シドの楽曲がV系の枠を超えて愛される理由 バンドの持つ魅力を改めて考える

シドがV系を超えて愛される理由

 過去にインタビューした際、マオは歌詞に対して「バンドを結成した頃は自分たちがいるジャンルのシーンからどう抜け出すか、どう自分らの個性を確立していくか、いろいろ葛藤した。けど、僕がやりたかったのはちゃんと物語性があるもの。ジャンル関係なく、誰が聴いてもわかりやすい言葉で伝えるという部分はすごく意識してます」と説明してくれた。つまり、周りにいた同ジャンルのバンドの中から一歩抜き出るために確立させた個性が、そのまま“外の世界”でも通用するものだった。だからこそ、彼らの楽曲は『黒執事』や『鋼の錬金術師』『マギ』『BLEACH』などのアニメ主題歌としても違和感なく楽しむことができる。メジャーデビュー曲「モノクロのキス」を筆頭に「ENAMEL」、そして前作「硝子の瞳」と3作が『黒執事』のテーマソングに採用されたことも、物語性の強い歌詞を得意とするシドならではと言える。

シド 『バタフライエフェクト』Music Video(Short Ver.)

 このような要因が、最初に触れた「そうそう、これこれ」につながっていく。つまり、シドの楽曲は「誰もが知る“エバーグリーン”を目指した」からこそ、新曲なのに初めて聴いた気がしない、“いつもそこにあった”音楽へとどんどん接近していったのだ。それは発売されたばかりの最新曲「バタフライエフェクト」も同様で、マオによる独特の節回しや歌詞(フレーズ)の区切り方はどこか機械的で、ヘヴィでザクザクと刻むミドルテンポのリズムとの相性も抜群。さらに歌詞では窮地に陥った主人公が、自身の人生に文字どおり“バタフライエフェクト(=バタフライ効果。些細なことがさまざまな要因を引き起こし、だんだんと大きな現象へと変化すること)を望むというストーリーだ。ロックバンドとしての主張が全編に感じられる。攻めのサウンドや巧みなアレンジの上に、上記で触れた魅力が凝縮された、いや、過去よりも純度が高まったメロディと歌詞が乗ることで、唯一無二のオリジナリティを持つバンドとしての余裕と、さらに高みを目指そうとする貪欲さをアピールしている。2017年のシドはこの曲と、『劇場版 黒執事 Book of the Atlantic』の主題歌として独特の世界観を提示した「硝子の瞳」を対にして、よりスケールアップした活動を見せてくれることだろう。

 5月12、13日開催の日本武道館公演『夜更けと雨と』と『夜明けと君と』は、すでにソールドアウトを記録。この2公演を通じて、シドは現在進行形のバンドの姿を見せてくれることだろう。一体どんな物語を繰り広げてくれるのか、今から楽しみにしておこう。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■リリース情報
『バタフライエフェクト』
発売:2017年5月10日(水)
価格:初回生産限定盤A&B(CD+DVD)¥1,500+税
通常盤(CDのみ)¥800+税

<CD収録内容>
・全タイトル共通
1.バタフライエフェクト
2.バタフライエフェクト –Instrumental-

<DVD収録内容>
・初回生産限定盤A
「バタフライエフェクト」Music Video
「バタフライエフェクト」Photo Session/Music Videoメイキング映像

・初回生産限定盤B
「バタフライエフェクト」Music Video
スペシャルインタビュー映像

<配信情報>
「バタフライエフェクト-Special edition-」
iTunes

・収録内容
M1「バタフライエフェクト」
M2「妄想日記2」
M3「V.I.P」
M4「one way」
M5「バタフライエフェクト -Instrumental-」

■ライブ情報
シド 日本武道館公演 2017 ※両日SOLD OUT
「夜更けと雨と」2017年5月12日(金) 日本武道館 開場 17:30 / 開演 18:30
「夜明けと君と」2017年5月13日(土) 日本武道館 開場 16:00 / 開演 17:00
チケット料金:¥6,800(全席指定・税込)

■放映情報
ニコニコ生放送「シド『バタフライエフェクト』発売 & 日本武道館2days公演 前夜祭特番」
放送日時:5月11日(木)21:00~
番組視聴&タイムシフトはこちら

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