AA=×Kj(Dragon Ash)のコラボナンバー「M SPECIES」が示す、ロックシーンの過去と未来

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AA=

 2015年も残り1ヶ月弱というこのタイミングに、AA=とDragon AshのKjによるコラボナンバー「M SPECIES」が突如発表された。意外なようで妙に納得がいくこのコラボレーションに、きっと多くのロックファンが驚いたことだろう。過去にはAA=AiD名義による東日本大震災チャリティソング「We're not alone」を通じて、大勢の仲間たちと一緒に共演した経験を持つ2組だが、対等な形でのコラボはこれが初めて。だからこそ彼らの共演に対して衝撃的かつ自然なものという声が多いのだ。

 AA=の首謀者・上田剛士はご存知のとおり、90年代から2000年代半ばまでTHE MAD CAPSULE MARKETS(以下、MAD)のメンバーとして日本、および海外のロックシーンで活躍。MADの活動休止以降はソロプロジェクトAA=を始動させ、現在まで精力的な活動を展開している。またKjは言うまでもなく、Dragon Ashのフロントマンとして90年代後半から現在に至るまで日本のロックシーンを牽引。最近では降谷建志名義でソロ活動を開始し、今年6月に1stアルバム『Everything Becomes The Music』をリリースしたばかりだ。

 MADおよびAA=、そしてDragon Ashに共通しているキーワードがあるとしたら、それは間違いなく「ミクスチャーロック」だろう。MADはパンクやハードコアを基盤にインダストリアルサウンドやデジタルサウンドなどの要素を加えて、そのサウンドの幅を広げていった。その結果、国内では唯一無二の存在感を放つまでに成長し、2000年代に入ると積極的に海外公演を行うほか、かの『Ozzfest』英国公演にも出演。上田はAA=でもその才能を遺憾なく発揮し続けている。

 方やDragon Ashもパンクやオルタナティヴロックを軸に、ヒップホップやラテンミュージック、エレクトロなどさまざまな要素を取り込んで、 Dragon Ash以外の何者でもないサウンドを構築。国内のロックシーンでは頂点に君臨し続け、2000年代以降多くのフォロワーが誕生した。

 一概にミクスチャーロックといっても、AA=とDragon Ashとではスタイルや表現方法が異なるものの、その芯にあるパンク精神や音楽的ルーツには共通するものがある。特にKjはデビュー前より MADの大ファンを公言し、リスペクトしているアーティストの1人として上田の名を挙げるほど。Dragon Ashとしても初期のアルバムでは、MADの初期〜中期の影響が感じられる。そして上田にとってKjは、自身のサウンドへの愛を口にするかわいい後輩であると同時に、MADおよび上田のフォロワーなのだ。上田とKjはそれぞれ「M SPECIES」という楽曲に対し、そして互いに対してコメントを寄せているが、2人の言葉からは先輩後輩関係なく、相手へのリスペクトが強く感じられる。そして、そんな間柄の2人だからこそ、いざコラボレーションして生み出される作品が普通のミクスチャーロックであってはいけないのかもしれない。

 AA=というプロジェクトは上田が自分の音を突き詰めるべく始めたもの。新たなサウンドを模索していく中で、今一度自分の核を見つめ直すことで「M SPECIES」という曲を完成させた。そしてこれは上田の大ファンであるKjとコラボしたからこそ濃い濃度で抽出することができたものなのだ。

 事実、完成した「M SPECIES」は両者の個性が強くぶつかり合いつつも、しっかりとした調和が保たれたラウドロックチューンに仕上がっている。楽曲の中に登場する「エレクトリックな夢を見たんだ」というフレーズは、MADが1994年に発表したアルバム『PARK』に収録されている「HI-SIDE(HIGH-INDIVIDUAL-SIDE)」の歌詞からKjがリリックを書く際に引用したもの。そのあたりからも、Kjの上田に対する強いリスペクトが感じられる。さらにはそれに応える形で、上田もサウンド面において昔からのファンを喜ばせるような音使いを見せている。意外なほどに装飾が少ない「M SPECIES」は、タイトなドラムと歪みまくったベースというリズム隊が印象的。その上に、Kjのラップボーカルが乗る。曲が進むにつれて熱を帯びていくような構成からは、この曲を機に新しい何かが動き出す、始まるというワクワク感が伝わることだろう。

 ミクスチャーロックという異端の音楽を日本のロックシーンに浸透させ、メジャーとアンダーグラウンドの架け橋となってきた上田剛士とKj。さまざまな経験を経て確固たる個性を確立させた2人が、「MAD種(=M SPECIES)」と題したこの曲で共演したことには非常に大きな意味があるはずだ。その意味に気づいたとき、日本の音楽シーンはまた大きな転換期を迎えるのかもしれない。MADを起点に脈々と受け継がれてきた「M SPECIES」を今、Kj自身が継承し、今度はKjを通じて新世代のアーティストたちが「M SPECIES」が受け継ぐ。その結果、メインストリームに燦然と輝く「M SPECIES」がどう増殖し、どう進化していくのか。楽曲に対するリアクション含め、今はただ楽しみでしかない。

(文=西廣智一)

AA= × ? THE ANSWER IS …

 

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「M SPECIES」

■リリース情報
『M SPECIES』
11月22日 配信限定
¥250- iTunes Store、Amazon、mora、レコチョク 他、各配信サイトにて発売中
■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/id1055592808?app=itunes&ls=1
■amazon
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B017M0J39Y
■レコチョク
http://recochoku.jp/song/S1002375518/
■mora
http://mora.jp/package/43000005/VE3WA-17551/

■関連リンク
AA= オフィシャルWEBサイト
http://www.aaequal.com/

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