『関ジャム』プロデューサーに聞く、“マニアックでポップ”な音楽番組の作り方

『関ジャム』Pが語る「番組の裏側」

「ゲストに自分の話ばかりさせるのが申し訳ない」

ーー毎回キャスティングも面白いですよね。ゲストの選定はどのようにされているのでしょうか。

藤城:キャスティングに関しては、アーティストの出演が先に決まり、そこからテーマを決めていく回と、僕らでテーマを先に決めて幅広くキャスティングする回の2方向があります。番組としてキャスティングの大きな転機になったのは、音楽プロデューサーのヒャダインさんと蔦谷好位置さんをゲストにお招きした回(2016年6月5日放送)です。この時は「アーティストではなく、裏方の作り手が本気で勧める音楽って何なんだろう?」と考えたのがきっかけで、実際に打合せをしたらめちゃくちゃ面白くて、プロデューサーさんらしくトークも曲のプレゼンも見事で……間近で見てて感心するばかりでした。

ーー蔦谷さんの話が出たので、先日放送された『2016年ベストソング』の話を再び。彼がT字路s「はきだめの愛」を紹介したりと、マニアックな選出が話題を呼びました。

藤城:失礼ですが正直、僕なんかは知らない曲がいくつもありました……。でもその理由を聞くと誰もが納得するようなものなんですよ。だから、「これだとTV的に知名度が低いので他の曲を……」みたいなことはしたくなくて。プロが自信を持って勧めてるんだから、僕らはそれを信頼するだけでした。実際オンエア後の反響は今までで一番だったかも。しかし、業界では凄い方でもお茶の間が広く知っているわけではないとも思うんですよ。コアな視聴者以外の、そもそも彼らの凄さを知らない視聴者にどう面白がってもらえるかが、僕らが気をつけなきゃいけないところです。

ーー確かに、音楽好き以外の方がプロデューサーのことまで知っているというケースは少ないかもしれません。

藤城:いしわたり淳治さんやtofubeatsさんのことを知らない方にも、いしわたりさんが西野カナさんの歌詞分析をしたり、tofuさんによるピコ太郎のトラック分析が面白いと思ってもらえたのは収穫でした。メジャーなアーティストの裏側だけでなく、未知のものへの一般視聴者の興味を強く感じました。それが振付師の世界をコアにお届けした回が反響が大きかったことにも繋がるかもしれません。

ーーキャスティングの幅を広げた先に、何を求めていたのでしょう。

藤城:アーティストの凄さを追求していく一方、ゲストご本人に自分の話ばかりさせるのが申し訳ないなと思うこともあって……まぁ当たり前の話ですが。自分で「ここが凄いよ」と話すよりも、他のプロの方が話すほうが新たに気づく部分もあるのではと。そういう意味では、コブクロの小渕健太郎さんが大ファンである布袋寅泰さんについて、本人を隣りに語る回(2016年9月4日放送)も見応えがあったのでは、と思います。

ーー『関ジャム』に見られる「これまでの音楽番組になかった視点」は、藤城さんが持つその感覚から生まれていたわけですね。

藤城:自分が音楽に関して素人だからこそ、気になったり興味を持った部分は、同じく視聴者の方もわからないところなんじゃないかな、と思っただけなんですけどね。『ミュージックステーション』のスタッフに「編曲ってどういうことですか? 作詞作曲と何が違うんですか?」と質問して、その引っかかりから番組を作っていくというか。音楽業界の方からすると恥ずかしくて聞けないようなことかもしれませんが(笑)。

ーーそんな藤城さんが作るからこそ、視点はマニアックなのに、入り口や説明はポップになっているんだと思います。

藤城:コアな音楽ファンに納得してもらいながら、一般の視聴者の方にも楽しんでいただけるような番組を目指したいです。最近「『関ジャム』はマニアックだよね」と面白がっていただくことも多くなって、本当にありがたい限りなのですが、地上波の23時台の番組としては間口を広くしておきたいなぁと。“よく分からないマニアック”ではなく“みんなが興味の持てるマニアックな感じ”をどうお伝えするか……毎回毎回スタッフ一同悩んでます(笑)。

