TOKIOはなぜ広い世代から支持される? 『ザ!鉄腕!DASH!!』における“タレント力”から検証

 ではTOKIOは、ジャニーズらしくない異端の存在なのだろうか?

 確かに現在唯一バンドを基本形態にしたグループであることからも、そう思わせてしまう部分はある。ジャニーズは踊るものだという先入観が何となく私たちのなかにはあるからだろう。

 とは言え、ジャニーズの歴史にはバンドの系譜も存在する。1980年代には、たのきんトリオのひとりである野村義男のThe Good-Bye、そして岡本健一らがメンバーだった男闘呼組がいた。ちなみに男闘呼組は、1988年のデビュー以前にバンド名を「東京」と名乗っていた時期もある。さらにさかのぼると、1960年代前半、ジャニーズ事務所の元祖グループであるジャニーズと同時期にジャニーズ・ジュニアというバンドも存在した。現在のJr.と直接関係はないようだが、このことを見ても、「歌って踊る」だけでなく「歌って演奏する」スタイルがジャニーズの歴史のなかにしっかり刻み込まれているのがわかる。TOKIOは、その立派な継承者なのだ。

 そしてそのTOKIOの歌と演奏からは、彼らが今と昔を橋渡ししてくれる存在であることが強く感じられる。彼らのヒット曲には、歌謡曲やニューミュージックのテイストがある。なかにし礼作詞・筒美京平作曲による『AMBITIOUS JAPAN!』や中島みゆきの詞と曲による『宙船』などはまさにその好例だ。そうかと言って、ただ昔懐かしいというわけではなく、TOKIOの歌と演奏がきっちり今の歌として成立させている。アップデートされた「昭和」感といったところだろうか。

 それは、メンバー個々の活動にも当てはまる。長瀬智也は1978年生まれの最年少メンバーだが、俳優としての彼は『タイガー&ドラゴン』(TBS系)や『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)など、ノスタルジックな題材や風景のドラマがとても良く似合う。その意味では、彼もまた今と昔を橋渡ししてくれる存在だ。もちろん、他のメンバーについても同様だ。城島茂の『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)、国分太一の主演映画『しゃべれども しゃべれども』、松岡昌宏の大河ドラマや必殺シリーズなどについても同じことが言えるだろう。

 さらに長瀬智也以外の四人が、現在個人で情報番組やバラエティのMCを務めていることも特筆される。なかでも山口達也に至っては、『Rの法則』(NHK Eテレ)、『ZIP!』(日本テレビ系)、『幸せ!ボンビーガール』(日本テレビ系)と、視聴者層や放送時間帯の異なる三つの番組のMCやパーソナリティを務めている。過去山口と城島がそれぞれ「24時間テレビ」のマラソンランナーに選ばれたことも含めて、TOKIOが幅広い世代から支持されていることがわかろうというものだ。

 ジャニー喜多川は、ジャニーズ事務所に所属するアイドルたちをしばしば「タレント」と呼ぶ。それにならうなら、TOKIOは広い世代に訴えるテレビというメディアにふさわしいタレント集団であり、ジャニーズ流エンターテインメントのひとつの理想のよき体現者であるに違いない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(以上、青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる