バックドロップシンデレラが初ベスト作で示した「DIY精神」、そしてインディーズバンドのあるべき姿

BDC、初ベストで示した「DIY精神」

完全DIY&完全セルフプロデュース

 本ベストは2011年リリース『シンデレラはウンザウンザを踊る』以降の楽曲から選出されている。このアルバムは「ウンザウンザ」を提唱するきっかけになった作品であり、自ら立ち上げたレーベル<NaturalAfroRecord>からの初の自主制作アルバムだ。

「最初はインディーズレーベルに所属してリリースしていたんですけど。決して大きくはないところだったので、正直歯痒さを感じることもあったり……。逆に、これなら自分たちでもできるな、自分たちならもっといろいろ出来るんじゃないかと」(ペリー)

 「とりあえず1枚だけ自分たちだけでやってみよう、それでまたいい話が来るかもしれない」そんな軽い気持ちではじめたレーベルだったが、手応えを感じることができた。やればやった分だけの結果もついてきた。それがいつしかバンド活動のモチベーションになっていく。

「2008年から2011年の間は音源を作ってない時期もあったし。ライブはやってましたけど、状況は変わらずで……。それが渉さんがバンドを引っ張っていくようになって、変わりましたね。それまではみんなが勝手に意見を言って、でも答えは出ず……といったことも多かったので」(キャナコ)

「活動するにあたって、曲づくりだけではない音楽以外の役割も必要ですよね。ライブのブッキングにはじまり、物販や機材車の管理だったり。それは得意なヤツがやっていけばいいと思うんです。他のメンバーはそこを信頼すればいい。2011年くらいに、メンバーが僕を信頼してくれるようになった。『任せます』と思ってくれたことが大きいです」(ペリー)

 もちろん、ペリーがそうした運営的な役割に向いていたところもあっただろう。バックドロップシンデレラにはマネージャーもいない。スケジュール管理も売上も活動におけるすべての管理をバンド自らが行っている。だからこそ、活動しながらノウハウを学んできたのだ。

「CDの売上枚数が倍になれば、儲けも倍になるかといえばそうではない。売上を倍にするためにはそれなりのプロモーション、先行投資が必要になってくるわけです。DIYでやっているとそういうことを身をもって知ることができる。僕自身、ライブハウスで働いていることもあって、いろんなバンドに接してますけど、みんな知らないことが多すぎる。知ろうともしていない。どこそこのフェスに出たいと口にしているバンドも多いですけど、“どうやったらそのフェスに出演できるか?”を知らないんですよ。お客さんが増えれば、人気が出れば、勝手に声が掛かってくると思ってる。そんなわけないじゃないですか。そういうことを知らないインディーズバンドが多いですね」(ペリー)

 インターネットの普及により自己表現の場が広がったと言われるようになってからだいぶ経つ。アーティストが表現する形は増え、その手段も容易になった反面でそれを世に拡めること自体は難しくなっているようにも思う。ますますセルプロデュースの方法とセンスが問われる時代になっている。実際、バックドロップシンデレラのように、個人レーベルで活動するバンドの活躍も目立つようになってきた。

「レーベル運営とバンド活動はまったく同じ感覚でやってるんです。レーベルは『これが僕らのレーベルです』と名乗った瞬間に成立するので、誰でも作れると思うんですよ。でも、それをちゃんと運営していこうと考えたら、いろんなハードルを超えなければならない。だから、業界の仕組みや、メジャーレコード会社や大手インディーズレーベルがやっていることはちゃんと勉強していかないといけないと思います。ただ、こういうことはメジャーじゃないからできないんだ、と思わないほうがいいと思う。自分たちの力だけでも、それに見合うものになっていれば何でもできるんですよ。個人レーベルだからこの程度しかできない、なんていう線引きはいらない。アイデアと実行力次第でどこまでも行ける」(ペリー)

 突出した音楽性はもちろん、突拍子もない発想力とそれをすぐに実行するフットワークの軽さも彼らの武器だ。先述の柏レイソル応援団とのコラボレーションにしても、バックドロップシンデレラだからこそ、ここまでのことができたように思う。発想とアイデアで周りを巻き添いにしていくパワーがとてつもないのだ。

「ちょうど10周年の今が、これまででいちばん規模が大きく活動できている。ドカーンと行ってるわけではないけど、ライブ会場もお客さんも常に右肩あがりで増えているのはうれしいですね。若いバンドじゃないのに(笑)」(ペリー)

 「今の時代だからできること」と「自分たちらしさ」を常に考えてきたのがバックドロップシンデレラだ。音楽を表現しながら賢く活動していく。何よりもやっている本人たちが楽しんでいる。それはDIY精神を貫く、“インディーズバンド”の本来あるべき姿なのだろう。

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

■リリース情報
『BESTです』
発売中
価格:¥2,500 (税抜)

<収録曲>
01.池袋でウンザウンザを踊る (新録)
02.さらば青春のパンク (新録)
03.台湾フォーチュン
04.激情とウンザウンザを踊る
05.歌わなきゃジャクソン(新録)
06.COOLです
07.ブラスト和尚 (新曲)
08.池袋のマニア化を防がNIGHT
09.アラスカアバンチュール
10.うるわしのお嬢さん(新録)
11.将軍はウンザウンザを踊る (新録)
12バイトやめよ
13.カンフーライフ(新録)
14.市長復活~さいたま市ヨリ与野市ヲ解放セヨ~
15.君がやってくる(新曲)
16.6人のおっさん
17.夕暮れにウンザウンザを踊る (新録)
18.ダメ男とジュリエット(新録)
19.亡霊とウンザウンザを踊る
20.月あかりウンザウンザを踊る
21.さらば青春のパンク〜突き進め柏〜(ボーナストラック)(新曲)

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