ビルボード複合チャートに見る、メディア露出とCDセールスの最新事情

 この購買運動、当初はCD買ったら事務所側が儲かるわけだし、それで「みんなの声に応えて解散するのやめました。今後も頑張ります」とかいうことになっても事務所が喜ぶだけじゃね? 意味なくない? とか思ったものでありますが、事務所的にもメディア的にも「SMAPは安泰です」という告知をしたにもかかわらず、そのメッセージを無視してなおもCDが売れ続けるというのは、事務所側の作ろうとしたストーリーにファンが乗っていないということを暴く結果になっていて興味深いところであります。

 まあ悪く解釈すると、購買運動の結果として楽曲がメディア上で頻繁にかかるようになり、一般層も「いい曲だから買っちゃおう」と思ってCDを買ってるだけかもしれません。メディアに出ればCDが売れるというのは実際にあり得ることで、たとえば紅白に出演したりすると古い曲でも簡単にチャートの上位に入るわけであります。そういうのと同じ現象だとすると購買運動を行っていたファンの意図とはズレたことになってしまいやしないかと心配でありますが、どっちみち事務所側としてはこの降って湧いたような売り上げをありがたく享受しつつ、ファンの沈静化を図れる新たなストーリーをボディーブローのように繰り出してくるだけではないでしょうか。最終的には事務所も儲かるし、大多数のファンも何となく納得させてもらえるのでしょうから、きっとWin-Winなんじゃないですかね。それでいいのかはわかりませんが。

■さやわか
ライター、物語評論家。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『朝日新聞』『ゲームラボ』などで連載中。単著に『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』『一〇年代文化論』『キャラの思考法: 現代文化論のアップグレード』がある。Twitter

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