鹿野 淳×家入一真が語る“音楽フェス通じた社会貢献” クラウドファンディングで広がる新たな価値観

鹿野 淳×家入一真が語る“フェスとチャリティー”

「リスクを取って最初の一歩を踏み出す人ってすごく尊い」(家入)

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ーー先程家入さんから話がありましたが、音楽業界ではどんどんクラウドファンディングを使用するアーティストの母数が増えてきています。最近だとぼくのりりっくのぼうよみさんなど、メジャーアーティストの使用例も少なくありません。鹿野さんはこれらの動きをどう見ているのか気になります。

鹿野:ここ数年の音楽業界って、インディペンデントーー自分たちで自分たちのことを成していく、片付けていくことが一つの主流になってきているわけじゃないですか。クラウドファンディングのやり方って、そことマッチしているんでしょうね、きっと。

家入:僕らはあくまで音楽業界に対して、時代が変わっていく中で何ができるのかを考えているだけで。残念ながら契約が打ち切られてしまった方や、やりたいことはあるけど予算がでないものに対して寄り添っているということなんです。ぼくのりりっくのぼうよみさんは、メディアを作るという従来のミュージシャン活動からズレるものだったので、もちろんメジャーレーベルからの予算は割けないですよね。だからCAMPFIREを使用したし、こちらも応援させていただいたわけで。使う方が有名か無名かということはあまり関係なくて、何かにチャレンジしたいという気持ちに大差はないはずなんです。むしろすでに有名な方のほうが、一歩踏み込むリスクは大きいと思うので、僕たちとしては等しくサポートしていきたいです。最近ハッとさせられたのはゆるふわギャングの事例で。一部でCAMPFIREを使ったことを同業のラッパーにダセえとディスられたんですよ。でも、Sophieeさんが「こういう意見が上がることも見込んで踏み込んだやり方」(https://twitter.com/sophieespeech/status/799052081457819648)と言ってくれていてハッとさせられたんですよね。昔、X JAPANのYOSHIKIさんも『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で早朝ヘビメタをやっていて、「なんでそんな番組に出るんだ」と糾弾されたけど、結果的にそこからお茶の間にリーチしたわけじゃないですか。リスクを取って最初の一歩を踏み出す人ってすごく尊いなと思うし、そういう方に使ってもらえているのは嬉しいですね。

ーー鹿野さんの「インディペンデントであることが当たり前」というお話ですが、それは音楽業界が既存の形からどのように変化しているから起こり得ていることだと考えますか?

鹿野:いまお話いただいた「既存の形」って、日本だと1980年代後半からCDバブルみたいなのが出来上がってきて、それがまかり通らなくなってきたのが現在じゃないですか。これまでも、世界のなかでもCDが売れているのは日本くらいで、まだマシだと言われてきたし、実際にPrimal ScreamのCDが本国UKより日本の売上が良かったりしたこともあったんですよね。日本はそもそも、音楽という商品に対して対価を払っていく国だったんです。でも、いよいよ世界のなかでマシかどうかという基準も関係ないくらい、音楽創作活動を適正にできるかどうかという状況になってきた。そこから抜け出すやり方はひとつかふたつくらいしかなくなっていて、ひとつはちゃんと新しいマーケットを見つけていくこと、もうひとつは今あるマーケットをきっちり守っていくことだと思うんです。後者に関しては、ベテランのアーティストが結成20周年以上を迎えるケースも多くなってきたという、僕がこの業界に入る1990年まではあまりなかった動きが目立ってきていることも顕著で。これまでのアーティストはアスリートと同じ刹那な職業で、セカンドライフに困るというのが通説だったんですよ。勿論今でもそこで困ったり悩んでいるアーティストはいます。でも現在は、自分たちをここまで続けさせてくれているファンたちと、お金のコミュニケーションを含めたダイレクトなやり取りができているし、アーティストの方も自分たちから卒業していかなかったファンに向けて誠実かつ一生懸命な視線を向けていくようになった気がします。それに対してファンもお布施と言われようが何と言われようがアーティストの活動を商品を買ったりライブに行ったりすることでサポートするという、契約なき強固な関係が生まれることで、自分たちのマーケットを守ることに成功しているんです。

ーーなるほど。前者の「ちゃんと新しいマーケットを見つけていくこと」についてはどうでしょうか?

