渋谷の名物FM番組による、“日本のジョン・ピール・セッション”的音源が持つ意義

 そしてさらに、谷川俊太郎、こだま和文、PANTA、加藤ひさし、小野瀬雅生、東良美季、杉作J太郎、友部正人、真利子哲也、畠山美由紀、佐野元春といった番組出演者や関係者たち28人によるラジオに関するコラムやエッセイ、そしてSHIBUYA-FM及び『EVERYBODY KNOWS?』の歴史を東へのインタビューを元に構成したライナーノート(文・小野島大)を収めた60ページに及ぶブックレットも充実している。

 ディストリビューションはメジャーなので全国どのCDショップでも入手できるが、企画立案から各所への交渉、製作にまつわるすべての作業、納品に至るまで、ほとんどすべてが番組DJであり監修者である東雄一朗ひとりによる、インディペンデントな作品でもある。時代がデジタルに移行し、「CDを聴く」という行為自体が旧時代のものとなりつつある今、フィジカルの商品として出せるのは今が最後のタイミング、という思いもあるようだ。

 単なるノスタルジーではなく、今もなおアクチュアルなメディアとしてのラジオの再定義と再評価。このボックス・セットにはそんなメッセージも込められている。コマーシャリズムを意識せず、ただいい音楽をかけ面白い番組を好きに作れた、という意味で、一時期のSHIBUYA-FMはラジオ番組製作者にとって「理想のラジオ」だった、と東はいう。この4月「渋谷のラジオ」(87.6MHz)という新たなコミュニティFMが誕生し、SHIBUYA-FMは完全に歴史の点景となった。だがそこにあったはずのラジオの理想を求める精神は、今もなお生き続けているはずだ。

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

■リリース情報
『EVERYBODY KNOWS? RADIO SESSIONS 1997-2014』
発売中

<収録内容>
・DISC1
1.Joe Strummer - Opening JINGLE (2001)
2. 花田裕之 White Out(1998)
3. シバ いつでもブルース(2006)
4. Nick(!!!) - JINGLE(2007)
5. BE THE VOICE テリトリー (2005)
6. Port Of Notes 風のむこう(1997)
7. KIND OF BLUE Your Smile (2000)
8. 甲田益也子 A SEA OF LOVE (1998)
9. ガカンとリョウメイ Toss The Feathers(2005)
10. DSK Day Goes By (2003)
11. MARK GADENNER – JINGLE(2006)
12. 渚十吾 With Seasons(1999)
13. 照井創 春の余韻(2011)
14. 尾上文 森と二人の子供(2004)
15. オグラ あのころ (2003)
16. 美咲歌芽句(ex.Mr.kite) My Generation(2007)
17. 小山卓治 いつか河を越えて (2001)
18. Breath Mark 赤く赤く (2003)
19. YAZUMA feat FRISCO メリーマス、メーリマス、メリークリスマス(2001)
20. GOLDEN 白い腕(2011)

・DISC2
1. Joe Strummer - Opening JINGLE(2001)
2. 武藤昭平 サルー (2011)
3. 高野寛 偽りの中で (1999)
4. ワタナベマモル ヒコーキ もしくは青春時代 (2010)
5. 竹野恭章 朝 (2009)
6. 照井創 Waltz Of Cloudy(2011)
7. 花田裕之 こんな日は(2001)
8. 平松慎吾 Welcome Glocal(JINGLE/2014)
9. FRISCO HUSHTRAY(2001)
10. Mon Murmure ESPRESSO - LET'S TALK ABOUT COFFEE (2000)
11. BOSSA51 Flower In The Ice Cube (1999)
12. Rose - Unlimited SOUTEERN COMFORT (2003)
13. Photo Jenny beautiful girl (2000)
14. STEWART COPELAND(THE POLICE) - JINGLE (2007)
15. さいとういんこ Cake (1998)
16. 原田郁子 ゆれるゆれる (2000)
17. オグラ チョコレートウーマン (2003)
18. JAMES(YO LA TENGO) - JINGLE (2006)
19. Flight Of Idea ネコネコタイム(2002)
20. ジョニー大蔵大臣 農業、校長、そして手品 (2011)
21. L.L. COOL J太郎 すべてまぼろし (2003)
22. 三代目魚武濱田成夫 ほんとの1(2009)

・DISC3
1. Joe Strummer - Opening JINGLE (2001)
2. GOLDEN What A Wonderful World (2009)
3. PEALOUT Across the Universe(2000)
4. 小山卓治 BLIND LOVE (2001)
5. ALEX COX - JINGLE (2008)
6. d - p
7. LIZARD (MOMOYO) New Kids In The City (2009)
8. 美咲歌芽句(ex.Mr.kite) 夜の虹を食べろ (2007)
9. JAMES CHANCE - JINGLE(2010)
10. Flight Of Idea 面倒くさいってちょっといいな (2014)
11. Rose - Unlimited SAMBA ANGELO (2003)
12. Port Of Notes With This Affection (1998)
13. 高野寛 暮れてゆく空 (2000)
14. bice Walkin In The Rain (2002)
15. 直枝政広 ギターに映る空 (2000)
16. 平松慎吾 - Night Coming(JINGLE/2014)
17. Breath Mark TALK IS TOY (2003)
18. 山口洋 ノーウェアマン(1999)

・DISC4
1. Last Day Of EVERYBODY KNOWS?(約40分)

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