大原櫻子はアーティストとして一段上のステップへ 歌とダンスで見せた武道館ツアーファイナル

大原櫻子、武道館ツアーファイナルライブレポ

 大原櫻子が、10月5日に日本武道館にて『大原櫻子 CONCERT TOUR 2016 ~CARVIVAL~』のツアーファイナルを迎えた。

 大原にとって3度目となる今回の全国ツアーは、6月29日にリリースした2ndアルバム『V(ビバ)』の発売を記念としたもので、キャリア史上最大規模。ツアーの集大成となる武道館のステージで彼女は、抜群の歌唱力と卓越したギターやピアノテク、そして今回のツアーより新たに取り入れたダンスパフォーマンスを披露し、アーティストとして一段上のステップに進んだことを証明して見せた。

 武道館のステージは2階建ての構造になっており、中央にはアルバムタイトル「V」の大きなモニュメントが鎮座していた。会場が暗転すると客席にはピンク色のサイリウムが一気に点色。アップテンポの「SE ! CARVIVAL」が会場に鳴り響く。「V」のモニュメントが180°回転すると、高らかにVサインを決めた大原が登場。「カービバルスタート!」と宣誓しライブは「ステップ」で幕を開けた。序盤は「真夏の太陽」「トレモロレイン」などアルバム『V』よりポップチューンを中心に披露していく。大原の力強いアカペラからスタートした「真夏の太陽」で、会場はファンが曲に合わせて振り回すタオルで埋め尽くされていた。大原はそんなファン一人ひとりに真っ直ぐな視線と指先でレスポンスを送っていく。元気良く飛び跳ねるたびにピンクのスカートが揺れるのも愛らしい。MCでは「一緒に踊って歌ってカーニバルのような楽しいライブにしていきたいと思います!」とツアータイトルが「カーニバル」と「V(ビバ)」を掛け合わせた造語であることを説明。自身の代表曲「瞳」では威風堂々とアコースティックギターをかき鳴らし、大サビでは会場のファンにマイクを預け大合唱を巻き起こした。会場を見渡すと大原と同世代の女子の姿が目立つ。この曲の歌詞は大原による作詞であるが、<涙だって笑顔だって がむしゃらになった証だよ>と歌われる女子の合唱は彼女の曲が“みんなの歌”として浸透していることを実感させた。

 衣装チェンジのためにステージをはけると、会場には雨粒が落ちる音と<Tip Tip Tap>というハミングが徐々に大きくなっていく。レインコートと赤いパンツに着替えた大原が再びステージに登場し「トレモロレイン」がスタート。水玉傘を差した彼女は、ダンサー2人を引き連れスタイリッシュなダンスを披露していく。ダンスコーナー「DANCE ! CARVIVAL」では激しいビートに乗せたダンスパートに突入し、そのまま四つ打ちのダンスチューン「Dear My Dream」へ。ステージには力強いステップとキレのあるダンス、そして時折妖艶な表情を見せる大原の姿があった。昨年、大原が出演していた演劇『地球ゴージャス』でもダンスを披露する場面があり、その際の経験は大きいはずだ。そして、驚くことに踊りながらでも大原の歌唱力は全くと言っていいほど落ちることはない。このことについては、後のMCで「今年は初舞台をやらせて頂いて、本当にこのツアーに入って喉の強さをすごく実感しました。舞台のおかげで自分自身も強くなったなと思います」と芝居の経験が歌唱力にも繋がっていることを語っていた。

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 ダンスパートで熱を帯びた会場をクールダウンさせるように、バラード、ミディアムチューンが多く披露された中盤パートは、大原のピアノ弾き語りによる「こころ」で幕を開けた。続く「君になりたい」では、ステージ上の幾つもの電球が星空のように光り輝く演出が楽曲に色を添えていく。“2人だけのサイン”がテーマの「サイン」では、武道館の外まで突き抜けるほど力強く、抑揚たっぷりの大原のアカペラから始まり、会場を一変させた。エレキギターをかき鳴らし歌う彼女の気迫は圧巻そのものだ。『V』の中でも特に体から振り絞るように歌われるこの曲は、大原の歌唱力が存分に活かされた楽曲であるが、この日大サビでフェイクをかけて歌っているのを聴き、彼女の歌手としての才能を感じずにはいられなかった。

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