Yogee、yahyel、The fin.……ルーキー~フジロック初出演組に共通する“2017年らしさ”

 前述のyahyelでも活動するメンバーを擁するDATS。いわゆるギターロック・バンドから、レーベルを<rallye>に移籍してからのシングル『mobile』、そして5月にリリースしたばかりの初のフルアルバム『Application』はそのテーマを「SNS世代のリアル」と称し、ハウスやエレクトロミュージックとバンドサウンドを融合したサウンドの上で、20代前半の彼らにとって当たり前のギアであるモバイルやアプリを通して、普通の毎日を描写。そこで自然と浮かぶ疑問や共感をリスナーに委ねる。音源でもクールな中にエモーションを見せる彼ら、ライブではさらにフィジカルな側面を打ち出すので、そのギャップやプレイヤビリティも確認してほしい。

DATS「Queen」

 前年のルーキー出演バンドで本ステージに出てほしいバンドを投票で決定する「selected by ROOKIE A GO-GO」で見事に勝利したのがMONO NO AWARE。今年3月にリリースした1stアルバム『人生、山おり谷おり』が、狭義のインディーバンドの枠に収まらない音楽性で評価を受けている。その、はっぴいえんどもニューウェーブもポストパンクもファンクも内包しながら、音楽的に高飛車になることなく、なんなら少し脱力したり笑える楽曲に落とし込むセンスが絶妙。フロントマンでボーカル&ギターの玉置周啓の溢れ出るおかしみと言葉のセンスにはぜひ注目を。

MONO NO AWARE「イワンコッチャナイ」
Yogee New Waves『WAVES』(通常盤)

 さて、これまで本ステージに出演していなかったことが不思議なぐらいの今年の大本命が、2014年のルーキーに出演し、今年、ついにゲートをくぐる。それが、Yogee New Wavesだ。前作『PARAISO』以降、メンバー交代があり、いよいよニューアルバム『WAVES』に向けてのライブや制作で、新メンバーの竹村郁哉(Gt)、上野恒星(Ba)が定着。バンドにタフネスを持ち込んだ今が必然的なタイミングだったのかもしれない。はっぴいえんど~サニーデイ・サービスなど脈々と流れる日本語のロックのDNA、都会っ子が紡ぐロマンチックで切ない、心のどこかでいつも大事にしたい音楽――盟友Suchmosとは音楽性こそ違えど、マインドの部分で共振する彼らが、チルなムード満点の「FIELD OF HEAVEN」に出演すること自体、気分が上がる。

Yogee New Waves「World is Mine」

 他にも2015年にルーキーに出演したTempalay、彼らの盟友でもあるドミコが「苗場食堂」に登場するのも興味深い。ともにUS西海岸のサイケデリックなテイストを血肉化しているバンドだが、Tempalayは実際、USのUnknown Mortal Orchestraが直接の影響源であることを公言している。一方のドミコはギター&ボーカルとドラムの最小編成で、The White Stripesをぐっとキャッチーにしたような中毒性の高い楽曲を鳴らす。二組とも古いマニアックな音楽もディグる貪欲なリスナーであり、バンドの形態にこだわらず、まずはやりたいことをやってみる、そうしたら突き抜けた曲ができた! というセンスとガッツが共存している。いい意味で日本のバンドシーンは窮屈そうな、キュートなフリーキーさが魅力的だ。

Tempalay「革命前夜」
ドミコ「まどろまない」

 もちろん、今回紹介したバンドはフジロック以外の今夏のフェスでも活躍を見せてくれることだろう。だが、日本の若手を確かな審美眼でフックアップし、新しい価値観を提示する今年のフジロックに初出演することの意味は大きい。見どころ満載の3日間だが、ぜひ彼らがキャリアハイを見せる現場に出くわしたい。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Skream!」「PMC」「EMTG music」「ナタリー」などで執筆。音楽以外にも著名人のテーマ切りインタビューの編集や取材も行う。

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