鹿野:SNS等でのプロモーションが主流になってきたことで、確かに身近になったかもしれませんが、一方でアーティストがコアファンを作るのが難しくなっているのかなとも思うんですよ。グレーゾーンや一過性のファンを作っていくことは、タイミングとプロモーションのやり方と才能でうまくできるかもしれませんが、コアファンを作るやり方と場所が明らかに新しくなり、そして難しくもなってきている気がする。特にバンド以外の音楽はそうかもしれません。僕がクラウドファンディングに面白みを感じるのはそういった状況での使い方だと考えていて。コアファンを作りたいアーティストが、クラウドファンディングを使うことで自分たちのコアファンがどれだけいるのかを知ることができる計測ツールとしての側面もあると思うんです。支援が集まらなかったら、自分たちはコアファンがいないんだと突きつけられるし、そこでまた新しい活動のあり方を見直せるんじゃないかなって。ダイレクトにマーケティング・アイデンティティの調査ができるわけですから。もちろん、そこで活動を辞めようとかそういうことではなくて、自分たちがコアファンを作れていなかったことを次に活かして、そこを契機にコアファンが生まれることもあるかもしれない。そういうふうに考えると、新たなマーケットを考えるツールとして面白そうだなと感じるんですよね。

家入:まさにおっしゃる通りですね。それってミュージシャンに限らず同じ考え方の人が沢山いて、「新たな商品を作りたい」という考えにどれくらいのニーズがあるのかをテストマーケティング的に使う方もいるんです。

鹿野:そうなんですね。先程「インディペンデント」であることが主流になっている、という話をしましたが、インディーズとメジャーの一番大きな違いはプロモーション力だという考え方があるわけです。そうなってくると、インディーズの場合はどうプロモーションをしていくかが大事になってくるわけで。例えば下北沢系と言われているアーティストたちは下北沢のコミュニティで生きているから、その外には届きにくいかもしれない。でも音楽を好きな人には、下北沢はある種音楽の聖地として認識されていて、地方の音楽ファンには現実以上にその街にロマンを感じている人がいたりもする。インターネットを通じて下北沢のアーティストについて調べている人がその人たちの活動を知り、全国区になっていくケースも無くはない。クラウドファンディングはその「名前を広める」というプロモーションの役割を同時に果たせるのも興味深いです。ネットを通じてチャリティーの呼びかけをしていると、「実際に鹿野さんがやっているチャリティーライブには行けないけど、飛行機に乗ってライブを見に行くよりも、この音楽を支援する形に参加したいから、想定される交通費も含めて募金します」と言ってくれる方がいらっしゃったりもする。クラウドファンディングはそういう人たちに向けてのさらなるアクションにもなるだろうし、上手く使う人が今後もっと登場して、音楽業界におけるガラス張りの方法論として定着していけばいいですよね。そのためにもよりユーザーフレンドリーな変化と進化をお願いしたいです。

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ーー今回の取り組みで生まれた関係性や意見交換をするなかで、これからも新しいものが生まれそうですね。

家入:アーティストだけではなく、すべての利用者に、クラウドファンディングと言うものをうまく使っていただければと思っているんですけど、とはいえネットサービス全般になんとなく嫌悪感を抱く方もいらっしゃるのは事実で。でも、僕らはネットで世界が変わる!と考えていなくて、これまでいろんなものを築いてきた方と一緒に何ができるか、コラボすることでどんな新しい価値観を提供できるかを追求していきたいだけなんです。だからこそ、一定数出てくるそういった方に向けて何ができるかをこれからも考えていきたいですし、今回の試みも含め、新たな分野に挑戦することで価値を生みだしていければと思います。

(取材・文=中村拓海/撮影=はぎひさこ)

