ザ・なつやすみバンドの夏はまだ終わらないーー特別編成での『PHANTASIA』ライブを紐解く

ザ・なつやすみバンド『ツアーファンタジア』レポート

 ラストスパート「各地の夏を僕らは終わらせにきました。夏に止めを刺す曲をやります」とキラーナンバー「S.S.W(スーパーサマーウィークエンダー)」へなだれ込む。「毎日がなつやすみだったらいいのになぁ…」という諦めにも似た言葉で、自らがかけた“なつやすみ”という魔法を解くと、その終わりゆく哀しみを吹き飛ばす「ハレルヤ」へ続く。<終わりと始まりがきらめいた! 日々は旅だ>という感動的なフレーズが響き渡り本編は幕を閉じた。

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ザ・なつやすみバンドと嫁入りランド

 再び客電が場内に点ると、合唱コンクールを題材にした、なつやすみバンドとゲストの嫁入りランドによる朴訥かつ脱力感の極みのような寸劇が繰り広げられる。オチのごとく鳴り響くスネアのフィルインで「GRAND MASTER MEMORIES」に突入。場内中がハンドクラップの嵐、盛り上がりはこの日の最高潮を記録(高木による飾り気のないソロ歌唱披露も最高)。しかしジッと耳を傾ければ流れてくる「全部忘れるなよって」という、郷愁のリフレイン。終わりゆく日々を慈しみつつも、明日へと繋がっていることを前向きに、しかし気負いなくアッケラカンと歌い上げる。そしてダブルアンコール、4人のみの編成で「なつやすみ(終)」を披露。鈴の音の残響が鳴り終わると共に、なつやすみバンドは東京の夏に完全なる終止符を打った。

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 “なつやすみ”という刹那的な命題を背負ったバンドだからこそ生み出せる、楽しくポジティブ、そして少しだけセンチな気持ちにさせてくれる音のマジックを全身に浴びる夜だった。ツアーはまだまだ続く。これから各地の夏を終わらせるために、なつやすみバンドはひた走っていく。彼らの夏はまだまだ終わらない。

(取材・文=田口俊輔/写真=石阪大輔(HATOS))

ザ・なつやすみバンド

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