ガラケー版「着うた(R)」15年間のランキングから見えるもの 柴那典が時代背景とともに分析

 続いて同氏は、アーティストランキングについて語る。 

「アーティストランキングのほうは、都心部だけでなく郊外も合わせ、コミュニケイティブな10代が聴いていたアーティストが中心に並んでいる。『ロードサイドの平均値』と呼べるものになっていると思います。傾向としては、単曲購入が主流になり、一発屋が生まれやすかった時代でも、自身のブランドをしっかりと構築し、現在も地に足のついた活動をしてきたことにより、ファンを着実に増加させ、長らく愛されて来たアーティストたちがラインナップされている印象です」

 最後に、柴氏は今回のランキングが今後担うであろう役割を、こう推察した。

「着うた(R)というのは、当時は一般的ではなかった『携帯で音楽を聴く』という概念を浸透させるなど、大きな変革をもたらした一方で、すべてではないですが当時は、機種変更とともに曲を失ってしまう、リスナーにとってはアーカイブ性の低いサービスでした。今そのときに友達と共有したい音楽を条件反射的に買うサービスだったからこそ、瞬間的なヒットが生まれやすかったといえるのかもしれません。そういう意味ではこれらがしっかりとランキングとしてアーカイブになったことには意味があると思っています。2007年当時に10代だった人たちが30代になったとき、現在の“90年代リバイバル”のような現象が起こることも考えられますし、そのときにこのランキングに沿った形で楽曲が参照されると、もっと資料的価値が生まれそうですね」

 ガラケー文化が順位を通してはっきりと見えるなど、意義のあるランキングとなった『ケータイ 着うた(R)・着うたフル(R)ランキング』。ラインナップを改めて振り返り、自分の思い出の曲が何位に入っているのか、探してみるのもいいのかもしれない。なお、スマートフォン、パソコンでのシングル、アルバム、ハイレゾ楽曲の音楽ダウンロードサービス「レコチョク」は今後も引き続き提供を行なう予定だ。

(文=中村拓海)

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