星野源、Shiggy Jr.、ACC、GOODWARP…「解像度の高い歌詞」を持つJ-POPたち

sumika「Lovers」 ――<ねぇ浮気して ねぇ余所見して>

 今年の6月にリリースされた4thミニアルバム『アンサーパレード』が評判を呼び、ユニクロのキャンペーンWEBに起用されるなど注目を集めている4人組sumika。彼らも、やはり歌詞のキャッチ力を感じさせるバンドだと思う。

 それをありありと感じさせるのが『アンサーパレード』のリード曲「Lovers」。こんなにアップテンポで高揚感たっぷりのポップソングなのに、サビの歌い出しが<ねぇ浮気して ねぇ余所見して>。相当にフックの強い言葉である。でも、そこに至るまでのストーリーもちゃんと構築されていて、歌い出しの<涙の理由を整理したくて B5の紙に書き出してみたんだ>という始まりから<口約束の結婚をした17歳の秋には 脇目振らせる事が怖かったんだ でも今は違うらしい たくさん比べて欲しい>と続けていく。そして曲の最後には<最後の最期に あなた朽ち果てるまで 愛し抜いていきたいと思うのです。>と締める。だからこそ「浮気」という言葉が真っ直ぐなラブソングの軸になっている。<B5の上の僕は情けないんだ>というフレーズもいい。

GOODWARP「bravo!bravo!bravo!」 ――<計算上 君の遺伝子は 僕を選ぶだろう>

 そして最後は、今年3月に初の全国流通盤『FOCUS』をリリースした4人組、GOODWARP。ちょうど先日の『MINAMI WHEEL 2016』のステージでsumika のVo.片岡 健太が突然登場するなど、親交が伺える彼らも、そういう言葉の解像度の高さを感じるニューカマーだ。「ダンサブルポップバンド」をキャッチフレーズに活動するバンドのルーツは、ディスコ・ミュージックとJ-POP。横ノリのグルーヴ、スタイリッシュなギターカッティングと甘い歌声が魅力になっている。スーツでキメたステージ衣装も含めて、心地よくも洗練された音楽性を持つバンドだ。

 こういうタイプの音楽性だと、歌をある種の「上モノ」として捉えて、語感や言葉の響き重視で歌詞を書くようなバンドも多いのだけれど、GOODWARPの場合は吉崎拓也(Vo/G)の書く歌詞が一つの武器になっている感じがする。それを感じたのが新曲の「bravo!bravo!bravo!」。ホーンセクションが響くイントロも含めて90sの渋谷系的なセンスを感じる一曲なのだが、サビの最後の<計算上 君の遺伝子は 僕を選ぶだろう>というフレーズがパンチラインになっている。

GOODWARP / bravo!bravo!bravo! -YouTube edit-

 「計算上」とか「遺伝子」みたいな言葉を重ねていくことで、歌詞の主人公はきっと理系なのかな、みたいな想像が広がる。歌い出しの<10代ど真ん中に重ねた妄想><住宅展示場に重ねる妄想>というフレーズもいい。恋に落ちた男の子の、少し滑稽で先走りがちな高揚感が浮かび上がってくる。

 当サイトに掲載された渡辺俊美とメンバーの対談(http://realsound.jp/2016/03/post-6726.html)では、吉崎拓也は自らの書く歌詞について「例えば『愛は素晴らしい』だとか言ってみようとしても、どうもしっくりこなくて。自分にしかわからないような葛藤とか、夕日が差し掛かった橋をみてグッと来るとか……そういう方が聴く人に届くんじゃないかなと。考えた結果、そっちを信じるようになりました」と語っている。まさにそういう考え方が「歌詞の解像度」のポイントだと思う。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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