ゆず、これまでの道のりと新たな一歩ーー音楽への思いこめたデビュー20周年ドームツアー

ゆずが見せた20年の音楽の歩みと新たな一歩

photo by 田中聖太郎

 後半は、『ゆずイロハ1997-2017』から90歳になった2人によるナビゲートで、笑いを交えながら<ゆずイロハメドレー>を披露。とは言え、このセクションだけで20曲あり、メドレーの枠を遙かに越えたものになっていた。ステージでは、巨大ゆず太郎(ゆずのマスコットキャラクター)が光りながら動き、目にも楽しく魅せて聴かせる。また「恋の歌謡日」では北川が扮する女性=北見川潤子が登場して、続く「LOVE & PEACH」のときには瞬時に北川に戻っているという、イリュージョン(?)でも楽しませた。

 本編の最後には、最新の「タッタ」とデビュー曲の「夏色」を披露した。アコギとタンバリン、2人だけの歌で始まり、徐々にバンドサウンドへと移行する「タッタ」は、キャッチーで分かりやすいサビに楽しい振り付けもある。会場中に散らばったダンサーと共に、観客も一緒に歌って踊る様子は実に壮観だ。また「夏色」では、観客の「もう一回」という声援に「バカヤロー!」と返す流れが定番で、北川は「これからも20年バカヤロー!と言い続けられるように頑張ります」と語り、この日も嬉しそうに「バカヤロー!」を叫んだ。

photo by 太田好治

 この2曲は、出来た時期は20年という隔たりがあるものの、世代を問わず楽しめるという、ゆずの魅力の一つが共通して詰め込まれている。実際に会場には、小さいお子さんから上は60代や70代まで来場し、親子3代でファンというファミリーも少なくない。また、開演前に観客やスタッフ、関係者が全員参加でラジオ体操をするのも、ゆずのライブの定番になっており、ラジオ体操は小中校生のとき以来という大人のファンも多く、ライブが始まる前から童心に返って楽しむための演出が始まっている。この日も、ラジオ体操に始まり「夏色」まで、童心に還って一心不乱にライブを楽しむ観客の様子があった。

 アンコールでは、「20年経って、振り返ってばかりじゃなく、一歩前へと進んだ姿を見せたい」と、新曲「カナリア」を披露した2人。アコースティックなサウンドに、聴く者の背中をそっと押す軽快なサビ、そしてラップ風のパートもありと、また一つ進化した姿を見せてくれた。そこからは、老舗の味を守りながら、新メニュー開発にも余念の無い飲食店店主の心意気にも似た、音楽に対する2人の熱い思いが感じられた。

 そしてラストを締めくくったのは、「栄光の架橋」だ。「決して平らな道ではなかったけど」と、自身の20周年の道のりを重ねて歌った2人。幾多の苦難を乗り越えて栄光を掴むという歌詞は、まさしく20周年ライブのこの時に、歌うべくして作られたと思うほどのリンクと説得力を持っていた。

photo by 田中聖太郎

(文=榑林史章)

ゆず オフィシャルサイト

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