銀杏BOYZ、8年ぶりの全国ツアーファイナル公演レポ 峯田和伸の活動史20年が凝縮された夜

銀杏BOYZ、ファイナル公演レポ

 ここからは後半。ギターをジャガーに持ち替え、中盤まではそのジャガー1本で切々と、そして痛々しく響く歌を歌いつつ、客電全開後は、一変してダイナミズムと生命力を会場中に広げていった「光」、そのとてつもないパワーを更に自己発光していくかのように、8ビートにノリ、再び会場も並走させた「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。

 そして、ラストの「僕たちは世界を変えることができない」に入る前、峯田は我々とこんな約束をしてくれた。

「これから新曲を作って、アルバムを作って、またみんなに逢いに来ます。もう8年も待たせないから。何よりも自分の曲でみんながワーッとなってくれるのが心から嬉しい。みなさん、どんな汚い手を使ってでもいいからこれからも生き延びて下さい。そうしたらまた会えますから」と告げ、メンバー紹介の後、同曲に入る。最後は4人全員のコーラスで現在の銀杏BOYZの音楽的な豊かさを感じさせてくれた。<どんなに頑張っても所詮世界を変えることなんて出来ない>と諦念混じりで歌いながらも、どこか、<いや、でも、やらなきゃいけないことをやるんだよ!!>と信じさせ、決意させてくれる同曲。こんなタイトルながらも、最後には明るく前向きな気持ちにさせてくれる。こんな歌を創り、歌えるのは、やはり峯田和伸だけだと改めて確信させられた瞬間であった。

 アンコールに入る前。この中野サンプラザでの一番の想い出として、フジファブリックのボーカルだった故志村氏のお別れの会「志村會」を挙げた峯田。“あの日の会には、会場では終始、「若者のすべて」(フジファブリック)が流れていたっけ……”と、不思議と志村氏と峯田のどこか似通った部分を思い浮かべる。

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「このサンプラザの代わりに、今度は1万人収容のアリーナが出来る予定だとか。そんなホールが出来たら、またそこでやりたいね」と笑いながらアンコールに入る。アンコール1曲目は「夜王子と月の姫」。<世界の終わり来ても僕等ははなればなれじゃない>のリリックが、まるで銀杏BOYZと会場、いや、これからも銀杏BOYZを必要としている全ての人、そしてそんな人たちを必要としている銀杏BOYZとの心のアライアンスのように響く。続く「ぽあだむ」と「愛してるってゆってよね」は、大団円へと導くように、ダンサブルにポップに放たれ、ツアーは幕を下ろした。

 時に性に対してのリビドーを、時に好きな人への直接伝えられなかった純愛を、時に世界に対してのジレンマや抵抗を、時に希望や光を、時に生きのびることへの執念を…その時々を通し、作品毎に彼が放ってきた「唄の柱」の数々が今の形となって次々と飛び出した感のある、この日。銀杏BOYZのライブでありながらも、シンガーソングライター峯田和伸のこの20年の活動の歴史や創作楽曲の影響力と永遠性、そして彼自身の人間観に魅了されっぱなしの一夜であった。

 なぁ、峯田。またあと何年も待てねぇよ。また近いうち、その歌の数々をその時々の自身も交え聴かせておくれ。愛情のこもった<罵詈雑言>という名の称揚で迎える準備は、いつでもしておくから。

(文=池田スカオ和宏(LUCK'A Inc.)/写真:村井香)

■公演情報
銀杏BOYZ
特別公演『東京の銀杏好きの集まり』
2016.8.17 @中野サンプラザ

<セットリスト>
1. 人間
2. 生きたい
3. 若者たち
4. 大人全滅
5. YOU & I VS.THE WORLD
6. 佳代
7. べろちゅー
8. 骨
9. 夢で逢えたら
10. I DON'T WANNA DIE FOREVER
11. BABY BABY
12. 漂流教室
13. 新訳 銀河鉄道の夜
14. 光
15. ボーイズ・オン・ザ・ラン
16. 僕たちは世界を変えることができない
Encore
En-1. 夜王子と月の姫
En-2. ぽあだむ
En-3. 愛してるってゆってよね

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