AKB48と西野カナ、ポップチャート常連がベスト盤で見せた“ベクトルの違い”

 もちろん、メンバー次々と交代していけば離れるファンもいて当然。あのメンバーがいた◯◯期こそが黄金時代だった、あの曲こそが完璧だった、という持論はそれぞれ違うのでしょう。そしてまた、代表選手が入れ替わり過ぎてなんだかよくわからなくなり、だんだん人気が下がっていく……というのはモーニング娘。が過去に一度やっている例。AKBは今、おおいなる安定のなかで、今後次第にテンションを下げていくのか、それともさらに強烈な輝きを放つ事件が起こるのか、そういう分岐点に差し掛かっている気がします。

 もっとも、これはアイドルに限らず、一度でもヒットメイカーとして認知されたミュージシャンには必ず付いて回る話です。いつまでも永遠に支持されることはありえない。ヒットが派手であればあるほど簡単に飛びつかれ、次の瞬間に「終わった」「飽きた」と離れていく人は増えるものです。そこで何を見せていくか。そこで注目したいのが2位~3位の西野カナ。カップリング曲を集めた2枚の裏ベスト盤は、このサイトにも記事があったように、本人の洋楽嗜好をさまざまな角度から見せつける音楽性重視のアルバム。「恋愛の教祖」「共感しまくり」「震える」というキーワードが中心だった彼女に、新しい風向きを与える作品でしょう。どちらもポップチャートの常連、どちらも既発曲中心のベスト盤でありながら、ベクトルの違いが面白い今週でした。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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