『Live What are you looking for』に見る、ハナレグミの“芯”とは? 兵庫慎司によるアルバム考察

ハナレグミ、ライブアルバムを考察

 ハナレグミが9月13日にライブ・アルバム『Live What are you looking for』を、配信限定でリリースした。2015年8月にリリースした今のところの最新のオリジナルアルバム『What are you looking for』のリリースツアーの東京公演、2016年3月5日、6日東京・NHKホール2デイズの2日目を、頭から最後までまるごと音源にした全21曲、なので聴き通すと軽く2時間を超えるボリューム。

このツアーのバンドメンバーは、ベース真船勝博、ドラム菅沼雄太、キーボードYOSSY、トランペットicchie、サックス&フルート武嶋聡、そしてボーカルとギターがハナレグミ永積 崇。ギタリストやパーカッションのいない、ここ数年のハナレグミの中ではコンパクトなバンド編成であること、関西系のミュージシャンが集まった人選であること(真船勝博・菅沼雄太・武嶋聡はEGO WRAPPIN’のサポート等、YOSSYとicchieはふたりとも大阪のダブ・バンド……って雑な言い方ですがかんべんしてください、DETERMINATIONSの出身でふたりでYOSSY LITTLE NOISE WEAVERというユニットをやっているほか中納良恵のサポートなども務める)が、今回のツアーの特徴といえば特徴。

 あ、icchieは数年前からつい最近までCaravanのバンドに加わったのがきっかけになったのか、このハナレグミのあとはMr.Childrenのツアーに参加するなど、特にひっぱりだこ度が上がっているようにお見受けします。

というメンバーによる、シンプルで、生音中心だからあったかいんだけど、ウェットでもないし熱くもない、人肌くらいでどこかピッと乾いている、とても絶妙な温度で演奏が続いていく。永積 崇のプロデュース能力の確かさもあるんだろうが、それぞれのミュージシャンが今ここで何を求められているかがわかっている、実に抑制の効いたプレイ。であるがゆえに、たとえば11曲目の「11DANDY」の途中でガーッとテンションが上がって爆発して瞬間など、よりいっそう多幸感に満ちた空気になる。

161021_hanare_2.jpeg

 

また――これはこのツアーに限ったことではなく、ハナレグミのライブはいつもそうなのだが、「わかっている」感じのいいお客さんが多い、というかほぼそういう人で埋まっている、というのも大きい。何がわかっているのかというと、ライブという場でハナレグミというアーティストとどのように向き合えばよいのか、どう受け入れてどうリアクションすればこっちがもっとも楽しめる結果になるのか、ということをわかっている、ということだ。永積 崇に気を遣ってそうしている感じなのではなくて、客である自分がこの場でいちばん得して帰る方法、ステージの上のミュージシャンにいいパフォーマンスをさせる方法を熟知している、ということです。

 で、3曲目の「レター」が終わったところで、永積 崇が思わず「やべえぜ、気持ちいいぜ!」と叫ぶ声がそのまま入っているところを見ると、そのオーディエンスの力がまんまとパフォーマンスに跳ね返っているライブでもある、ということだ。お客さんの歓声が何度も入っているのも、その空気をそのまま音源に残したかったからなのだと思う。

161021_hanare_3.jpeg

 

161021_hanare_7.jpeg

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる