「幸せになろうなと言い続けたいし、幸せでありたい」ラックライフ PONが“人生賛歌”を歌う理由

ラックライフが人生賛歌を歌う理由

「自分のためだけに歌うことは、もうできない」

――メジャー以降のシングル三作はもちろん、『アイトユウ』『変わらない空』という、インディーズ期のシングルからの楽曲を入れようと思われたのは、どういう意図で?

PON:メジャーの音も好きになったら、その前の音も絶対に好きになるからちゃんと聴いて欲しい、という思いを込めました(笑)。俺らが、ブレずに“ラックライフの音”を何年経っても変わらずやり続けていることを、この機会に知ってもらおうかなと。

――アルバムの構成はどのように決めていったんですか?

PON:一発で伝わる、ある意味ものすごくクセの強いシングル5曲が入ることが決まっていたので、どうアルバム曲と共存させてバランスを取るかを考えて、曲作りと共に構成を練りました。中でも3曲目「view」、11曲目「モーメント」のビート感は、アルバムでしか出せないテイストになっていると思います。でも、結局は俺らが好きな音を奏でるということが一本の芯にあるから、意図したというよりは、メジャー以降で得てきた感覚や冒険心が、無意識に出てきたという方が正解かもしれません。個人的には曲以上に、歌詞作りがめちゃくちゃ苦労しました。

――何より、今まで以上に言葉の情報量が尋常じゃない。反復する言葉がない上に、どの曲もメッセージが溢れんばかりに詰まっていて。

PON:言いたいことが多すぎたせいでパンパン。中でも4曲目の『shutto』は、詰め込み過ぎたなぁと書き終えて反省しています(苦笑)。

――3分強の曲とは思えない程に、ぶ厚いですよね。

PON:しかも本来はもっと詰まってて、頭から終わりまで喋ってるような曲やったんです。これは、サビの頭に四字熟語を使っているんですよ。歌詞作りの最中に<大胆不敵に~♪>と歌ってみたらシックリきて、「よっしゃ、サビを四字熟語シリーズにしてやろう」と思い、言いたいことと噛み合う意味の四字熟語を探して作ったんですよ。でも、ピッタリ意味がハマる言葉が見つからないし、わざと難しい言葉を使っても、俺が歌ってピンと来ないから、意味のわかる言葉を使わないけないし(笑)。それに「大胆不敵」が、「だい、たん、ふ、てき」という2、2、1、2の言葉の切り方をしているから、音に乗せた時の言葉のキレも考えて、その文字数並びの単語を探さないけなくて。こんなんやから、曲作りはスムーズに進む一方、歌詞作りがすごく遅れてしまい……(苦笑)。

――言いたいことが多すぎるのも問題ですね。

PON:2年半という時間に溜めすぎました(笑)。一番苦労したのは、9曲目の「ラブリープリティーミュージック」。この曲は歌詞も音も相当遊んだアホみたいな曲なんですけど、どよく読むと相当皮肉を込めた歌になっていて、その皮肉をどこまで込めたらいいのやらと。

――一見するとわかりづらいですが、よく読むと、今のバンドシーンの一部に対する苛立ちが透けてきますよね。

PON:今は何かあると、考えなしにみんな踊らせようとしますからね! そういうのを見ると、「俺らも踊らせた方がええんかな?」と思うんですけど、結局「躍らせ方? わからへん」という感じで。そんなダンスとロックについての距離を歌ってて。ホンマはもっと牙を剥いた歌詞やったんですけど、「それちょっと悪く言い過ぎじゃない?」と相談しながら、トゲは少しだけ見えればいいぐらいに少しマイルドにしました。ただ意識して読むと、相当尖ってますよね。サビの歌詞も四つ打ちも悪ノリでしかない(笑)。

――「モーメント」、「赤い糸」から、そしてラストの「名前を呼ぶよ」に至るまでの言葉の流れは、バンドを始めてから今に至るまでのPONさんの想いが連なっていて、さながらこれまでの歴史をこちらも追体験するようです。中でも「赤い糸」はメジャー以前の気持ちを歌った「名前を呼ぶよ」と対をなすような、ラックライフの覚悟を感じさせる言葉がこれでもかと綴られてます。

PON:『赤い糸』はある出来事をきっかけに生まれた曲で。僕、7月から9月の3カ月間、5年前に1度バンドで行ったことがあって以来1度も行っていない北海道でラジオ(『FM ROCK KIDS』(FM北海道))のパーソナリティーをやらせてもらって。本格的なパーソナリティーは始めやし、何より俺のことを誰も知らないだろうこの土地で、誰が聴くんや?と、不安な気持ちが大きかったのですが、一生懸命やってるうちにお便りも届くようになり、コーナー中にファンの人と電話で喋ったりするようになって。電波に乗って自分の知らない土地で俺の声を受け取る人がおって、しかも繋がれることにすごく感動したんですよ。

――ライブ会場ではない場所で、人と繋がることの大切さに気付いたんですね。

PON:そうなんですよ。もう一つ、ラジオのレギュラーが終わるタイミングで、ラジオ局の開局特番でレポーターもやらせていただき、そのレポートの最終地点の函館で弾き語りライブをやることになって。「函館なんて一度も行ったことがないから、誰が来んねん!」と思っていたら、想像以上のお客さんが集まって。しかも「いつもラジオ聴いてます!」とみんな言ってくれた。僕は自分のために曲を書いていて、自分が消えへんように「ここにおるでぇ!」と叫んでいた。そんな自分のための曲や言葉が電波に乗って、顔を合わせたことがない人の元に届き、その人たちの元気に変わっていると知ったら、もう自分のためだけに歌うことはできないなと。その体験から、曲を聴く“あなた”のためだけに歌い、その関係がずっとずっと続いていくようにという想いを込めてこの「赤い糸」を綴りました……て、自分でよう言うわぁと思いますね(笑)。

――(笑)。そしてラストにこれまでの出会いに感謝を告げる『名前を呼ぶよ』が来たことで、このアルバムが「Life is beautiful」というタイトル以外他ない作品に仕上がりましたね。

PON:みんなそれぞれの生き方があって、それぞれのデコボコの人生を歩んできた。それを全て肯定してほしいんですよね。でも、「人生」ってすごく重い言葉ですよね。

――「人」の「生」。確かにズシンと響く言葉ですよね。

PON:それだけ代わりがない大切な言葉ということですよ。生きるためには重みがないと。その重みを全部肯定したいし、そんな歌をこれからも作っていきたい。

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