H ZETTRIO、fox capture plan、ゲスの極み乙女。……ジャズを背景に持つ鍵盤奏者がバンドシーンで活躍する理由

 先日リアルサウンドに掲載されたH ZETT M(H ZETTRIO)とちゃんMARI(ゲスの極み乙女。)の対談を行った10月の末、僕は偶然にも鍵盤奏者に対する取材を立て続けに担当していた。ひとつは「Mikiki」に掲載されている別所和洋(Yasei Collective)と芹澤優真(SPECIAL OTHERS)の対談。もうひとつは「CINRA.NET」に掲載されているPlaywrightレーベルおよびJ-JAZZの特集で、岸本亮(fox capture plan)に話を訊いている。ちゃんMARIと別所が共にビル・エヴァンスをルーツに挙げていたり、芹澤がH ZETT Mをヒーローだと語るなど、意図せず内容にリンクが見られたのは面白かった。

 SPECIAL OTHERS以外の4バンドは、ここ5年以内に結成およびCDデビューを飾ったバンドたちで、4バンドの鍵盤奏者に共通しているのは、プレイヤーとしての背景がジャズであるということ。2015年の日本の音楽シーンを振り返ると、海外における盛り上がりの影響も受けつつ、ブラックミュージックの要素がロックやJ-POPのシーンにも明確に波及して行った一年だったように思うが、それはこうしたジャズとの接点を持つバンドの浮上にも表れていたと言っていいだろう。

 H ZETTRIO、Yasei Collective、fox capture planの3バンドに関しては、鍵盤奏者以外も含めたメンバーの多くがジャズ畑の出身で、「ジャズ出身ミュージシャンのバンド化」という言い方ができる。これが何を示しているのかと言えば、それはやはり「CDよりもライブが重要」とされる時代性の反映だろう。ロックフェスがすっかり市民権を獲得し、そこに多くのオーディエンスが集まるようになった今、セッションバンドではなく、固定メンバーでライブの力をつけることにより、フェスやイベントにおいて幅広い層へとアピールできるというわけだ。SPECIAL OTHERSやH ZETTRIOの前身とも言えるPE’Zなどが活躍したフェスの黎明期から時代が一周し、フェスの面子がやや画一化してきた感がある中、こうしたバンドが今後新しい風を吹かせる可能性は大いにあると言えよう。

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