メロディックパンク第二世代の今ーーlocofrankが新作で示した“決意のサウンド”を聴く

 WANIMAや04 Limited Sazabysなど、メロディックパンクを出自としたバンドが盛り上がりを見せた2015年。メロディックパンクを出自としているとはいえ、両者とも、スタイルに囚われずに、伸び伸びと自分たちのオリジナリティを追求している印象がある。そんな折、メロディックパンクの総本家であるHi-STANDARDのイベント出演のニュースが飛び込んできた。東日本大震災をきっかけに「AIR JAM 2011」で復活し、「AIR JAM 2012」で東北で公約を果たして以降、沈黙を守っていた3人組が、2015年末、盟友たちのイベントに立て続けに出演したのだ(「POWER STOCK 2015」出演は12月6日)。もちろん熟考があったとは思うけれど、ハイスタも、こうしてニュートラルに活動していってくれたら嬉しいなあ……と希望を抱いてしまう。総本家もいて、新進気鋭もいて、実にいい時代じゃないか!とワクワクしながら、ふと思い出した。

 2000年代前半のこと。

 ハイスタが活動を休止し、雨後の筍のように出没していたメロディックパンクバンドがサーッと引っ込んでいった、あの時期。メロディックパンクは、キッズの光ではなく、ただのブームだったのか?とガックリと膝をついてしまうような気分だった。そんな中で、お宝を探すように出会ったメロディックパンクバンドたち。HAWAIIAN6、GOOD4NOTHING、dustbox、10-FEET、locofrank……今でも活躍しているバンドばかりだ。あの時代は、今のように伸び伸びメロディックパンクをやりづらかった。ハイスタを聴いてメロディックパンクをはじめた(もしくは、ハイスタにメロディックパンクを続けていく勇気をもらった)最初の世代は、その偉大な存在をひしひしと感じるが故に、自分たちのオリジナリティを必死で模索し続けた。無邪気にメロディックパンクを鳴らせばハイスタのマネと言われたし、そもそもメロディックパンクに興味がなくなっているキッズが多かった。それでも、彼らはライブハウスでメロディックパンクを鳴らし続けた。そんな何年かを経て、メロディックパンクは一つのシーンとしてライブハウスに根付いていった。つまり、ハイスタのまいた種を、ハイスタ不在の間に、日照りがこようが寒くなろうが、次の世代がしっかり育てたからこそ、今のニューカマー、中堅、ベテランが伸び伸びと混在する、揺るぎないメロディックパンクのシーンが築かれたと思うのだ。そんな強さを持っているからこそ、メロディックパンク第二世代は、今でもやっぱり追い掛けたくなる面白さがあるし、活動を続けていられるのだと思う。

 先に挙げたバンドの中でも、当時最も若手だったのはlocofrank。それ故に、彼らは他のバンド以上に、気張らなければいけない局面が多かった。だからなのか、それとも元々の性格なのか、彼らは今でも生真面目にメロディックパンクの理想を追い続けている。今では、若いキッズも、彼らを見ていれば、ああメロディックパンクってこういうところが面白いんだな、こういうところが感動的なんだな、ってきっとわかると思うくらい、信頼できる存在となった。

 とは言え私自身は、彼らと出会った頃、「雨後の筍」のひとつだと思ってしまっていた。当時から彼らは、ずば抜けたメロディセンスと、極上の疾走感、そして彼らの人情味あふれる内面が表れたパフォーマンスという、人気が急上昇したことが頷ける要素があったが、メロディックパンクというだけでハードルがグーンと上がってしまう時代だったのだ。彼らは、そう思ってしまっていた私のような人たちをも魅了させる楽曲を生み続け、活動を続けた。顕著だったのは、ハードコアな先輩たちの中に飛び込むライブを増やしたこと。倒されては立ち上がるように、体育会系なライブを続け、気付けば彼らも三十路を越えて、すっかりタフになっていた。そして今年からは、自らのレーベル773 Four Recordsの全ての業務をメンバー3人で行うという、ほぼ完全なDIY体制へと突入。ここまで苦労を自らに課すか!?と思ってしまう。しかし、先日リリースされた6thフルアルバム『Returning』には、そんな活動を経たからこそ生まれた説得力ある楽曲が、ギュッと詰まっている。

 〈先輩に追いつかなければならない〉、〈他のバンドと似てはいけない〉……そんな、嘗ての彼らから感じた生真面目な気負いは、今作からは感じない。〈俺たちはこの道を行く〉という、曇りのない決意が、真っ直ぐなメロディックパンクから感じられるのだ。『A GROSSY DEMOCRACY』では、今までにないほど社会への思いを激しく吐露し、『Weary stars』では情けなさも剥き出しに優しく奏でる。様々な感情を素直にあらわにしているところからは、今の彼らが過去最高に自信に漲っていることがわかる。

 〈懐かしい曲が耳を誘う/僕らは過ぎた時を追いかけるように走り出す/すり減ってしまった誓いの言葉を/消さない為に〉(『Returning』和訳)

 1月からは、メロディックパンクのバンドにしては珍しい、というか対バンが大好きな彼らが!?と思える、全国ワンマンツアーを敢行。やっぱり、とことん自分たちに厳しい彼らである。彼らの楽曲を聴くたびに、自分は何故メロディックパンクが好きなのか、という原点にかえることができる。メロディックパンク成熟期の今、改めて彼らの存在に感謝せずにはいられない。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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