2015年『NHK紅白歌合戦』の注目ポイントは「戦後70年」「アニソン」「80年代アイドル」

 さらに言うなら、『ラブライブ!』の題材でもあるアイドル自体が、そもそも戦後日本が生んだ元祖「2.5次元」的な存在ではなかっただろうか。ここ最近の『紅白』でもアイドルの存在感は増している。そしてなかでも今年目立つのが「80年代アイドル」である。それが最後、三つ目の注目ポイントだ。

 今年、近藤真彦が19年ぶりに出場、さらに初のトリに決まったことが大きな話題になっている。近藤のデビューは1980年で、今年はデビュー35周年だった。実は紅組のトリになった松田聖子も同じく1980年デビュー組である。つまり、今年のトリは、80年代のアイドルブームを牽引した二人が務めるという点で『紅白』史上画期的なものである。歌う楽曲が『ギンギラギンにさりげなく』(1981)と『赤いスイートピー』(1982)であるのも80年代をいっそう強調している。

 かつて『紅白』にも存続の危機があった。80年代の終わりの1989年、平成元年のことである。40回を区切りに番組を終了させたいとする当時のNHK会長の意向を踏まえて前半と後半の二部制が導入され、「昭和の紅白」と題した前半では当時のヒット曲とともに戦後と『紅白』の歴史が回顧された。

 だがこの年の内容が好評だったことなどもあり、結局二部制の『紅白』は存続し、今に至る。昭和を超えて、平成も続くことになったのである。それを踏まえれば、「戦後70年」の今年の『紅白』を象徴するのは、演歌などではなく、昭和と平成をまたいで人気を集める戦後日本の産物、アイドルだということになって不思議はない。平成に入って間もなく登場し、いまや『紅白』に欠かすことのできない存在になったSMAPが、やはり戦後を代表する歌番組『NHKのど自慢』の番組70周年の顔に今年起用されたこともまた、同じ時代感覚の表れであるに違いない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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