■ビバラオークション
埼玉県内の障害者のアート活動に向けたチャリティ・オークション。

<出品アーティスト一覧>
ACIDMAN / アルカラ / 175R / 打首獄門同好会 / UVERworld / KANA-BOON /KEYTALK / キュウソネコカミ / Creepy Nuts /クリープハイプ / go!go!vanillas / Gotch & The Good New Times / Suchmos / SiM / G-FREAK FACTORY / 水曜日のカンパネラ / SKY-HI / スガ シカオ / SUPER BEAVER / ストレイテナー / 04Limited Sazabys / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / Dragon Ash / BIGMAMA / ピエール中野 / フレデリック/ HEY-SMITH / BaseBallBear / THE BAWDIES / ぼくのりりっくのぼうよみ / MONOEYES / ヤバイTシャツ屋さん/ UNISON SQUARE GARDEN / 夜の本気ダンス/ lovefilm (五十音順)

特設サイト

■公演概要
『VIVA LA ROCK 2017』
公演日:2017年5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)
会場名:さいたまスーパーアリーナ
開場/開演/終演:9:00/10:30/20:30(予定)
出演アーティスト (50音順):
5月3日(水・祝)出演アーティスト
アルカラ / THE ORAL CIGARETTES / ONIGAWARA / KANA-BOON / KEYTALK / クリープハイプ / Getting Better(片平実/神啓文/斎藤雄) /go!go!vanillas / SHISHAMO / SiM / SUPER BEAVER / パノラマパナマタウン / 04 Limited Sazabys / BRADIO / BLUE ENCOUNT / フレデリック / Base Ball Bear / PELICAN FANCLUB / ポルカドットスティングレイ / 眩暈SIREN/ yonige / 夜の本気ダンス / LAMP IN TERREN / LEGO BIG MORL / Lenny code fiction

5月4日(木・祝)出演アーティスト
雨のパレード / キュウソネコカミ / Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / Gotch & The Good New Times / サカナクション / Suchmos / シンリズム / 水曜日のカンパネラ / SKY-HI / 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) / ストレイテナー / SPECIAL OTHERS / cero / DADARAY / D.A.N. / DJピエール中野(凛として時雨) / DJやついいちろう(エレキコミック) / DENIMS / 東京スカパラダイスオーケストラ / VIVA LA J-ROCK ANTHEMS / フレンズ / THE BAWDIES / ぼくのりりっくのぼうよみ / mol-74 / yahyel / UNISON SQUARE GARDEN / lovefilm

5月5日(金・祝)出演アーティスト
Ivy to Fraudulent Game / ACIDMAN / 175R / UVERworld / 打首獄門同好会 / Age Factory / ENTH / 尾崎裕哉 / Ken Yokoyama / G-FREAK FACTORY / DJダイノジ / 10-FEET / Dragon Ash / NUBO / 爆弾ジョニー / the band apart / BIGMAMA / FRONTIER BACKYARD / HEY-SMITH / Bentham / My Hair is Bad / MONOEYES / MOROHA / ヤバイTシャツ屋さん / ROTTENGRAFFTY / LONGMAN

■イベント情報
『VIVA LA GARDEN 』
開催日:4月28日(金)16時〜5月7日(日)まで
会場:けやきひろば(埼玉県さいたま市中央区新都心10)
入場無料、荒天中止

『auスマートパス・うたパス presents「VIVA LA ROCK 2017 前夜祭」』
日時:5月2日(火)、開場18:00 / 開演19:00 / 終演22:00(予定)
会場:さいたまスーパーアリーナ CAVE STAGE
出演:Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / BRADIO / フレンズ / リーガルリリー / DJライブキッズあるある中の人

『ALL NIGHT VIVA!』
5月3日(水・祝)22:00〜26:00
『ビバラ初日、Getting Better ナイト!』
DJ:Getting Better(片平実 / 神啓文 / 斎藤雄) / 鹿野 淳

5月4日(木・祝)22:00〜26:00
 『ロック大人の語らい』
TALK GUEST:石毛輝(lovefilm)/ ホリエアツシ(ストレイテナー)
DJ:DJやついいちろう(エレキコミック)

5月5日(金・祝)22:00〜26:00
『20年間助演ドラマートークSHOW』
TALK GUEST:浦山一悟(ACIDMAN)/ KOUICHI(10-FEET)/ 桜井誠(Dragon Ash)
DJ:Getting Better(片平実 / 神啓文 / 斎藤雄)

チケット:ALL NIGHT VIVA!入場券(5月3日、5月4日、5月5日):各日22:00〜7:00 ¥3,000(共有エリア、女性エリア)
スマチケ
紙チケ
詳しくはこちら

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