東京パフォーマンスドールの“集大成”と“可能性” 中野サンプラザ公演が見せたもの

TPD、“集大成”と“可能性”のサンプラザ公演

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 セットリストの中には、彼女たちのシングル表題曲として世に問うた楽曲や、先代グループの持ち曲のリアレンジバージョン、活動初期の舞台『PLAY×LIVE「1×0」』公演での代表曲など、それぞれに独立した意味を持った曲たちが並ぶ。あるいはライブ中盤、バーのセットを用いた「Linger」で見せた、演劇的な要素を織り込んだ演出も、特に『1×0』の期間を通じて育んできた彼女たちの引き出しである。それらをコーナーとして切り分けてしまうのでなく、連続性を持った流れとして構成することで、特有のエンターテインメントを作っていく。メンバーたちがひとつの成熟を迎えつつあるからこそ、その面白みがあらためて感じられた。

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 そのメンバーたちの成長を見守り、ここまでの道程を支えてきた象徴的な楽曲が、アンコールで披露された「DREAMIN’」だ。神宮沙紀のピアノとメンバーのコーラスでスタートし、そののちいつものようにオーディエンスと空気を共有するパフォーマンスへと展開していったこの日の同曲に、これまで以上の意味がこもっていたことは間違いない。「DREAMIN’」は披露のたびに、東京パフォーマンスドールと聴き手との歴史を、立ち会った人々がそれぞれの形で思い返すことのできる楽曲である。思い返すべき歴史は、グループのキャリアにつれて厚みを増していく。メディアアートとしての表現でインパクトを見せた『1×0』、対照的にフィジカルの強さで勝負をかけた『ネイキッド』といった、過去のダンスサミットの経験を昇華し、統一的な流れに落とし込んでみせた『DREAM CRUSADERS』を締めくくったことで、その歴史はひとつの区切りを迎え、新たなレベルに向かうスタートに立った。

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 その蓄積の最前線には、パフォーマーとして格段に力強さをアップさせた9人がいる。この日、幾分狭く感じた中野サンプラザは、すでに目標ではなく通過点になった。より大きな目標を目指す準備は、すでに整っている。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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