リリスク、岡崎体育……話題のMVがクリエイターに与えた衝撃とは? 業界スペシャリストが分析

 今月、2本の動画がSNS上や各メディアで取り上げられ、大きな話題を呼んだ。

 1つ目はlyrical schoolの「RUN and RUN」。iPhoneで視聴することを前提に作られたこのMVは、各種アプリが起動されたiPhone画面上の動きを映像で再現することで、あたかも自らのスマホがジャックされたかのような感覚になる新鮮な作品だ。2つ目は岡崎体育「Music Video」。こちらは楽曲自体が「MVの演出でやりがちなこと」について歌ったもので、これまでも彼のMVを手がけきたクリエイター・寿司くんが、歌詞に沿った“MVあるある”を映像で再現していくという内容に仕上がっている。

 2つのMVはSNS上で瞬く間に拡散し、前者は110万再生、後者は88万再生を記録。また、テレビにも取り上げられるなど、彼らのファン以外にも波及し、メジャーデビュータイミングのプロモーションとしては大成功といった状況だ。

岡崎体育 「MUSIC VIDEO」Music Video

 こうした革新的なMVが増加している背景について、様々なアーティストのプロモーションを手がけ、業界事情にも詳しい株式会社ハレバレ/株式会社QREATOR AGENT/株式会社カッコイイの岡田一男氏は以下のように語る。

「ここ数年は、アーティストが自分で動画を作ったり、SNSで発信したりと、自分でプロモーションをすることが可能になっており、MVの分母が増加しているからこそ、いかに歌唱・演奏シーン以外でアーティストの世界観を伝えるかという方向性のMVについて、価値が高まってきているように感じています。lyrical schoolの場合は、動画広告界でも有名なプランナーで、“バズマシーン”と称される栗林和明氏をはじめとするTBWA/HAKUHODOチームとAOI Pro.のディレクター:隈本遼平氏らが制作したことで、ここまで完成度の高いものを生み出すことができました。今回の『RUN and RUN』のように、動画広告のノウハウを積んだチームがMVを手がける機会は年々増加しており、映像監督も広告業界を出自とする方を起用し、これまでと全く違ったアプローチで盛り上がりを生み出すことが多くなってきましたね。BUMP OF CHICKENやぼくのりりっくのぼうよみらのPVを手がける東市篤憲氏も元々は広告プロデューサーです」

 一方、岡崎体育が公開したMVについては「同じバズでも発信の仕方が違う」と同氏は続ける。

「岡崎体育は、インディーズ時代からタッグを組んできた寿司くんが、これまでに手がけたコミカルな映像の延長線上で、メジャーデビュータイミングを機に“誰にでもわかるあるあるネタ”を作ったことが大きい。lyrical schoolはスタッフ主導の発信であることに対し、後者はアーティスト発信という違いがあります。どちらのMVも、動画を使ったプロモーションに興味を持っている製作陣に大きな衝撃を与えましたが、これらの手法は椅子取りゲームのようなもので同じ方法は使えないため、次なるバズを生み出すべくみな試行錯誤しているようです」

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