GRAPEVINEの最新アルバムがチャートで健闘 瑞々しいサウンドはシーンに何をもたらす?

参考:2016年2月1日~2016年2月7日のCDシングル週間ランキング(2016年2月15日付)(ORICON STYLE)

 1位はBIGBANGの『MADE SERIES』。2位にはソンモ from 超新星『The future with U』、3位はGOT7『モリ↑ガッテヨ』とK-POPのアーティストが並び、一瞬韓国のチャートか?と思ってしまいそうな直近のアルバムランキング。

 BIGBANGは先日アルバムのプロモーションで「ミュージックステーション」にも出演していたが、特に印象に残ったのはパフォーマンス前のトークパートにてタモリとジョークを交えた会話を日本語で展開していたことである。「韓国のアーティストが攻略したいマーケットに合わせて語学を習得する」という話はKARAや少女時代が日本で人気となり始めた頃からたびたび言われていることではあるが、この手の歌番組でのトークを見るたびにその背景にある血のにじむような努力を想像してしまい、リスペクトの気持ちでいっぱいになる。

 さて、今回のチャートで着目したいのは7位に初登場となったGRAPEVINEの『BABEL,BABEL』。メジャーデビューから約20年が経ちいまや大ベテランとなった彼らだが、昨年のアルバム『Burning tree』をきっかけに再びバンドとしての瑞々しさを取り戻した印象がある。どちらかというと「わかる人がわかればいい」的なニュアンスが個人的には感じられたポニーキャニオン後期の作品群に対して、『Burning tree』はGRAPEVINEらしい深淵さを担保しながらも聴き手に対するホスピタリティが付与された作品だった。『BABEL,BABEL』もその流れの延長線上にあるアルバムで、先行シングル「EAST OF THE SUN」を筆頭に新規リスナーも排除しない懐の深さを感じさせる。

 特筆すべきは、今作『BABEL,BABEL』の7位というチャートアクションが、バンドとして2番目に高い順位であるということ。99年のアルバム『Lifetime』に次ぐ好成績である(2011年の『真昼のストレンジランド』と同率)。もちろんチャートの順位は同タイミングでリリースされる他の作品によって大きく変わるし、オリコンの順位が高いからといって音楽的に優れているというわけでもない。順位ではなく実売で比較するべき、という意見もあるだろう(実際のところ、前作『Burning tree』は初登場14位だったが初動売り上げでは『BABEL,BABEL』をやや上回っている)。そこまで踏まえたうえで、『BABEL,BABEL』がバンドとしてのブレイク期にあたる『Lifetime』に迫る順位を獲得していることには感慨を覚えずにいられない。本サイトに掲載されたインタビュー(http://realsound.jp/2016/02/post-6277.html)では、ロックシーン屈指のメロディメーカーである亀井亨が作るメロディを起点にした楽曲と、メンバー同士のジャムセッションによって構成が形作られる楽曲のそれぞれを揃えることでバンドとしての奥行きを生み出していることが明かされていた。「日本のロック=フェス=盛り上がり重視」という大きな流れが存在する中で、そんな次元とは全く異なる場所で音楽を創造している日本のロックバンドが一定の支持を獲得し、かつヒットチャート内でも好成績を残しているというのは単純に喜ばしい話である。

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