだし、筆者としては彼女を構成する音楽の良質ささえもさらに認識されることを願う。

(文=中村拓海)

■リリース情報
『Hello! My name is Leola.』
発売:2017年7月12日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)AICL-3360 ¥3,500(tax in)
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)AICL-3362 ¥4,200(tax in)
通常盤 ¥2,800(tax in)

<収録内容>
・CD
1.Sunshine+Voice
2.Summer time
3.Let it fly
4.コイセヨワタシ。
5.Your melody...
6.It's a "New Day"
7.Rainbow
8.Mr.Right
9.I believe
10.I & I
11.The way
12.Hello, My name is...

・DVD/BD収録内容※初回生産限定盤のみ
<Music videos>
1.Rainbow Music Video
2.Let it fly Music Video
3.I & I Music Video
4.コイセヨワタシ。 Music Video
5.Mr.Right Music Video
<特典映像>
6.Rainbow Making Movie
7.Let it fly Making Movie
8.I & I Making Movie
9.Seeking “Leo-La” ~コイセヨワタシ。,Mr.Right Making Movie in Hawaii~

■リリースイベント情報
<日程/会場>
6月28日(水)19:00~@タワーレコード渋谷店B1F CUT UP STUDIO
6月30日(金)19:00~@タワーレコード梅田NU茶屋町店

・イベント内容
ミニライブ+シングル予約者対象:会場限定オリジナルフォトシート サイン&お渡し会
+アルバム予約者対象:会場限定フォトスペース2ショット写メ撮影会
※詳しくはLeolaオフィシャルサイトにて。

■関連リンク
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