マキシマム ザ ホルモンの容赦ない肉弾戦! 『耳噛じる真打TOUR』初日を石井恵梨子が目撃

ホルモン『耳噛じる真打TOUR』初日レポ

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マキシマムザ亮君

 話が長くなったが、ライブはファーストのリアレンジ・バージョン『耳噛じる 真打』からの曲、そして目下オリジナルアルバムとしての最新作『予襲復讐』の曲をメインにスタート。リアレンジが新鮮なのは当然だが、驚くのはどの曲もリフが徹底的にソリッドかつキャッチーであることだ。マキシマムザ亮君もこの2年で驚くほどスリムになったが(生活習慣病、および痛風合併症の為、医者からこのままでは死ぬと宣告されたらしい。今はすっかり健康体だ)、一発で脳天に突き刺さるリフ、歌詞よりもギターの音そのものを歌いたくなるような中毒性を持つリフ、聴いた瞬間から頭をガシガシ振らざるを得ないキレキレのリフ。それらが、ものすごく研ぎ澄まされていることに気づく。

 若き日に洋楽ラウド系の洗礼を浴びた人ならわかるだろうが、そもそも英語だから歌への共感などは二の次だ。まずは音の激しさに驚くし、激しさの中にも絶対キャッチーな部分があるから惹きつけられる。そのキモになるのがギターリフである。そこで受けてきた衝撃や刺激を、改めて振り返り、全力で掻き集めているのが今のホルモンなのだろう。ただでさえ人気があるのだから、ライブで鉄板曲をやれば間違いなく盛り上がる。そういうルーティンに陥らなかったという意味で、この2年のライブ封印はとても充実した結果をもたらしたようだ。

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 中盤の「アバラ・ボブ〈アバラ・カプセル・マーケッボブ〉」は、AA=の上田剛士がプログラミングで参加したリアレンジ・バージョン。強烈なデジタルビートから始まるこの曲は、今の彼らがヘヴィでグルーヴィなノリではなく、ソリッド、かつ即効性の高い音を求めていることがよくわかるナンバーだ。同時にそれは「10代の求める刺激にドンピシャ」という方向でもある。アルバム『予襲復讐』はマキシマムザ亮君の中学時代の衝動をそのまま詰め込んだ怪作だったが、分別も知識も経験値もなかった頃の、何もないがゆえの底なしのエネルギーというものが、今なお、というよりも、積極的な勢いを手にしてムクムク膨らんでいる。これが2017年のマキシマム ザ ホルモンだ。ものすごい湿気の中で今にも意識が飛んでしまいそうなファンも多数だが、比べてメンバーはケロッと元気。「いつもより全然ラクだよねぇ?」とナヲが言い放ったときは冗談だろと耳を疑った。でも、冗談ではないのだ。こんな音を出しているバンドなのだから、そうじゃなきゃいけないのだ。

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 実をいうと、二人目の子供を授かったナヲが、ファンに祝福されることで感極まって……みたいな内容になるのかと思っていた。大人になって無茶は減ったけれど人生はより豊かになって、みたいな片鱗も見えるのかしらと想像していた。全然違った。スタートからラストまで容赦ない肉弾戦。酸欠で死ぬかと思った終了直前に「この程度で音を上げんの?」と高笑いするメンバーがいた、という感じの2時間だ。いや、参りました。成長するというより、若返りまくるマキシマム ザ ホルモン。ツアーはここから続いていく。

(Photo by Takahiro Saito)

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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