フォーリミ、ビーバー、妄キャリ、直太朗、櫻子…6月1日発売新譜から注目作をピックアップ

森山直太朗『嗚呼』(AL)

 「どこもかしこも駐車場」(2013年)「コンビニの趙さん」(2014年)は森山直太朗の巨大な才能を証明する名曲だと思うが、優れたな現代詩でもあるこれらの曲は一般的な理解を得られたとは言い難く(実際「ああいう面白い曲もいいけど、「さくら(独唱)」「生きとし生ける物へ」みたいな曲を歌ってほしい」という声も少なくない)、それが2015年9月から半年間に及んだ“小休止(活動休止)”の遠因になったところもあると思うのだが、ニューアルバム『嗚呼』で直太朗は、“圧倒的な普遍性ゆえの前衛”と“大衆音楽としてのわかりやすさ”をギリギリのラインで結び付けてみせた。そのことをもっとも端的にしているのがタイトル曲「嗚呼」。喜び、悲しみ、怒り、驚き、絶望、気付きなど、つまり意味を超えた響きである“嗚呼”という言葉にこれほどまでに豊かな情感を含ませることができる歌い手は、彼以外にはいない。ただただ“嗚呼”というだけのこの曲のサビに触れるだけでも、あなたには生きる価値がある(って言い切る)。

森山直太朗「嗚呼」Short Ver.

大原櫻子『大好き』(SG)

 藤原さくら、新山詩織、chay、HARUHIなど個性豊かな女性シンガーソングライターが数多く存在する音楽シーンにおいて、“王道”という言葉がいちばん似合うのは大原櫻子ではないだろうか。映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』のヒロイン役としてデビュー、そのままソロのシンガーソングライターとしての活動を軌道に乗せ、昨年末にはNHK紅白歌合戦に出演。その圧倒的なメジャー感は、5thシングル『大好き』にも受け継がれている。作曲は亀田誠治、作詞は大原と亀田の共作による表題曲のキャッチフレーズは“セツナくも POPなラブソング”。Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、落ちサビというJ-POPド真ん中の構成、真っ直ぐで爽やかな声質を活かした旋律、“君の夢を追いかけてほしいけど、ホントはもっと一緒にいたい”的な歌詞を含め、ツッコミどころがまったくないプロダクションが実現しているのだ。8月から始まる全国ツアーのファイナルは初の日本武道館公演。アーティストのイメージに合った質の高いポップソングをマスに向けて発信するというスタイルが現在も有効であることを、彼女はひとりで証明し続けている。

大原櫻子「大好き」Short Ver.

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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