20周年のフジロック、必見の洋楽アクトは? 小野島大が50組を徹底解説

フジロック、必見の洋楽アクトは?

7月23日

<GREEN STAGE>

Beck

 今年で20回目のフジロック。台風中止になった1997年第一回の2日目に出る予定だったのがベックでした。翌年の第2回、そして2005年にも出演しているものの、なんとフジ出演はそれ以来11年ぶりとなります。そして意外なことに、3回目にして初めてのグリーン・ステージのトリ出演なのです。来日公演自体も2009年以来だから7年ぶりということになります。

 異論反論が噴出することを承知の上で書きますが、ベックという人は決して(たとえばレッチリのように)ステージ・パフォーマーとして最高の力を発揮するというタイプではなく、やはりスタジオ・ワークこそが主戦場のアーティストだと思います。だからこそ、この20年以上ポップ・ミュージックの最前線の戦い続けたこの男が、パフォーマーとしてどんな成長を遂げているのか、ポップ・ミュージックの激動の中でどんなスタンスを選んだのか、ナマの現場で確認したいところです。大傑作『モーニング・フェイズ』以来の新作もそろそろ発表されそうな気配ですが、久々にベックらしいポップなコラージュが聴ける新曲「WOW」を聴きながら、当日を待つことにしましょう。

Beck - Wow (Lyric Video)

Wilco

昨年突如無料配信のニュー・アルバム『スター・ウォーズ』をリリースした現代アメリカン・ロックの最高峰ウィルコ。たった34分の中にロック50年の歴史をそっくり詰め込んだような密度の濃い、しかもポップでキャッチーな傑作でした。フジロック出演は2011年以来。しかしその時とはバンドの存在感が違います。ライヴでこそのカルチュラルなパースペクティヴの豊穣な広がりが実感できるはず。見逃せません。

Wilco - Full Performance (Live on KEXP)

Travis

 UKロックの良心トラヴィスは、フジロックと同じ結成20年目。おまけに出演当日の23日はフロントマンのフラン・ヒーリーの43回目の誕生日ということ。やる前から盛り上がるのは決まってますよね。トラヴィスらしく、美メロ曲満載の最新作『エブリシング・アット・ワンス』を聴きながら、当日を待ちましょう。

Travis - What Will Come

TOM ODELL

 今年のフジロックはいつになく「今が旬の若手アーティスト」への目配せが際立つわけですが、英マンチェスター出身のシンガー・ソングライター、トム・オデールのグリーン抜擢もそのひとつ。2013年のファースト・アルバム・リリース時にレッド・マーキーに出演していますが、それ以来の2回目のフジ出演です。ライヴァル格のジェイク・バグも初日のグリーンに出演しますが、ジェイクとは対照的に、ややノスタルジックで繊細な叙情性が特徴。新作『ロング・クラウド』は前作よりもぐっと音楽性の幅を広げた佳作です。

Tom Odell - Wrong Crowd (Official Video)

<WHITE STAGE>

SQUAREPUSHER

 「鬼才」という表現も生易しいぐらいキレキレのエレクトロニカで、もはや孤高を飛び越えて人間離れした未来音響の域にまで到達しているスクエアプッシャーことトム・ジェンキンソン。フジ出演は2001年以来。昼下がりの客もまばらなホワイト・ステージで「Make Some Fuckin' Noise!」とわめきながら面妖なノイズを迸らせる「中2」ぶりは、「人が嫌がるような雑音を出す」というノイズの原点がうかがえてとても楽しかったことを覚えています。もちろんそれから15年がたち、スクエアプッシャー自身も成長し、取り巻く環境も大きく変わりました。ここ最近の単独公演(http://ro69.jp/live/detail/124093)でも、とんでもない充実ぶりは明らかですが、ヴィジュアルの演出効果もたっぷり期待できる夜更けのホワイト・ステージで、その超絶的音響体験を思いっきり堪能しましょう。

Squarepusher - Live at Fuji Rock 2001, Part 1

TORTOISE

シカゴ音響派の大御所トータスが、7年ぶりの新作『ザ・カタストロフィスト』を引っさげ、フジロックにも7年ぶりの帰還です。新作は洗練されたモダニズムと技巧を凝らしたアレンジや流麗な演奏など、トータスらしさ全開で、バンド形態のものからテクノ〜エレクトロニカ、クラウト・ロック、ダンス、ジャズ、叙情的な歌ものまで音楽形態も発想も自由。新作からの曲を中心に、絶対に期待を裏切らない安定のライヴを見せてくれるはず。

Tortoise - Yonder Blue (Official Music Video)

THE HEAVY

 UK出身の4人組ザ・ヘヴィー。フジロック出演は2年ぶりですが、観客を否応なく巻き込み乗せてしまう熱いライヴはさらに磨きがかかっているはず。ペプシのCM曲「セイム・オール」で知られるようになった彼らですが、新作『ハート&マーシレス』にはそれ以上にご機嫌なナンバーが目白押しです。

The Heavy - What Happened To The Love?

