夏代孝明が語る、歌への向き合い方と楽しさ「人それぞれ違うし、まったく個性のない人はいない」

夏代孝明が語る、歌への向き合い方
【KWC2016 JAPANオーディション募集映像】

「日本ってなかなか家では歌えないから、カラオケの存在は偉大」

――KWCはカラオケの世界No.1を決める決定戦で、2013年には日本代表の男性がチャンピオンに輝いてもいます。参加自体も無料でエントリーできるということなのですが、当時この大会があったとしたら、夏代さんも出場していたと思いますか。

夏代:僕は昔から、そういうものに顔を出すのが好きだったんです。ニコニコ動画の「歌ってみた」も、僕にとってはそのひとつだったので。そこから色んな方に取り上げていただいて活動を続けられるようになったので、みんなにもぜひその一歩として出てみてほしいです。もしかしたらこの大会が、ボーカリストとしてのキャリアに繋がっていくかもしれないですし。僕だったらきっと出ていたと思いますね。

――出ていたら、世界と勝負するにあたって何を歌っていたでしょうね? 当時の勝負曲というか。

夏代:たぶん、Mr.Childrenさんの「名もなき詩」。僕がその当時一番得意だった曲で、よく歌っていた記憶があるんです。Mr.Childrenさんの曲はどれも、桜井さんにしか書けない詞があって、歌もすぐに桜井さんだと分かりますよね。中でも僕は「名もなき詩」の2サビが終わった後に訪れる、勢いのあるパートがすごく好きなんです。声を枯らしつつ、勢いのある感じとか。

――参加資格は18歳以上のアマチュアシンガーに限るということですが、もし夏代さんがアマチュアシンガーとして今の年齢を過ごしていた場合、自分の曲以外で大会に参加するとしたら、どんな曲を歌いたいですか?

夏代:バラードを歌ってみたいですね。(『クロノグラフ』にも収録されている)HYさんの「366日」はすごく好きだし、自分の中で「色々と表現できるな」と思っている曲なので、この曲を歌ってみたいです。ちょうどリリースされた08年頃、『スペースシャワーTV』を観ていたらMVが流れて「この曲やばい!」と思ったのがこの曲との出会いで。今回の『クロノグラフ』には、作品として明るい曲が3曲続く中で「しっとりした曲も歌いたい」と思って選びました。コーラスを入れずにメイン一本だけで勝負したので、緊張しましたね。

――特に大変だったパートはありましたか?

夏代:1番のサビが終わって2番のサビに行く間の、「恋がこんなに苦しいなんて」から始まるところ。ここは音程を合わせることと、本当に「苦しい」というニュアンスを出すことの両立に挑戦したので難しかったです。リズムの面でテクニカルな部分もある箇所なので。あとは、HYさんの作品ではありますけど、自分の経験と照らし合わせて、自分らしさを出していくというか。そういう意味で、最後の感情を露わにするような歌い方も聴いてもらいたいです。

――夏代さんはニコニコ動画の「歌い手」としても活動していますが、「オリジナル版がある曲に、自分の解釈を乗せて表現していく」という、「歌ってみた」ならではの魅力とはどんなところだと思っていますか?

夏代:「歌ってみた」は、同じ曲を色んなボーカリストさんが歌うわけですよね。なので、曲がどんどんその歌い手の方の色になっていくというか。カラオケやカバーだと、本家の楽曲があってこそですが、その中で僕も「夏代孝明の色はどんなものか?」を考えて歌っているので、人が聴いてくれた時に「この人(の解釈)は青色だけど、この人の場合は赤なんだ」ということが起こるのが魅力だと思っているんです。普通はカバーするといってもあまり解釈を加えるような文化になっていない部分もありますけど、「歌ってみた」はボカロPさんがオフボーカルを提供してくださればあとは歌い手それぞれなので。そこが楽しいところですね。

――そもそも、夏代さんが「歌ってみた」を始めたきっかけは?

夏代:最初はhalyosyさんの「メルト」を聴いて衝撃を受けたのがきっかけですが、その時はまだ高校1年ぐらいで若かったので、どこかで「俺の方がいけるんじゃないか?」と思う部分もあったんです(笑)。やってみると全然下手くそだったんですけど(笑)。でも、若いときのエネルギーで、無理やりはじめたのはよかったと思います。コピーバンドをしていたので、録音するための機材も既にありましたし。

――今回『クロノグラフ』のアニメイト限定の特典でも、4曲入りの「歌ってみた」のCDが付きますね。この楽曲はどんな風に選曲して、工夫していったんでしょう?

夏代:UNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」は、ワンコーラスだけニコニコ動画に上げた時に、「フルで歌ってよ」というコメントがあったんです。僕らしく元気に歌ってみたので、「歌ってみた」ならではのものとして楽しんでもらえたら嬉しいです。みきとPさんの「バレリーコ」は最初に歌わせていただいた時のものとほとんど同じで、僕の歌声を上手く生かすことができたと思っています。中川翔子さんの「空色デイズ」(『天元突破グレンラガン』のオープニングテーマ)は、それこそ高校の頃にカラオケでもよく歌っていました。原作は人生の中で僕の価値観を変えてくれたほど好きなアニメなんですが、この曲はそのテーマに沿った素敵な曲なので、1stシングルのタイミングで特典として歌わせていただきました。自分の好きな曲を集めて歌うのは楽しいし、これは初心に帰れるような体験でもあって、『グレンラガン』のストーリーも思い出しながら歌いました。Kenoさんの「おはよう。」は『HUNTER×HUNTER』のオープニング曲。この機会に原曲を何度も聴くうちに、新しく発見するものがありました。「おはよう」というフレーズも、今はより意味合いが違うように感じられて面白かったですね。

――夏代さんにとって、人前で「歌う」とはどんな意味のあることなんでしょう?

夏代:最初は本当に「歌が好き」というだけで、ただ歌うことが楽しかったんです。でも今は、歌を通して自分が思っていること、伝えたいことを表現したいと思うようになってきていて。僕は言葉で伝えるのは得意ではないですけど、歌の中でなら悲しさや嬉しさを、普段言えないようなことも表現できるんです。だから僕にとっては、コミュニケーションでもありつつ、同時に自己表現でもあると思いますね。

――そのはじまりのひとつになったカラオケには、どんな魅力を感じますか。

夏代:やっぱり、日本ってなかなか家では(本気で)歌えないじゃないですか?

――アメリカだとガレージで歌ったりできますけどね。

夏代:そうですよね。そこにドラムセットも置けたりしますし。日本にそういう環境は作りづらいですが、カラオケだったらひとりでも行けるし、自分の歌いたい曲を入れたらすぐにその曲が歌えて、リズムもキーも合うものに変えられる。カラオケにはそんな風に歌を楽しむ環境が整っていますよね。それがストレス発散になってもいいと思うし、歌を仕事にしていくきっかけのひとつになるかもしれないし、そういう意味で偉大な存在なのかも。実際、僕自身もすごく助けてもらったわけですから。

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