AKB48、きゃりー、Shiggy Jr.ーーJ-POP界に定着した「ハロウィンソング」の現状とは?

大物たちの闘争に飛び込む新鋭、Shiggy Jr.の信念

 原田「自分は「いつ出るか」っていうのが決まってないと曲ができないんです。その季節感とかが自分にとってはとても大事で。コンセプトとかお題目ありきじゃないと中々…。」(Spincoaster 2014年10月22日「アーティスト対談 Jess(give me wallets)×原田茂幸(Shiggy Jr.)」

 6月のメジャーデビュー時には夏の情景を描いたラブソング「サマータイムラブ」と「6月のリリースだから雨の曲を」というコンセプトで制作された「keep on raining」の2曲を発表したShiggy Jr.。10月14日にリリースされた2枚目のシングル「GHOST PARTY」では、この時期の新たな風物詩となったハロウィンパーティーがモチーフになっている。

 この曲で注目すべきは、バンドの楽曲制作を一手に引き受けるギタリストの原田茂幸がギターではなくシンセサイザーを担当していること。ベースの森夏彦もライブではシンセベースを弾いており、「楽曲の良さを引き出すためにバンドの形自体を変えていく」というShiggy Jr.の特徴が端的に表れている。バンドやプレーヤーとしてのエゴよりも、いかにその曲がポップになるかこそ重要。徹底した楽曲至上主義には清々しさすら感じる。

 「サマータイムラブ」から一転してエレクトロに振り切ることでパーティー感を強調した「GHOST PARTY」を引っ提げて、Shiggy Jr.はAKB48×秋元康、きゃりーぱみゅぱみゅ×中田ヤスタカという大物が競合する今年のハロウィンソング戦線に飛び込んでいった。もちろん現状の知名度で言えば圧倒的に劣っているのが実態だとしても、「いきものがかりのような立ち位置になりたい」と公言する彼らが新しい国民的イベントの曲に取り組むのは至って自然なことでもある。尖ったロックバンドであれば「季節の行事にマッチする楽曲を作る」というテーマに正面から向き合うことは「自己表現」とのせめぎ合いで難しいかもしれないが、Shiggy Jr.は「それでみんなが聴いてくれるのならば」とベタなことでも衒いなくやってのける。そんな姿勢に対して、「もう一度J-POPというものをエンターテイメントの中心に引き上げてくれるのではないか」という期待を寄せたくなる。

 原田は「影響を受けたミュージシャン」として山下達郎の名前を挙げることが多い。クリスマスの定番を生み出した先達にならって、Shiggy Jr.は長年にわたって聴き続けられる「シーズンソング」を作ることができるか。まだデビューしたばかりのバンドへの問いかけとしては過大なものかもしれないが、長い目で注目していきたいと思う。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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