LiSAの“冒険”はまだまだ続く 初のアリーナ単独公演に見た大きな可能性

LiSA、横アリ公演に見た大きな可能性

 LiSAというシンガーは、このままいくと数年後には日本を代表するアーティストのひとりになっているかもしれない。11月26日と27日に横浜アリーナで開催した『LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~』は、そんな予感さえする圧巻のステージだった。

 同公演は26日を「the Sun」、27日を「the Moon」と銘打ち、それぞれ違ったコンセプトで楽曲・演出を構成。彼女にとって初となるアリーナ単独公演を、様々な角度から彩っていたが、本稿では2日目「the Moon」公演について取り上げたい。

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 演出の軸になっているのは、穏やかで慎重な性格の姉・ムーンとおてんばで元気な妹・サン(ともにCV.小林ゆう)が姉妹ゲンカをし、互いが家を出た直後、突如異世界へ転送されるところから始まる冒険を描いたアニメーション。1日ずつ、それぞれのキャラクターに合わせたストーリーが展開し、「the Moon」は<認めていた 臆病な過去>という主人公のムーンに通ずるフレーズから始まる「crossing field」でライブがスタート。続けて躍動感のある歌謡ロック「ROCK-mode」の1サビで溜め込んだ熱を一気に爆発させ、機動力のあるスクリーモ「Bad Sweet Trap」では花道で高らかに歌う。この短時間で完全に会場の空気を手中に収め、コントロールする彼女の堂々とした立ち居振る舞いは、(日本武道館や幕張メッセワンマンライブを経験しているとはいえ)とてもアリーナ初単独公演とは思えない。

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 MCでは「1日目は少し不安だったけど、魔物を倒してきたので、この横浜アリーナは私たちのものです。だから、思いっきり遊ぶしかないよね!」と1日目の公演を終えてプレッシャーから解放された様子を見せると「一人が好きだからと言って、実は寂しいという方ばかりということでよろしいでしょうか? 君の寂しさもわがままも大変さも、全部ここに置いていっていいよ! 君の曲をたくさん歌うからね!」と宣言し「アコガレ望遠鏡」へ。ピンクのラメが入ったギターを手にしてカッティング、チョーキングしたあと、リリックビデオ風のアニメーションとともに「ヒトリワラッテ」とポップ・ロック曲を続けて演奏したかと思えば、再びハンドマイクに持ち替えた「DOCTOR」では、妖艶な動きを見せながら歌った。

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 「Psychedelic Drive」で花道にお立ち台が用意されると、LiSAは落ちサビでジュリ扇を使って観客を煽り、早着替えで白いドレス姿を披露。そのまま2人のダンサーを引き連れ、バラード「シロイトイキ」を切なく歌い上げた。そして、会場が穏やかな雰囲気になったかと思えば、「蜜」「traumerei」ではその純白のドレスを激しくなびかせる。普通はここまで頻繁に緩急をつけると散漫なものになってしまいがちだが、彼女の歌と、バンドメンバー「にゅーメンズ」こと高慶"CO-K"卓史(Gt.)、生本直毅(Gt.)、柳野裕孝(Ba.)、白井アキト(Key.)、石井悠也(Dr.)による演奏と、バックダンサー(yUkAとAkANE)が、その演出に耐えうる強度の高い楽曲をパフォーマンスしているからこそ、一貫した物語の中で起こる展開の変化を楽しむことができるのだろう。

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 そんなことを考えながら、仲直りした姉妹が絆を確認し合う2回目のアニメーションが終わると、本日2度目の衣装替えをしたLiSAがカメラを持ち「この瞬間を全部残すよ!」と叫び、切ないながらもダンサブルなポップソング「No More Time Machine」と「WiLD CANDY」へ。ここでステージ上に自転車が登場し、花道を疾走するのかと思いきや、なんと宙へ浮かび、そのまま客席近くのステージへ降り立った。その後、ウォーキングベースにあわせて「アシアトコンパス」で軽快なステップを披露。MCでは「今日は久しぶりの曲も多いけど、その中でもっと楽しんでもらえる曲があります!」と観客を「サン」と「ムーン」の2チームに分け、ハチ(米津玄師)の手がけた「エスケープゲーム」ではさながら応援合戦のような盛り上がりが巻き起こる。

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