パスピエはライブバンドとしての強さを得たーー“音楽的DNA”表現したツアー最終公演

パスピエはライブバンドとしての強さを得た

 高度な音楽理論に支えられたアレンジと80sニューウェーブを経由して2017年のポップミュージックへと導くセンスがひとつになった楽曲、卓越したプレイヤビリティを融合させたバンドサウンド、そして、現代アートにも通じるハイセンスな映像。最新アルバム『&DNA』を伴った全国ツアー『パスピエ TOUR 2017“DANDANANDDNA”』のファイナルとなるNHKホール公演(5月7日)でパスピエは、自らの音楽的DNAをこれまででもっとも直接的に表現してみせた。その最大の要因はメンバーの5人の個性がしっかりと活かされ、バンドとしての力強さが大幅に上がっていたことだ。

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 床、背面を含め、全体が真っ白に染められたステージに最初に登場したのは、大胡田なつき(Vo)。まずはステージ前方に置かれたプロジェクターで“リキッドライティング(オイルアート)”を披露。ステージ奥の白いスクリーンに赤、青、黄色などのビビッドな色が生き物のように動き、カラフルかつポップな映像が生まれる。そこにツアータイトル「DANDANANDDNA」という文字が浮かび上がり、メンバーも姿を見せる。オープニングは『&DNA』の起点になったシングル「ヨアケマエ」。さらに遊び心たっぷりのアレンジが楽しい「ギブとテイク」(3rdアルバム『娑婆ラバ』)、「とおりゃんせ」(2ndアルバム『幕の内ISM』)、「永すぎた春」(4thアルバム『&DNA』)、「チャイナタウン」(1stミニアルバム『わたし開花したわ』)とこれまでのキャリアを一気に突き抜けるようなラインナップが続く。ライブアンセムのひとつである「チャイナタウン」をライブ前半に披露できるのも、いまのパスピエの強さだろう。

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大胡田なつき(Vo)

 「(満員の会場を見て)こんないい眺め、なかなかないよ。正直、超嬉しいです。『&DNA』というアルバムを作って、いま私たちがやりたいこと、表現したいことを表現できたと思っていて。今日は私たちの遺伝子を生で感じて楽しんでもらえたらいいなと思います!」(大胡田)という挨拶のあとは、『&DNA』の楽曲が次々と披露される。ここで印象的だったのは、メンバーひとりひとりの個性が発揮されていたこと。「やまない声」における露崎義邦(Ba)のメロディアスなベースソロ(複雑なフレーズにも関わらず、手元をほとんど見ない)、やおたくや(Dr)の骨太なグルーヴが炸裂した「ああ、無情」、三澤勝洸(Gt)のタッピング奏法によるフレーズに導かれた「DISTANCE」。優れたプレイヤーであるメンバーの技術とセンスが前景化し、バンドとしての魅力が格段に上がっていたのだ。アルバム『&DNA』のインタビューの際に成田ハネダ(Key)は「“バンド・パスピエ”が出来る、いちばんソリッドな音作りを意識して。このメンバーで出し得る、いちばん新しくて、いちばん良いものが今回のアルバムだと思います」と語っていたが、そこで得た手応えはライブにもダイレクトに反映されていた。

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成田ハネダ(Key)

 今回のツアーのためにリアレンジされていた「S.S」も素晴らしかった。ポストパンク的な手触りのサウンドでインパクトを与えながら、楽曲の途中でいきなりブレイクし(メンバーも動きを止めてました)、演奏陣全員のソロに突入。オーディエンスもメンバーの名前をコールしながら、楽しそうに盛り上がっていた。この日のライブでは映像、レーザーなどもふんだんに使われていたが、その中心にあるのはあくまでも音楽。パスピエのアレンジ力、演奏力が発揮された「S.S」からは“演出やMCに頼らず、バンドが生み出すサウンドと音を通してコミュニケーションを図りたい”というメンバーの意志がはっきりと感じられた。

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