TWEEDEESと北川勝利のツーマンライブが生んだ熱気、そして浮上した“スモール・サークル・オブ・フレンズ”

TWEEDEES&北川勝利が起こした熱気

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 続いてTWEEDEES。ステージ中央にベースの沖井とヴォーカルの清浦が立ち、ギターにカラスは真っ白のシミズコウヘイ、ドラムにSCOTT GOES FORの原“gen”秀樹、キーボードに末永華子、キーボード/オルガンに坂和也という布陣だ。原は沖井とSCOTTT GOES FORでもリズム隊を組んでおり、TWEEDEESのアルバムにも参加していた仲。花澤香菜のアルバムやライブにも参加している末永は北川バンドに続いての登場となる。冒頭から、「KLING! KLANG!!」、「祝福の鉄橋」、「月の女王と眠たいテーブルクロス」など、ライブ映えする派手な曲を立て続けに演奏すると、客席も沖井のアクションに煽られて高揚してゆく。バンド・サウンドの爆発力もさすがで、特にスライドやグリッサンドを多用して高低のフレットを自在に行き来する沖井のベースはこの日も唸りをあげていた。7曲目では清浦が17歳の時に発表したというソロ曲「風さがし」が演奏されたのだが、当時清浦のライブでサポートを務めていたのが他ならぬ北川で、MCでは彼女がそうした当時の状況を懐かしそうに振り返っていた。

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 そして終盤、シンバルズの「怒れる小さい茶色い犬」のイントロが鳴った瞬間、客席が湧く。当然、筆者の胸も躍った。彼らのラスト・アルバム『Love You』に収録されていたこの曲は、沖井の敬愛するザ・フーへのオマージュ的なイントロが特徴。このイントロは沖井が作曲したTwinklestars(さくら学院バトン部)の「天使と悪魔」でも使われていたから、聴き覚えのある人も多いだろう。ブリティッシュ・ビートを経由した沖井節が鳴り響いたことで、一気に会場のテンションが上がったのは間違いない。

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 シンバルズの曲で上気する客席。そこにはノスタルジックな気分も含まれていただろう。だが、この曲が終わった後のMCで、清浦がそれを思い切り蹴散らしてくれた。「みんな、シンバルズのこと大好きだよね! 私も大好き!」 と煽っておいて、「でもね、私が忘れさせてあげる!」と言い放ったのである。渋谷系第二世代にあたる北川や沖井の音楽を享受してきた世代は、多感な時期に聴いたROUND TABLEやシンバルズを未だに愛し、その延長線上に花澤香菜のようなアイコンを発見したかもしれない。それくらい、渋谷系の呪縛は大きいということだ。だが、それを理解したうえで、清浦は挑発的でポジティヴなひと言を発した。相当な覚悟と勇気がいる発言だったと思うが、ともあれその意気やよし。その後「Rock’n Roll is DEAD?」のアッパーなパフォーマンスで彼らはステージを締めくくり、清浦のインパクトの大きなひと言と共に鮮烈な印象を残して去っていった。

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 TWEEDEESが退場しても拍手は鳴りやまず、アンコールへ。ここでクラムボンのミトが登場し、沖井のリッケンバッカーを手にして演奏に参加。披露されたのは、なんと、というべきか、案の定というべきか、花澤香菜の「スパニッシュ・アパートメント」。つまり、沖井が曲を書き、ミトがベースを弾き、北川がプロデュースした曲である。さて、ここまでで“花澤香菜”という固有名詞が数え切れないほど登場したので、もうお気づきかと思うが、花澤が沖井、北川、ミトを結びつけたキーパーソンなのは疑いようがないだろう。北川や沖井、ミトの他に、矢野博康、宮川弾、カジヒデキ、やくしまるえつこ、中塚武らが楽曲を提供した花澤の3枚のアルバムは、結果的にこの3人を繋ぐこととなった。そう、花澤香菜はファム・ファタルだった、と言ってもいいかもしれない。そして、彼女を媒介として形成された“スモール・サークル・オブ・フレンズ”から、今後も刺激的な音楽が生まれるだろうことを、この日のライブを観て、あらためて確信したところだ。

(撮影=小暮和音、澤木純平、吉田進吾)

■土佐有明
ライター。『ミュージック・マガジン』、『レコード・コレクターズ』、『CDジャーナル』、『テレビブロス』、『東京新聞』、『CINRA.NET』、『MARQUEE』、『ラティーナ』などに、音楽評、演劇評、書評を執筆中。大森靖子が好き。ツイッターアカウントは@ariaketosa

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