“LOST IN TIMEの集大成”を見たーー兵庫慎司が全国ツアーファイナルをレポート

“LOST IN TIMEの集大成”リキッドライブレポ

 デビューから13年。アルバムはこれで9枚目。海北大輔(vo&b&key)・大岡源一郎(ds)・三井律郎(g)の現体制になってから約8年だが、ギタリストは三井で3人目。海北が鍵盤も弾くようになったり、多数のサポートメンバーを加えて音楽的方向を変化させたり、活発に活動したり、そうでもない時期があったりしつつも歲月を重ねてきて現在に至る、そしてはっきり言って大ブレイクからは程遠い状態のまま生きながらえてきたバンドではあるが、代わりに生涯離れないような熱く濃いファンに支持され続けているさまは、その曲タイトルからバンド名をいただいたbloodthirsty butchersと通じるものがある、とも言える(音楽性はまったく異なるが)。

 その9枚目のアルバム『DOORS』のリリース・ツアー──9月19日千葉LOOKからスタート、対バンあり、ワンマンあり、海北大輔&大岡源一郎の「フタリロストインタイム」(アコースティック・ライブ)の日もありで全国21ヵ所を回ってきた上でのファイナル、10月25日(日)東京・恵比寿、リキッドルーム。以下、まずセットリスト(カッコ内はその曲の収録アルバム)。『DOORS』の冒頭そのままに、「366」と「Synthese」の連打で始まった。

1 366(9th『DOORS』/2015年)
2 Synthese(9th『DOORS』/2015年)
3 列車(2nd『きのうのこと』/2004年)
4 教会通り(2nd『きのうのこと』/2004年)
5 小さな隣人(9th『DOORS』/2015年)
6 ligarse~予知夢(9th『DOORS』/2015年)
7 ヒカリ(2nd『きのうのこと』/2004年)
8 羽化(3rd『時計』/2005年)
9 五月の桜(8th『LIFE IS WONDER』/2013年)
10 30(7th『トラストオーバーサーティー』/2013年)
11証し(3rd『時計』/2005年)
12 約束(1stシングル『群青』1曲目/2003年)
13 No Caster(9th『DOORS』/2015年)
14 26(4th『さぁ、旅を始めよう』/2007年)
15 手紙(1st『冬空と君の手』/2002年)
16 希望(5th『明日が聞こえる』/2009年)
17 22世紀(9th『DOORS』/2015年)
18 燈る街(9th『DOORS』/2015年)
19 明け星(9th『DOORS』/2015年)
アンコール1
20 呼ぶ(9th『DOORS』/2015年)
21 hurry~home(9th『DOORS』/2015年)
アンコール2
22昨日の事(2nd『きのうのこと』/2004年)

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海北大輔(vo&b&key)

 1stアルバムから1曲、2ndアルバムから4曲、3rdアルバムから2曲、4thアルバムから1曲、5thアルバムから1曲、7thアルバムから1曲、8thアルバムから1曲、アルバム未収録の1stシングル『群青』から1曲、そして『DOORS』から全曲。
 
 LOST IN TIMEくらいの長いキャリアで、最新アルバムの収録曲をすべてプレイして、かつ6枚目以外のすべてのアルバムからの曲も演奏される、そんなリリース・ツアーをやれるということ自体が、まず稀有だと思う。そしてそれが、これまでの自身を総括すると同時に最新型の自身を見せるようなすばらしいライブになっていたことは、さらに稀有だと思う。

 普通お客がダレる、そんな新しい曲ばっかりやったら。ということは、『DOORS』の曲のいずれもが、過去のこのバンドの歴史を代表する名曲たちに拮抗している、ということになる──というのはさすがに言いすぎかもしれないが、逆に言うと、過去の名曲たちも、今のこのLOST IN TIMEのフォーマット──目の前に鍵盤がセットされていて、時々それを弾きながら、そしてもちろん主にベースを弾きながら海北大輔が歌い、大岡源一郎がドラムを叩き、三井律郎がギターを弾くフォーマットで鳴らされるべきものとして更新されている、そんな感じだった。

 まあ、この形でライブをやるようになってからもずいぶん経つんだからあたりまえなのかもしれないが、でもとにかく、『DOORS』の曲たちと過去の曲たちの間に、本当に温度差がない。ビッと引き締まった、ムダや遊びのない、ステージの上に本質だけがどーんと存在しているようなライブだった。

 後半までほぼMCをせず、曲をプレイしていくことに専念していた海北が前半で口にした「今日はたくさん歌うからね。集大成をお見せします。どうぞ、最後まで、楽しい時間をすごしましょう」という短い言葉。本人的には、ツアーで各地を回ってきて鍛えられてきました、その集大成をお見せします、という意味だったんだろうけど、ライブの内容自体が“このツアーの集大成”ではなく“LOST IN TIMEの集大成”になっていた。

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大岡源一郎(ds)

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