くるり主催『京都音博』全ステージレポート 9回目を迎えた同フェスの「得難さ」とは?

くるり主催『京都音博』の得難さ

4 indigo la End

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indigo la End

 本人たち曰く「今日いちばん音が大きいアクトだそうです」。爆音を出すというわけではなく、着座せず、アコースティック楽器も使わず、普段どおりのライブをやるというだけなのだが、そうするとこのフェスではそういうことになる。「くるりは大好きです」「コピーバンドやってました」と、このフェスに呼ばれたことへの喜びを何度も口にしながら、「心ふたつ」「幸せが溢れたら」「夏夜のマジック」と、活動を重ねれば重ねるほど曲の強度とそれを形にする表現力が増していく最近のこのバンドの勢いを見せつけるように、しかしじっくりとプレイ。確かにこの世代(20代中盤〜後半ぐらい)のギター・バンドの、いわば「くるりチルドレン度」はものすごく高いものがあって、対バンやフェスなどで岸田に会って狂喜している若いバンドマンを何度も見かけたことがある。ラストの4曲目「素晴らしい世界」を歌う前に、「京都大好きです、これてうれしいです」と川谷絵音は口にした。あと、「イルカが気になる」とも口にした(会場に隣接する京都水族館のイルカショーが演奏中も続いていて、時折ジャンプするイルカの姿が見えたりするため)。

5 ましまろ

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ましまろ

 ご存知、ヒックスヴィルの真城めぐみ&中森泰弘とザ・クロマニヨンズの真島昌利が結成し、今年5月にシングル『ガランとしてる』、9月2日にはアルバム『ましまろ』をリリースしたばかりの新しいバンド。「1980年代の初頭、新宿JAM STUDIOで知り合った3人が30数年の時を経て~」とプロフィールには記されているが、つまりそれぞれロッテンハッツ以前とザ・ブルーハーツ以前に同じ東京モッズ・シーンにいて知り合った、ということだと思う。
真城めぐみはヴォーカルとパーカッション、マーシーはアコースティック・ギター、ふたりの中央後方の中森泰弘はセミアコ。1曲目「体温」は真城、2曲目「僕と山ちゃん」はマーシーがリード・ヴォーカルをとる。真城、「無理矢理出していただいてありがとうございます。私たちだけなんです、無理矢理なの」と謙遜なのか自虐なのか判断に困ることをにこやかに言いつつ、「公園」を歌い、「ガランとしてる」でしめくくった。真城めぐみの歌を聴いたことがない、という人はまずいないと思うが、マーシーがかつてソロでもバンドでも普通に歌っていたことを知っている世代と知らない世代でリアクションが分かれた感じだった。前者は「ああっ、これこれこの感じ!」と興奮し、後者は「へえーっ、こんな歌なんだ!」と聴き入る。そしてそのマーシーの言葉とメロディを真城めぐみが歌うとこうなる、という新鮮な感動もあり、あっという間の4曲だった。

6 八代亜紀

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八代亜紀

 40年以上にわたって活躍する演歌界のトップランナーでありつつ、2012年の小西康陽プロデュースの『夜のアルバム』からはジャズ・シンガーとしての活動も始めて大ヒット、その作品が海外へも届き世界的な評価を得ている最近の八代亜紀。本日もジャズバンド編成でオン・ステージ。同作から「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「クライ・ミー・ア・リヴァー」をじっくりと聴かせたあと、まるで友達に語りかけるような親しげなMCで、12歳でクラブ歌手としてデビューした頃のエピソードなどを語り、「全然売れない時代もあったけど、今は演歌の女王だよ」と胸を張り、喝采を浴びる。野外であることを気にしつつ、「(天気がいいので)これ、やっていいかしら」とサビの手のアクションを見せ、歓声が巻き起こる中大ヒット曲「雨の慕情」へ。ふたたびジャズ・ナンバー2曲を歌い、メンバー紹介のあとに始まったラスト・チューンは「舟唄」。当然、ジャズにリアレンジしているのでイントロではそれとわからなかったオーディエンスだったが、「お酒はぬるめの~」彼女が歌い始めた瞬間の大歓声、すごいものがあった。

7 Antonio Loureiro

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Antonio Loureiro

 くるりがブラジルから招聘したシンガーソングライター。あらゆる楽器を演奏できるマルチ・プレイヤーだが、この日のステージはグランドピアノの弾き語り……いや、「語り」という言葉にはあきらかにそぐわないテンションの歌と、歌いながら弾いているのが信じられないアクロバティックなピアノを次々と聴かせていく。ポップス、ジャズ、ロック、クラシック等、本当にボーダレスな活動のアーティストだし、楽器もなんでも弾ける、という予備知識で観たが、「それ以前にまずシンガーとしてすごい」という事実に圧倒される。まるで楽器を操るような自在な歌いっぷりだった。途中のMCで、「祖父が今日亡くなった」というようなことを言っていたのだけ気になったが(すみません、私英語できないので、今日が命日だという意味だったのか、まさに今日亡くなったと言っていたのか、判断がつきませんでした)、続いて歌ったのは、その祖父に捧げる曲だった。

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