ジャニーズとスポーツの深い関係とは? 事務所黎明期から『究極バトル“ゼウス”』までの50年史

 こうした最近の傾向については、やはりSMAP・中居正広の貢献を忘れるわけにはいかない。中居が『サンデージャングル』(テレビ朝日系)でスポーツキャスターとなったのが1995年のこと。当時はジャニーズがスポーツキャスターをやるなどまだ考えられない時代だった。だが幼い頃から根っからの野球好きであった中居は、徐々にスポーツに対する見識や愛情を認められていった。その後オリンピック関連番組のキャスターや侍ジャパンの公式サポーターも務めるようになったのはご存知の通りだ。2015年は、野球の国際大会「プレミア12」のテレビ中継でも見事なレポーターぶりを見せていた。

 SMAPも、グループ名のなかに「Sports」という単語が入ったグループらしく、スポーツと縁の深いグループだ。SMAPブレイクのきっかけにもなった番組『夢がMORI MORI』(フジテレビ系)の「スーパーキックベース」で森且行が活躍していた姿などが思い出される。

 そして『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)でもSMAPは、これまでしばしばスポーツに絡んだ企画を行ってきている。なかでも最近で記憶に残っているのは、2015年3月に放送された「スター大運動会」である。1970年代から80年代にかけて放送された芸能人運動会のテイストを意識したと思われる演出のなか、SMAP5人がメンバー毎にチームを率いて競い合った。

 かつての運動会番組では、出演する芸人はアイドルに勝ってはならないという暗黙の了解があった。運動自慢だった明石家さんまがまだ売出し中の若手の頃、本気を出して走って勝ってしまい、後で大変なことになったというエピソードを聞いたことがある方もいるだろう。

 だがこの『SMAP×SMAP』の運動会には、もはやそんな“序列”はない。むしろバラエティでの経験を積んできたSMAPのメンバーたちが、進んで笑いをとる役回りを引き受けていた。その意味では、もはやアイドルと芸人は対等である。2014年、そして2015年の「27時間テレビ」でのSMAPチームと『めちゃイケ』チームのガチンコ対決も、そんな土壌があったからこそ成立した企画だ。そう言えば、そこでも罰ゲーム回避のためにSMAPが「土下座」するシーンがあった。

 そんな歴史のうえに『究極バトル“ゼウス”』もある。演出とは言え、ジャニーズのアイドルたちが芸人たちに「土下座」をするという光景は、昔であれば考えられなかった。それは、アイドルの「カッコよさ」を見せるためだけの「お約束」的展開では味わえない、「ガチンコ」の面白さのひとつのかたちである。真剣勝負には、そこから思わぬドラマや名シーンも生まれる。ジャニーズの多様な魅力を見せていくうえで、スポーツというジャンルはまだまだ豊かな鉱脈になるのではないか。そう感じた今回の番組だった。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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