VANT

2014年結成、ロンドン出身の4人組。初期パンクやグランジをもっとあっけらかんとしたポップネスで演奏する若手ですが、いかにもライヴ向けのバンドなので、意外な拾いものになりそうです。これまで4枚のシングルを出してますが、すべてヴァイナルか配信で、CDは1枚も出してないのが、今どきの若手ですね。ルックスも良く、今後ブレイクが期待できそうです。

VANT - KARMA SEEKER (Official Video)

<Red Marquee>

KULA SHAKER

6年ぶりの新作『K 2.0』を引っさげ、6年ぶりのフジロックに挑むクーラ・シェイカー。タイトル通り、ファースト・アルバム『K』から20年目の節目という意味を込めてのタイトルが示すように、彼らの原点と20年の進化、そして現在地を同時に表すような節目のライヴになりそうです。

Kula Shaker - Infinite Sun

LOOK PARK

 ファウンテンズ・オブ・ウェインのフロントマン、クリス・コリングウッドのソロ・プロジェクトがルック・パークです。フジ直前にファースト・アルバム『Look Park』がリリースされる予定。世界中が注目する、まさにワールド・プレミアの貴重なライヴになりそう。音楽性もいかにも彼らしい。

Look Park, “Shout Part 1”

THE ALBUM LEAF

 静謐で叙情的で美しくスケールの大きなポスト・ロックで定評のある米サンディエゴのジ・アルバム・リーフ。どことなくイメージが地味なバンドですが、アルバムはいつも年間ベスト級の大傑作ばかり。8/26発売予定の6年ぶりの新作『ビトウィーン・ウェイヴス』もまた、とんでもない傑作に仕上がってます。フジはアルバム発売前のライヴになりますが、当然新曲もやってくれるでしょう。

THE ALBUM LEAF "BETWEEN WAVES" (Official Music Video)

<TRIBAL CIRCUS>

Kill The Noise

 NYを拠点に活動するキル・ザ・ノイズことジェイク・スタンクザック。去年から今年にかけて、典型的なEDM風のど派手な楽曲がダンスチャートから姿を消すなどシーンの移り変わりがある中、ダブステップ〜エレクトロハウスの王道とも言えるハッタリ十分の大バコ向けトラックを展開する若手です。フロアの狂乱が容易に想像がつく景気のいい音。ファースト・アルバム『オカルト・クラシック』を引っさげ深夜のレッド・マーキーを揺らしにきます。

Kill The Noise & Feed Me - I Do Coke [Official Music Video]

BAAUER

 バウアーことハリー・ロドリゲスの名を一躍知らしめたのは2013年の大ヒット「Harlem Shake」でしょう。当時まったく無名ながらでいきなり全米1位という快挙を成し遂げた気鋭のプロデューサー、今年になって待望のファースト・アルバム『Aa』をリリースしました。シンプルでキャッチーな「Harlem Shake」とは対照的なディープでエキゾティックでエキセントリックな楽曲が並び、際立つ才能を感じさせました。この曲はM.I.A.とK-POPの人気グループBIG BANGのラッパーG-DRAGONをフィーチュアした無国籍TRAPチューン。

Baauer - Temple ft. M.I.A., G-DRAGON

TODD TERRY

 あのトッド・テリーがフジロックにやってくる!まさしくニューヨーク・ハウスの伝説の巨人のプレイが深夜の苗場で見られるとは長生きするものです。この道30年の大ベテラン、オールドスクール・ハウスの真髄をたっぷりと叩き込んでくれるはず。最近のDJセットもダンス・ミュージック好きなら涙なしには聴けない大ネタのオンパレードで、これで盛り上がらないとウソ、という感じです。

Todd Terry Boiler Room x Ballantine's Stay True Brazil DJ Set

<Field of Heaven>

G.LOVE&SPECIAL SAUCE

 久々に荒々しく熱っぽいオルタナティヴ・ブルースを聴かせた快作『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』を率いて5年ぶりにフジに帰還するG・ラヴ。フジという場にこれほど似つかわしいアーティストはいません。最終日深夜のパレス・オブ・ワンダーにも出演。こっちの方が盛り上がりそうですね。

G. Love & Special Sauce - Muse ft. Citizen Cope

CON BRIO

サンフランシスコ拠点の7人組。荒々しく熱っぽいソウル/ファンクで人気上昇中です。バンドの演奏力は高く、ジーク・マッカーターのヴォーカルもガッツがある。しかし決して泥臭くならず、ヴォーカルの動きも含め洗練されていてスマートなのがかっこいいですね。これはスタジオ・ライヴですが、オーディエンスを前にしたライヴはさらに熱くなることは確実でしょう。ファースト・アルバム『Paradise』がフジの直前にリリースされる予定。

Con Brio // Sundown [Live at The Independent]

MARK ERNESTUS' NDAGGA RHYTHM FORCE

 コノノno.1のプロデュースでも知られるベルリン・ミニマル・テクノ/ダブの大御所、ベーシック・チャンネルのマーク・エルネストスがセネガルのダンス・ミュージック「ンバラ」の音楽家たちと組んだバンドです。ミニマルで催眠的なアフロ・トライバル・ポリリズムが強烈。ライヴではもっと民俗音楽色が強くなりますが、いずれにしろこういう音楽が聴ける日本のフェスはフジロックしかありません。

Mark Ernestus’ Ndagga Rhythm Force ‎– Lamb Ji [Feat. Mbene Diatta Seck]

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる