KANA-BOON/シナリオアートが映像クリエイターと語り合う、ロックバンドと映像の関係

KANA-BOON/シナリオアートMV座談会

「音楽も映像も常に新しい刺激を求められる」(関)

20151111-ks7.jpg
左から:多田卓也氏(監督)、関和亮氏(クリエイティブディレクター)

——タイトルの意味や歌詞の内容、MVの方向性について、事前にアーティストと打ち合わせることもあるんですか?

多田:聞けるときは聞きますけど、お互いに細かく説明することでもないのかなと思うんですよね。こちらとしては、音源をしっかり聴かせてもらって、そこから考えたほうがいいというか。もちろん、よっぽどズレていたら修正しますけどね。

関:うん。ふだんMVを作るとき、監督さんと話をする?

谷口:そうですね……(飯田に向かって)しないよな?

飯田:うん。

谷口:そこは放り投げてるところがあって。こちらが意図してないMVが出来るほうが、曲潜在的な力を引き出すことになるのかなと。

ハヤシ:僕らもそこまでガッツリ話すことはないですね。ワンワードだったり、核心のメッセージだけを伝えて、あとはお任せすることが多いです。

20151111-ks9.jpg

 

関:そのほうがいいと思う。歌詞や楽曲の世界観をどう読み解くか? ということだと思うんだけど、たとえば男と女が愛し合う曲だったとして、それをそのまま映像にしてもおもしろくないと思うんです。そこは“手を代え、品を代え”じゃないけど、何か他のものに置き換えて、映像的に違う表現にしたほうがいいのかな、と。

多田:そうですね。

関:曲を聴く人によって、そこから思い描くことは違うじゃないですか。それをひとつに決め込んでしまうのもホントは好きじゃないというか、「(ひとつの曲に対して)100本くらいMVがあってもいい」と思っていて。自分たちが作っているものは、そのなかのひとつだし、「こういうイメージもありますよ」ということなんですよね。だったら、映像は(曲の内容と)違うものを表現してもいいんじゃないかなって。

多田:ミュージシャンによってやり方は違いますが、任せてもらえたほうがおもしろいですよね。ひとりのユーザーとして音楽を聴かせてもらって、そのときの感動や興奮を表現したほうがお互いに楽しいんじゃないかなと。緻密な設計図を作って、完璧に撮影できるほどの時間も予算もないですからね。たとえば演奏シーンにしても、編集でどうつなぐかが大事なので。

関:セッション的なところもあるよね。

多田:そうなんですよね。あらかじめ決め過ぎないで、イメージの素材をつなぎながら「やっぱりベースから始まったほうがいいな」とか、そのときのテンションで決めていって。

関:うん。みなさんは曲を作るとき、映像を思い浮かべることもありますか?

谷口:ありますね。ただ、俺らはチャランポランなんで……。

飯田:そうそう。MVが出来て、「こういうことだったのか」って納得することもありますね(笑)。

谷口:シナリオアートは映像を自分で作るくらいだから、ちゃんと映像やストーリーを考えながら曲を作ってると思いますけどね。

ハヤシ:映像を編集するのも好きなんですよ。

20151111-ks10.jpg

 

関:あ、いいですね!

ハヤシ:音楽といっしょに映像を作ってる感覚もあるから、いつか自分の思うような映像を付けてみたいとも思っていて。

多田:いいと思う。ミュージシャン自身が映像を作ると、もっと広がりそうですよね。たとえば、その映像だけで完結するのではなくて、その前後にストーリーがあるとか。さっき関さんが「100通りのMVがあってもいい」って言ってましたけど、最近はiPhoneの映像もすごくキレイだし、編集もやりやすくなってるので、映像自体がどんどん個人のものになっていると思うんですね。いろんな人がトライすれば、もっとおもしろいものが出て来るんじゃないかなって。

関:機材の変化も大きいですよね。根本的にやっていることは変わらないんだけど、使う道具が変わることで表現にも影響するので。バンドの場合も、新しい機材や技術を取り入れることで曲が変化することもありますか?

谷口:新しいものよりも、既にある機材の量が尋常じゃないですからね。そのなかで出会うことはありますね。

ハヤシ:自分たちは新しいものが好きで、シンセの新しいシリーズが出ると試したりしますね。バンドの立ち位置にこだわらないで、いろんなことに挑戦したいと思っているので。

多田:関さんも新しいものが好きですよね。

関:え、そう?(笑) でも、音楽も映像も常に新しい刺激を求められるし、観たことがないもの、目新しいものをやっていくべきジャンルだとは思いますね。最先端というか、一歩先に行くものを作りたいという意識もあるし。何年もこの仕事をやってますけど、音楽がいちばん新しい技術を取り入れられるジャンルだと思うんですよ。聴いたことのない音、リズムに映像を付けていくことで、自然とそうなっていくというか、相乗効果があるなって。

多田:関さんは「新しいことにトライする、日本代表」みたいな方ですけど、それに比べると僕は「古いレンズを使ってみよう」ということも考えるんですよね。

関:さっき話に出ていた「トラックイン ズームバック」もそうだよね。最初にやったのは映画監督のアルフレッド・ヒッチコックで、1950年代からある手法だから。でも、それをいま使うことで、新しい映像になるっていう。人間って、耳よりも目のほうが飽きっぽいと思うんですよ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる