SAがメジャーデビュー後も剛速球を投げ続ける理由「大袈裟なくらいはみ出したほうが絶対いい」

SA、再メジャーでも剛速球を投げ続ける理由

「いいスタッフが、いや、いいコムレイズが増えた」(NAOKI)

ーー良い方向に流れてきたバンドの状態が音楽に表れていますよね。“昭和的なもの”って、キャリアや自信はもちろんですけど、一歩間違えれば古くてダサいものになってしまいますし。

TAISEI:オレらがガキの頃に初めて触れた70年代の音楽というのが自分の中で財産としてあるわけだから、それは大事にしたい。「パンクだぜ」と突っ張ってる人たちが「歌謡曲なんて」って言ってるのを見て、「いやいやいや、昔好きだったでしょ? 毎週『ベストテン』見てたでしょ?」と思うこともあるわけ。そこは嘘つきたくない。昭和の歌謡曲というのは、作品としてすばらしいですよ。洋楽をルーツとしたバックボーンがあって、それを日本風にアレンジしているわけだから、気になった人はその根元にある音楽にたどり着くわけだし、ジュリー(沢田研二)にしてもオールディーズの雰囲気だったり、当時のネオ・ロカビリーを取り入れたりしてたじゃない? そこから、当時の洋楽へ間接的に触れていたと思うんだよね。

ーー「LOVE ’N’ ROLL」はまさにそういった昭和歌謡ロックのテイストのナンバーですし、「ケリをつけろ」のリズムもあの頃のにおいがします。

TAISEI:「ケリをつけろ」は本格的なファンクの16ビートではなくて、日本のロックの古い16ビートのノリかな。日本人が洋楽に憧れていた時代の音楽というか。あの頃はみんな、外国人になりたがっていたよね。そのもがき感がカッコよかったりするんだよ。
 
NAOKI:昔は街に外国人が歩いてなかったもんね。大垣にいなかったでしょ?

TAISEI:いない、いない。

NAOKI:尼崎にも宣教師しかいなかった(笑)。

TAISEI:カッコいいと思った曲も実は元ネタがあったりするじゃない? でも洋楽の元ネタよりも、オレらにとってはこっちの日本の曲のほうがカッコイイわけよ。そういう思わずニヤリとさせられることを今だからこそやりたいなと。「SA、ココに行くんだ!」と思わせたい。

ーーその年代を過ごした世代には懐かしさもありますし、若い世代には新鮮に聴こえるところもあると思います。でも、普遍的に受け継がれていくものでもありますよね。

TAISEI:今の音楽がどうって言うつもりはないけど、「ロックってこうだったよなぁ」って思うこともあるよね。オレらが好きだった頃のロックって“Too Much”だったしさ。大袈裟なくらい、はみ出したほうが絶対いいよ。デカいものは圧倒的にデッカく、チマチマしたものはとことんチマチマしてさ(笑)。「LOVE ’N’ ROLL」のアタマのコーラスワークとか、若い世代はそもそもシュープリームス(ザ・スプリームズ)を知らないわけだから。オレは音楽のファミリー・トゥリーとでもいうか、「このルーツはこうで、ここでこうなって、ここからも繋がって、」みたいなの好きだから、そういう聴き方もしてくれたら嬉しいね。

ーーサウンド面でも大きく変化を感じました。各楽器の図太い音とヌケの良さ、バンドの重心がグッと低くなって。

NAOKI:関わるスタッフが増えたから、そのやりとりの中で生まれていったものは多かったね。これまではSAだけで、オレらが持ってる引き出しでやってたんだけど、もっと俯瞰で見てくれるスタッフが増えた。「こっちの音のほうがよくないっすか?」っていうアドバイスをくれたりね。すっげぇありがたい。メンバーだけだと「今のテイクいいねぇ~」なんてあまり言ってくれないし(笑)。いいスタッフが、いや、いいコムレイズが増えたということですよ。

ーー良いチームによる制作環境が、サウンドに大きく反映されているんですね。

NAOKI:曲のテンポをもうちょっと早くしよう、ゆっくりにしようとか。これまでやみくもにやってたオレたちを客観的に見てくれる人ができたことが、一番大きいね。すごくわかってくれてるし、助かります。

TAISEI:やってるほうからすると、意外と客観視できていないところがあるからね。「BPMを3下げたほうが、もっと“クる”んじゃないか」とか。

NAOKI:長くやっていると、オレらの中に染み付いてる“適正ビート”みたいなものがあるんですよ。バラードならこのテンポ、パンクならこうとか、癖みたいなものが。そこをあえて下げてみよう、上げてみようと言ってくれたことは大きいかも。それに今回はプリプロをしっかりやったんですよ。最初に11曲録ってみて、もう1回洗い直す。そういう意味では時間をかけられた。10年ぶりくらいだね、プリプロやったの。

TAISEI:プリプロのテイクのほうが良かったりな(笑)。デモの段階で完成予想図が見えてたから、レコーディング自体はすんなり行った。

NAOKI:曲ごとに明確な方向性があったから、やりやすかったですね。今回、ドラムはテックを呼んだんですよ。何パターンもドラムセットを組み替えて、曲によってチューニング変えたり。今まで味付けはギターがいろいろやらなきゃいけないと思っていて、いろんな竿を用意したりしてたんだけど、今回はほとんどいつものファイヤーバードで録りましたし、ギターの音は変えずに最後まで行きました。オレはストラトキャスター持っていろいろやるタイプでもないし(笑)。個人的に嬉しかったよね。いつものライブの音で出来るんだもん。

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