マックスウェル、フランク・オーシャン……晩夏に聴きたい“メイル・ソウル・ミュージック”選

 次に紹介したいのは、カナダはオンタリオの新星、パーティーネクストドア。彼も最近、2枚目のアルバム、その名も『PARTYNEXTDOOR 3』を発表したばかり。同じくトロント出身のR&Bシンガー、ザ・ウィークエンドの作風にも似た、妖しげな色気が漂う作風が特徴です。まだまだ日本では知名度が低そうな彼ですが、今やカナダを背負う大スターとなったドレイクのレーベル、<OVO Sound>と契約しており、ドレイク諸作のプロデュースやソングライティングを手がけていることでも注目を集めています。今年に入ってからは、ドレイクをフィーチャリングしたリアーナのシングル「Work」のソングライティングを担当したことでもお馴染み。アルバム1曲目の「High Hopes」では、かのブラック・ストリート「No Diggity」をサンプリングしており、ドレイクの最新アルバム『VIEWS』との共通点もチラリと覗かせる(『VIEWS』もまた、90年代R&B作品へのオマージュが至るところに確認できる作品)、というのは考えすぎでしょうか。また、カリブの香りがする「Not Nice」や「Only U」も、同じく『VIEWS』に収録されている「One Dance」「Too Good」などに繋がる潮流に位置します。憂うようなヘヴィなビートと、どんよりした楽曲の展開が彼のサウンドの(というか、<OVO>というレーベルそのものの)特徴なのですが、それがやけに中毒性を持ち、夏の終わりのセンチメンタルな気分にピッタリです。

パーティーネクストドア「Come and See Me」

 さて、次は現代におけるネオ・ソウルの歌い手、またはヒップホップ・R&Bシーンの客演王としても知られているシカゴニアン、ジェシー・ボイキンス・IIIのミックステープを。彼の新作『BARTHOLOMEW』は非常にゴージャスな内容! ゲスト陣だけでも、同じシカゴを代表するチャンス・ザ・ラッパーとのコラボでも知られるミック・ジェンキンスやノーネーム、そしてドニー・トランペット、また、西海岸からジ・インターネットのシド・ザ・キッド、ケンドリック・ラマーと同レーベル、<TDE>のイザイア・ラシャド、UKからはリトル・シムズ、他にもウィロウ・スミスやメラニー・フィオナ、デージ・ローフにトリニダッド・ジェイムスまでもが参加しており、改めてジェシーの愛されっぷりが伺えるような内容です。しかも、これだけバラバラなゲストを集めてもなお、きちんとジェシー色に纏め上げているのは見事としか言いようがございません。ちなみにこの作品、「サンファとディアンジェロをミックスしたような出来栄え」と評したメディアもあるほど。奇跡のようなサウンドのケミストリーをお楽しみください。

ジェシー・ボイキンス・III「Everybody Shut Up ft Isaiah Rashad」

 最後はコンパスの針をフランスへと向けてみましょう。<MOTOWN>ともサインを交わしたソウル・シンガー、ベン・ロンクル・ソウルが2009年に発表したカバーEP『SOUL WASH』が日本限定の新装盤となって再発されました。彼がブレイクするきっかけとなったザ・ホワイト・ストライプスの「Seven Nation Army」などはもちろん、何と言ってもジェームス・ブラウン「Please Please Please」やニーナ・シモン「Feeling Good」のカバーを追加収録しており、さらにみっちりとディープな魅力を楽しめるのがポイント。彼は今月、4年ぶりの来日公演も決まっているそうなので、秋のはじまりをベンのソウルフルな歌声で彩ってみては。

ベン・ロンクル・ソウル「Please Please Please」(原曲:ジェームス・ブラウン)

 それでは皆様、すてきな夏の終わりをお過ごしくださいね。

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演 

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