映画『君の名は。』ヒロイン役で注目 上白石萌音は女優兼シンガーの新たな成功例となるか?

 ティーンエイジャーらしい、素朴であどけない印象や瑞々しい演技と、ミニアルバム『chouchou』で聴くことのできる彼女の歌声の印象は、少し異なっている。同アルバムの1曲目「366日」では、<戻れないと知ってても 繋がっていたくて 初めてこんな気持ちになった>と、ストレートに切ない恋への思いを歌っているかと思えば、2曲目の「Woman“Wの悲劇より”」では<もう愛せないと言うのなら 友だちでもかまわないわ>というフレーズで、ぐっと大人っぽい、憂いを帯びたような表情を見せる。また、「変わらないもの(Studio Live)」ではピアノの弾き語りに挑戦し、音楽的偏差値の高さを示している。

 アルバムに収録されている楽曲は全て映画の主題歌や挿入歌で、「お芝居をしているからこそ歌える歌を」という彼女の目標をはっきりと示した作品である。(参考:上白石萌音、リリースイベントで見せた凛とした佇まい 新海誠監督「『歌うべき人』と強く感じた」)上白石は、映画の台本のように歌詞を深く理解しているのではないかと思わせるほどに、各曲の世界観を声で表現している。そして、何より驚くのは、上白石が小柄な体型からは信じられないほどの声量の持ち主であるということだ。YouTubeで公開している、アカペラかつ1カットで撮影された動画からもその声量の凄さは伝わるが、特にライブでは彼女が歌い出した途端、周囲の空気までもが震えているように感じさせるほどだった。

 映画『ちはやふる』(2016年)『溺れるナイフ』(2016年)といった話題作に続々と出演し、女優として着実にステップアップしている上白石だが、今後はシンガーとしても確固とした地位を築いていくことだろう。今井美樹と布袋寅泰や、松たか子とレキシ、柴咲コウと福山雅治(KOH+)のように、男性アーティストとコラボして新たな一面を見せたり、大原櫻子や西内まりやのように、自身で作詞作曲をしてソングライターへの一歩を踏み出したり…上白石も現状にとどまることなく、活躍の場を広げながら、1人でも多くの人にその声を届けていくような展開を期待したい。

(文=村上夏菜)

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