indigo la End、苦難の季節を経て充実期へーーポップスに回帰した国際フォーラム公演レポート

indigo la End、国際フォーラムホールAレポ

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 ここまでライブのあり方の変化について書いたが、川谷の長いMCはこれまでも同様だったりして、実際は特別大きな意識の変化があったわけではないのかもしれない。ただ、少なくともバンドが充実期を迎えていることは間違いなく、その象徴がこの日中盤で披露されたアコースティックコーナーだったように思う。インディゴはそもそもポップス的な資質を持ったバンドであり、初期はミドルテンポの楽曲が多かったが、メジャーデビュー作の『あの街レコード』から、続くフルアルバムの『幸せが溢れたら』では、意識的にアップテンポの楽曲を増やし、ギターロックのシーンに接近していった。しかし、今年に入ってメンバーが固まると、最初に出した『悲しくなる前に』こそ、それまでの流れを受け継いだアップテンポなナンバーだったものの、続く『雫に恋して/忘れて花束』はミドルテンポの楽曲で、改めてポップスへと回帰。そんなタイミングだったからこその、この日のアコースティックコーナーだったというわけだ。川谷がSMAPに提供した「好きよ」を、サポートの女性コーラス2人と川谷の3人で披露した場面などは、川谷がボーカリストとして力をつけていることも確かに証明していたように思う。

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 ライブ終盤、「悲しくなる前に」のイントロでリズム隊がアグレッシブなソロの応酬を披露したように、今のインディゴはメンバー個々が高いスキルを持ち合わせ、場面によってはZAZEN BOYSのごとくバチバチとぶつかり合うこともできるバンドである。しかし、この日は『幸せが溢れたら』の中で最もアグレッシブでサイケデリックな「実験前」や、これまでライブのクライマックスで演奏されてきた轟音系の大曲「幸せな街路樹」は演奏されず。また、アンコールで初披露され、2月にシングルとして発売されることが伝えられた「心雨」も、シングルの表題曲としては初のミディアムバラードで、こういった事実もバンドのポップス回帰を伝えているように思う。ただ、『雫に恋して/忘れて花束』もそうであったように、表面的には親しみやすいポップスであっても、よく聴けばアレンジや演奏はかなり凝ったものになっていて、単なる原点回帰というわけではなく、バンドがまた一段階上のレベルに達したことがよくわかるはずだ。

 本編最後の「夏夜のマジック」の前に、川谷はかつて渋谷クラブクアトロのワンマンが埋まらずに不安になったことや、脱退したオオタに対する想いを語り、さらには現在のメンバーへの感謝の言葉を口にした。そして、アンコールのラストでは毎回川谷のエモーションが爆発する「素晴らしい世界」が演奏されたが、この曲について以前川谷は「<大丈夫そうだ>ってところを自分がどういう感じに歌っているかで、そのときの自分の心境がわかる」と語っている。この日の<大丈夫そうだ>が強い確信を持って聴こえたのは、決して偶然ではないはずだ。

(文=金子厚武/写真=井手康郎)

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