THE BACK HORN 菅波栄純が語る“隠されてきた原点”「自分達の曲はおそらく全部バラードです」

THE BACK HORNの“隠されてきた原点”

161019_tbh_2.jpeg

 

「メンバーにも好評で、THE BACK HORNらしい感じがするって」

ーーメンバーはこの曲にはどういう反応だったんですか?

菅波:この曲を持ってく前にも、バラードって縛りでいろいろ曲は持って行ってて。この曲を最後の最後に持って行ったんでちょっと反応が不安だったんです。デモをメールでみんなに送ってもなんの反応も帰ってこなくて、「ボツになったかな」って思ったんですけど(笑)。次の日スタジオ行ったらマツ(松田晋二)が珍しく駆け寄ってきて「あの曲よかったよ」って言ってきて。よかったっていう言葉自体20年ぐらい聞いてなかったんですけど(笑)。いやそんなことないか(笑)。滅多にそんなこと言わないんですけど、「あの曲はほんとよかったよ」って言ってきて。みんなに聞いても好評で、THE BACK HORNらしい感じがするっていう意見が多かったですね。

ーーそのTHE BACK HORNらしいっていうのは、さっき言ったような「隠されてきた原点」みたいなものを想起させるから、ってことなんですかね?

菅波:いや多分違うと思います。おそらく自分が他に持ってった楽曲よりTHE BACK HORNらしいってことじゃないかな、その辺はわかんないけど。でも例えば「未来」ってバラードの曲があったり(2003年『イキルサイノウ』収録)、ほんとにたまーにバラードって書いてきたから、そういうのを想起したのかどうなのか。

ーーでも私の個人的な感覚ですけど、THE BACK HORNの曲って全部バラードって言ってもいいような気がしますけどね。

菅波:いや、ほんとそうなんですよ! ほんとそれですよ。

ーーどんなに激しい曲でもバラードじゃないかなあと。

菅波:それですよ。いやほんとそれですよ。多分それで全部話が繋がる。多分そうなんですよもともと。作家としても個人的にも。で自分たちのバンドとして憧れた方向性もあるし、自分たちのオリジナリティを確立する上で、表面的にはああいうテイストになっているだけで、おそらくバラードなんですよね全部。『運命開花』を作ってリリースする時に、自分はSNSで「これはTHE BACK HORNなりのラヴ・レターです」って書いたんですよ。今話してて思い出したんですけど、それと全部通ずるかなと。

ーーすべてはバラードであり、全てはラブ・ソングであると。

菅波:そう、ある種。でもなんかラブ・ソングあんまり好きじゃないって人もいるらしくて(笑)。

ーーすごく狭く捉えちゃうと。

菅波:そう、狭い意味で捉えちゃうと。広い意味で捉えてもらえたら多分わかってもらえる気がする。THE BACK HORNらしい楽曲だってわかる、と思うな。

ーーアレンジもそうだし、歌詞がすごくストレートでしょう。こんなに裏表がない、まっすぐな曲をポンと今の段階で出してくるっていうのは、なかなか勇気がいるっていうか。

菅波:それはこの曲できた時に、ほんとに久しぶりに味わった感じで。『運命開花』もそうだし、ここ何作か、歌詞を途中まで書いて、物語としての展開が見つからなかったらそこでまた止まって書き足して、みたいなやり方でやってたんですね。今回久しぶりに弾き語りで作ったし、ピアノで作ったのも初めてに近い感じだったんですけど、それもあって、結構新鮮だったのかもしれないですね。弾き語りでこうやって弾いてて、鼻歌でうたって、鼻歌で出てきたのが嘘英語のメロディで、そこに近い韻の日本語つけて書いてったという。ほんと久しぶりに、なんかオリジナリティとかを意識しないで書いたなと思って。

161019_tbh_int4.jpeg

 

ーー前の「悪人」は、言葉を紡いで構築してストーリーを作って、っていう作業があったと思うんですけど、今回のは一つの感情のままにスラスラッとーー実際はどうだったか知りませんがーー出てきたんじゃないかなって気がします。

菅波:いや、ほんとそうでした。ほんとにすっと短い時間で出てきた。やっぱりTHE BACK HORNをやり始めてから無意識に何かを背負ってたというか。過剰なまでに“バンドとしての個性”を意識しすぎてて。常にそういうものをめちゃめちゃ意識して曲書いてきたんだな、って久しぶりに思いましたね。そんなつもりなかったのに。

ーーだけど、これだけコンスタントに、長いブランクもなく大量に曲を書き続けてきたわけでしょう。そうするといろんな意味で、自分たちのやってきた過去を意識せざるを得ないですよね。まったくそういうものを意識しないで書けって言ってもなかなか……。

菅波:そう、難しくて。だけどそういう中でサバイブしてくためのスタミナみたいな、楽曲を作るためのスタミナみたいなもの、筋肉みたいなものがついたから今までやってこれたとは思うんですけどね。今作はまったくその筋肉を使わないで出来たっていうか。ほんとに久しぶりに、THE BACK HORN前夜の頃の、曲ができる喜びだけで出来たっていうか。

ーーああ、いい話じゃないすか。

菅波:そうなんですよ(笑)。なんか久しぶりだなあーーこの感じっていう気がして。ほんと俺、ピアノは全然弾けないから、そういうのもあったんじゃないかと思うんです。

ーーああ、たどたどしい感じでね。

菅波:弾き慣れたギターじゃなくて、たどたどしいピアノで次の音探しながら、こうやって弾いてたっていうのがあったのかもしれない。

ーーアマチュアの頃は曲書くことが義務でもないし仕事でもないし、誰に頼まれたわけでもないけど、がんがん曲は出来ていく。そういう感覚が戻ってきた感じ。

菅波:そうそうそうそう(笑)、うん、その感覚で書いてたな〜って感じですね。この曲書いてる時に。あー久しぶりだなあって思って。

ーーいい話だなあ(笑)。

菅波:なんかそうやって見ると、それまで書いて持って行ったバラードの曲が“意識してる範囲内”だったんだなって思って。

ーー作為がちょっとあるような。

菅波:それはそれで筋肉使って書いてるんで、パンチがあったり強かったりするんですけど。今回はなんか「With You」を出したいなって思ったんですよね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる