パスピエが表現した、バンドとしての“最新バージョン” 「5年間の遺伝子が形になってきた」

パスピエが表現したバンドの最新バージョン

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言葉のおもしろさと、それが音に乗ったときの力を重視している(大胡田なつき)

ーー個性の強い楽曲が揃っていますが、みなさんのなかで特にインパクトのある楽曲というと?

三澤:個人的には5曲目の「ああ、無情」ですね。初めてアコギを使ったんですけど、そのままの音だと曲のイメージから離れてしまうから、コーラス(エフェクター)を使ってニューウェイブ感を出して。パスピエらしいアコギの使い方が出来たと思うし、新しいサウンドになっていると思います。あとは3曲目の「DISTANCE」。ヘビィメタルっぽいタッピングで演奏してるんですけど、飛び道具的な感じではなく、それを繰り返しループするフレーズとして使っていて。

露崎:「DISTANCE」は一聴して「こういうことはやってなかったな」という印象を持ってもらえる気がしますね。個人的には「おいしい関係」も印象に残っています。すごくポップなんだけど、楽器的にはいろいろと手の込んだことをやっていて。実は振り切ったことが出来た曲じゃないかなと。

やお:どの曲もそうなんですけど、ドラムに関してはシンプルにやれたかなと思っています。基本的には成田が持ってきたフレーズをなるべく再現してるんですが、ドラマーとしての自分の場所が少しずつ理解できるようになってきて。

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やおたくや、三澤勝洸

ーーちなみにパスピエの音楽性の柱のひとつである80sニューウェイブも、みなさんのルーツに入ってるんですか?

三澤:YMO、矢野顕子さんなどは好きですね。あとはザ・スミスとか。いま言った「ああ、無情」のギターは、そういう影響もあるかもしれないです。もともとのルーツはヘビィメタルなんですけどね。

やお:矢野さんの音楽は好きですけど、ニューウェイブ自体はあまり通ってなくて。最初はJ-POP、J-ROCKなんですよ。BUMP OF CHICKENとか、サザンオールスターズとか。その後、フュージョンやジャズも聴きましたけど、それは勉強のためというところが大きいですね。

露崎:僕もどちらかと言うと(ニューウェイブ系の音楽を聴いたのは)パスピエに入ってからかもしれないですね。YMOから始まって、高橋幸宏さんがやっているMETAFIVE、pupaなども聴いて。僕自身の入り口はL’Arc〜en〜Cielなんです。あと、(L’Arc〜en〜Cielのプロデューサー)岡野ハジメさんがやっていたPINKの影響もありますね。

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露崎義邦

ーーなるほど。大胡田さんはどの曲が印象に残ってますか?

大胡田:私は「夜の子供」と「スーパーカー」ですね。「夜の子供」は漂うような感じというか、ちょっとボンヤリした世界観の曲で。シングルの4曲はカチッと作っているから、「夜の子供」みたいな曲があるか否かで、アルバム全体の雰囲気も違ったんじゃないかなって思います。「スーパーカー」は私がパスピエに誘われたときから存在していた曲なんですよ。

やお:そうだよね。

大胡田:デモを聴かせてもらったときから「いいな」って思ってたから、今回レコーディング出来たのは嬉しかったですね。

成田:作ったのはだいぶ前ですね。作ったはいいけど、レコーディングしないで闇に葬られた曲もけっこうあるんですよ(笑)。

大胡田:ときどき「そういえば、あの曲はどうしたんだっけ?」みたいな話になります(笑)。

ーー「スーパーカー」はエレクトロ的なテイストも感じられる楽曲ですが、これを収録しようと思ったのはどうしてですか?

成田:これは『幕の内ISM』くらいから意識しているんですけど、EDMのクリエイターとか、トラックメイカーが作るものが5〜6年前から目立っているなかで、そういう音とバンドの融合というのも自分のなかでひとつのテーマになっていて。『&DNA』はそのテーマを具現化できるポイントだと思ったし、それには「スーパーカー」がいちばんいいだろうと。バンドを組む前にひとりで作った曲だから、もともと打ち込みの要素も入っていたので。

ーーそれもパスピエのDNAの一部なんでしょうね。歌詞についても聞きたいのですが、人と人の距離、関係性を描いた「DISTANCE」「おいしい関係」、実像と虚像を対比させた「やまない声」「マイ・フィクション」など、シングル3作のテーマだった“対”はアルバムにもそのまま反映されているんでしょうか?

大胡田:そうですね。“対”というテーマはずっと意識していたので。対・人、対・自分、世界と自分だったり。

成田:テーマについてはいろいろと話しましたけど、歌詞を見て「あ、なるほど」と思うことも多くて。僕と大胡田の“対”に対する考え方も違うだろうし、大胡田が書きたいこともありますからね。あと、これは“対”というテーマにした理由でもあるんですが、パスピエにとっての“対・人”を考えたときに、外側にいる人たちに自分たちからつながりに行くというよりも、外側にいる人たちにこちらの内側に入ってきてもらうという感覚がずっとあって。それを音楽のなかで言葉にしていくことにも意味があると思ったんですよね。

ーー確かにパスピエは、積極的にリスナーとコミュニケーションを取るというより、音楽、ビジュアルなどを通して、興味深い入り口を用意するほうが合っている気がします。

成田:そうですよね。いちばんピュアなのは、たとえばCDショップでアルバムを試聴して「いい音楽を見つけた」と手に取ってもらったりすることだと思うんですけど、そういう出会いに紐付けるためにも、言葉による発信も続けていきたいなと。

ーーそのスタンスは、歌詞にも影響しているんですか? より生々しくて、フィジカルな歌詞のほうが伝わりやすいとか。

成田:それも話したことあるよね? フィクションかどうか、とか。

大胡田:うん。でも、よくわかんない歌詞の曲が売れていたりもするし。

やお:ハハハハハ。

成田:いまのは大胡田の発言です(笑)。

大胡田:(笑)。いや、歌詞がよく聞き取れないけど、ヒットしてる曲もあるじゃないですか。だから、わかりやすければいいというのも違うと思うんですよね。パスピエの場合は、言葉のおもしろさと、それが音に乗ったときの力を重視しているのかな。

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大胡田なつき

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