ーー実際にはどのようにしてキャスティングを行なっているのでしょうか。

藤城:例えば一つ「振り付け」というテーマがあったとして、それに合う方で実績のある方、話を聞いてみたい方を探していきます。だからこの番組のADってめちゃくちゃ大変だと思います(笑)。ほかにも、『ミュージックステーション』チームから「先日出たあのアーティスト関連の○○さんが面白かった」という情報をいただいたりと、アドバイスも受けながらやっています。先方としても『ミュージックステーション』チームがいるという信頼感は強いと思うので。

ーー番組を続けて、ファンがある程度ついてきたと思います。ここからさらにもう一歩踏み込もう、という段階にしていくつもりはありますか?

藤城:「視聴者が知らないものを紹介しても大丈夫なんだ」という自信は始める前よりしっかりと付いてきたので、積極的に未知のテーマに取り組んでいきたいとは思います。もちろん、そこで反応が悪ければまた企画を変えますし。レギュラー番組の宿命だと思います。

ーー「今後はこういう方面を掘り下げたい!」と思っていることは?

藤城:先日『音楽大学の世界』(2月5日放送)という企画をオンエアしたのですが、「指揮科には生徒が1学年1人しかいない」と聞くと、実際の授業はどうなってるのかな? と気になりますし、もっと掘り下げたいなと。それ以外にも、今出演しているゲストの方たちとの間にも「実はこれ、こんなにすごいんだよ」と教えてもらったり……取り上げるべきものはまだ沢山あると思うんですよ。そのなかで僕らが見落としているものを関ジャニ∞と共に探したいですし、アーティストの方にとっても『関ジャム』にしか掘り下げられないものを追求し続けたいです。

(取材・文=中村拓海)

■番組情報
『関ジャム 完全燃SHOW』
最新回:#86 2017年3月19日(日) 午後 11:15 ~ 深夜 0:10
ゲスト:古坂大魔王、MASAKing、高見眞介

(みどころ)
 今回はピコ太郎のプロデューサー・古坂大魔王が大ヒット曲『PPAP』誕生の裏側を告白! さらに、古坂と電子パーカッションの第一人者として名高いドラマー・MASAKing、大手電子楽器メーカーの商品開発担当者・高見眞介氏が、『PPAP』でもこだわったという電子音楽の世界を徹底解剖する。
 実は、古坂は『PPAP』がヒットする以前から、得意の電子楽器を使って音楽活動に従事。音楽プロデューサーのヒャダインや、いきものがかりの水野良樹も絶賛するほどの名プロデューサーなのだ。そんな彼がこだわりを突き通す上でも、また『PPAP』があれほど大ブレイクした要因という観点からも、電子楽器は欠かせない存在だったという。そこで、今回は古坂がMASAKingや高見氏とともに、『PPAP』に詰め込まれた各こだわりの詳細を、電子楽器を通してひも解いていくことに。『PPAP』がいかに計算された楽曲だったかを知った関ジャニ∞は、驚きを隠せず…!?
 また、今回は古坂とMASAKing、高見氏が電子楽器を使って、即興セッションを展開。電子楽器の面白さを凝縮してお届けする。

 ジャムセッションは関ジャニ∞×ピコ太郎で『PPAP』。なんと、今回はもともと8ビートの楽曲を、途中から16ビートに変化させた“疾走感あふれるバンドバージョン”にアレンジ! 錦戸亮のしびれるギターに注目だ。さらに、関ジャニ∞からは横山裕(パーカッション)、村上信五(キーボード)、丸山隆平(ベース)、大倉忠義(ドラム)も参加。ピコ太郎の歌を力強くバックアップする。

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