>  >  > 長澤知之のライブには“緊張”と“開放”がある

『Nagasawa Tomoyuki Band Tour 'Kumo No Ito' 2017』レポート

長澤知之のライブには“緊張”と“開放”があるーー10年のキャリア総括したツアー最終日を観た

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 長澤知之が4月24日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにてツアー『Nagasawa Tomoyuki Band Tour ‘Kumo No Ito’ 2017』のファイナル公演を迎えた。

 およそ3年ぶりにバンドセットでのステージとなったこの日は、デビュー10周年を総括するアンソロジー・アルバム『Archives #1』発売後のライブ。セットリストはもちろんこれまでのキャリアを総括するような選曲となり、長澤知之のソングライティング力と表現力の高さをあらためて実感する時間となった。

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 サポートメンバーの松江潤(Gt)、須藤俊明(Ba)、山本健太(Key)、秋山タカヒコ(Dr/downy、THE MOTAL)とともにステージに現れた長澤知之。ライブは「片思い」からスタートした。ゆったりとした幕開けから間奏を挟んで一転、リズムが切り替わりバンドのグルーヴも加速していく。その流れに乗ったまま、「MEDAMAYAKI」「あんまり素敵じゃない世界」とアップテンボなナンバーを立て続けに披露した。予想のつかない曲の展開、そしてファルセット、シャウト、ビブラートなど、声を楽器のようにしてその時々で使い分けていくことで、長澤知之の楽曲には豊かな奥行きが生まれ、音楽の持つイマジネーションは無限に広がっていく。

 その歌声の自在さを象徴していたのが、「フラッシュバック瞬き」だろう。秋山のタイトなドラミングから始まり、そこに浮遊感のあるメロディが乗る。長澤は美しいファルセットボイスで冒頭を歌い上げ、そのままラップ的な歌唱で言葉を矢継ぎ早に投げかけていく。『黄金の在処』(2013年)に収録されているこの曲は、四つ打ちのキックやキーボードの音色、ボーカロイドが入っており、音源で聴いた時にはデジタルな感触の強い印象もあったが、この日のライブではバンドの演奏力によってフィジカルなパワーを携え、長澤の歌もまたエモーショナルに変化を遂げていた。

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 昨年12月に発表したミニアルバム『GIFT』収録の「アーティスト」、そしてバンドメンバーによるアカペラの美しいハーモニーを響かせた「スリーフィンガー」では、リラックスした雰囲気を作りながらも、「EXISTAR」「夢先案内人」では、再びアグレッシブなサウンドを響かせる。長澤知之のライブは、予定調和な展開に陥ることは一度もなく、ひとつひとつの楽曲が新鮮で刺激的に聞こえてくる。

 そしてライブも中盤に差し掛かった頃には弾き語りコーナーへと移行。まず、ギターを爪弾きながらぽつりぽつりと呟くように、「三年間」を歌い出す長澤。次第に、怒りや焦燥を吐き出すような歌い方に変わり、切迫感と緊張感が高まる。ギターと歌。その最小限の構成だからこそ、その生々しい叫びはダイレクトに空気を震わせ、聴く者の心に刺さる。<三年間><六年間><九年間><十二年間>……と続き、さらにそのまま「パーフェクト・ワールド」が始まり、その張り詰めた空気も最高潮に達しフロアからは大きな歓声と拍手があがった。その後、長澤は松江を呼び込み「はぐれ雲けもの道ひとり旅」と、さらに山本も加わり3人で「無題」を演奏し、温もりのあるアコースティックサウンドを奏でた。

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 「神様がいるなら」から始まった終盤は、再び5人による演奏のダイナミズムを感じられる展開に。松江の鋭利なギターリフが口火を切り、つんのめるかのようなスピード感でバンドアンサンブルがドライブしていく。そして、軽快かつラフな演奏でユーモア溢れる「R.I.P.」を歌い、ディレイのかかった深みのあるサイケデリアをじっくりと聴かせた「マンドラゴラの花」、シンプルなアレンジで壮大なカタルシスを導いた「蜘蛛の糸」を演奏。その深い余韻を残しながら、本編は、2006年のデビュー曲「僕らの輝き」でもって締めくくられた。

      

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