CRAZYBOYは“強力なヒップホップ作品”を生み出した DARTHREIDERの『NEOTOKYO EP』評

CRAZYBOY『NEOTOKYO EP』評

LDHとヒップホップビジネス

 総合エンタテインメント・プロジェクト『HiGH&LOW』に代表されるように、LDHのエンタテインメントは楽曲にせよ、映画やドラマにせよ、ライブにせよ、圧倒的な“エネルギー”を感じさせます。このエネルギーは誰もが認めざるを得ないところで、CRAZYBOYの作品にもそれは感じます。

 日本のエンタテインメントというと、丁寧さや繊細さを評価されがちですが、彼らはまた違うアプローチでインパクトを与えようとしていて、そこがすごく面白いです。HIROさんはもともと、90年代初頭のヒップホップシーンの中で活躍していたダンサーで、当時のヒップホップが持っていたエネルギーをよくご存知なのだと思います。そのエネルギーを現代的に表現しているのがLDHのエンタテインメントの一側面なのだとすると、とても興味深いですし、長らく続いてきた芸能の方向性とはまた違うやり方で、自分たちがカッコイイと思う表現を次々と実現していく姿勢に、勇気を与えられる人はすごく多いはずです。

 アメリカでは、ヒップホップはマイノリティが一発逆転するためのツールとしても認識されていて、それこそ世界中で「ヒップホップでメイクマネー」は行われています。ただ、日本でヒップホップを表現するには工夫が必要で、そのままアメリカのやり方を真似しても上手くいくわけではありません。それに対するひとつの回答として、LDHは今のやり方を提示しています。

 たとえば、THE RAMPAGEのメンバーはみんな、とても礼儀正しくて真面目です。日本人としての美徳を重んじている姿勢で、そこを踏まえた上でのエンタテインメントだからこそ、LDHはこれだけ多くの人に支持されたのだと感じました。もちろん、すべてのヒップホップ・アーティストがそうあるべきとは言いませんが、少なくとも彼らのやり方はある意味で正攻法です。それに、若者をきちんと教育する機能を備えているからこそ、たどり着ける表現もあります。小さい頃からダンスを練習して、ヒップホップのビート感を当たり前に身につけた子たちが、これからはたくさん出てくるでしょうし、そのパフォーマンスのレベルは非常に高いものになるはず。彼らに背中を見せるという意味でも、CRAZYBOYの活躍には期待せずにはいられません。

■DARTHREIDER a.k.a. ReiWordup

77年フランス、パリ生まれ。ロンドン育ち東大中退。Black Swan代表。マイカデリックでの活動を経て、日本のインディーズHIPHOP LABELブームの先駆けとなるDa.Me.Recordsを設立。自身の作品をはじめメテオ、KEN THE390,COMA-CHI,環ROY,TARO SOULなどの若き才能を輩出。ラッパーとしてだけでなく、HIPHOP MCとして多方面で活躍。DMCJAPAN,BAZOOKA!!!高校生RAP選手権、SUMMERBOMBなどのBIGEVENTに携わる。豊富なHIPHOP知識を元に監修したシンコー・ミュージックのHIPHOPDISCガイドはシリーズ中ベストの売り上げを記録している。
2009年クラブでMC中に脳梗塞で倒れるも奇跡の復活を遂げる。その際、合併症で左目を失明(一時期は右目も失明、のちに手術で回復)し、新たに眼帯の死に損ないMCとしての新しいキャラを手中にする。2014年から漢 a.k.a. GAMI率いる鎖GROUPに所属。レーベル運営、KING OF KINGSプロデュースを手掛ける。ヴォーカル、ドラム、ベースのバンド、THE BASSONSで新しいFUNK ROCKを提示し注目を集めている。

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