嵐の魅力と現在地を示す、『VS嵐』と『嵐にしやがれ』の重要性

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(C)タナカケンイチ

 昨年末からこの年始にかけて、テレビに出ずっぱりと言っても過言ではなかったのが嵐だ。ある調査では、とにかく明るい安村など並みいる人気芸人をおさえて年末年始出演本数ランキングの1位から5位までを嵐のメンバーが独占した(「エム・データ」調べhttp://blog.mdata.tv/tvmeta/524/)。ドラマやバラエティなどでの単独出演も含まれてはいるが、トップ5に揃ってランクインというこの結果は、いかに嵐がグループ5人での出演機会が多いかということの証明でもあるだろう。実際、現在プライムタイム(夜7時から11時まで)にグループのレギュラー冠番組が2本あるのは、ジャニーズのなかで嵐だけだ。

 まず『VS嵐』(フジテレビ系)は、2009年に現在の木曜夜7時台に移ってから6年余りが経つ。ご存知の通り、嵐チームとゲストチームがスタジオにつくられた大がかりなセットのなかで、ボウリングをアレンジした「バンクボウリング」、サッカーのシュートで得点を競う「キッキングスナイパー」などゲーム対決を繰り広げる番組だ。

 こうした芸能人などによるアトラクション的なゲーム番組と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、『関口宏の東京フレンドパークⅡ』(『フレンドパーク』)(TBSテレビ系)だろう。対抗戦形式ではなかったが、やはり芸能人などがチームになって「ウォールクラッシュ」や「ハイパーホッケー」などのゲームでクリアを目指す長寿人気番組だった。変更もあったが、主に放送されたのはやはり夜7時台だった。

 この放送時間からもわかるように、どちらもファミリー向けの番組だ。老若男女が理屈抜きに楽しめるファミリー向けの番組は、テレビの見方も多様化した今、なかなか成立しにくくなっている。その点、『VS嵐』は、5年ほど前に終了した『フレンドパーク』の後を受け継ぐ番組としていまや貴重と言える。

 それはきっと、嵐自体にこうしたファミリーで楽しめるようなアトラクション的空間にぴったりはまる収まりの良さがあるからだろう。
 例えば、『NHK紅白歌合戦』(『紅白』)での嵐には、そうした面が大きく発揮されている。昨年末の『紅白』では、『スター・ウォーズ』とのコラボがあり、ダース・ベイダーに立ち向かう日本のジェダイの騎士として登場した。また一昨年の『紅白』では、『妖怪ウォッチ』に登場するキャラクター版の嵐、「アラシニャン」と共演した。凛々しいヒーローと可愛いアニメキャラとは一見両極端だが、どちらの世界にも違和感のないそのふり幅にこそ嵐の特長が表れている。

 松本潤が「自分を素材にして、人に委ねることの楽しさ。自分の中からは絶対に生まれてこない発想にふれて、変わっていく自分に出会える喜び」(『アラシゴト』)を語っていたように、嵐というグループにもそんな素材としての無垢さがある。無色であるがゆえにどんな色にも染まれる。あるいは、流体のようにどんなかたちの器にもしたがうことができる。

 それは、嵐についてよく言われる仲の良さということ以上のグループとしての強みだと言えるだろう。デビューから15年以上にもなるグループを“無垢”と形容するのは失礼かもしれないが、逆にそのようにあり続けられるグループは稀有に違いない。そうであるからこそ、それぞれの場面でプレイヤーに徹しつつも、グループとしての存在感を失わずにいられるように私には思える。

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